【レポート】

子どものADHDに必要な支援は? 薬物療法のあり方をどう考える??

「不注意」「多動性」「衝動性」、3つの主症状を持つといわれる発達障害のひとつ「ADHD」。もし子どもがこのような特徴によって生きづらさを抱えていたら、どういった支援が必要なのだろうか。

日本ADHD学会理事長で、母子愛育会愛育研究所 児童福祉・精神保健研究部長を務める齊藤万比古氏

シオノギ製薬とシャイアーはこのほど、「注意欠陥・多動症(ADHD)の子どもを持つ母親と小学校教師に対する意識・実態調査 記者発表会」を開催。登壇者となった医師の齊藤万比古氏(日本ADHD学会理事長、母子愛育会愛育研究所 児童福祉・精神保健研究部長)、支援者でありADHD当事者の高山恵子氏(ADHDを持つ人たちの支援団体「えじそんくらぶ」代表)、学校心理学を専門とする石隈利紀氏(学校法人東京成徳学園 教授、筑波大学特命教授・名誉教授)が、ADHDの子どもの支援のあり方について語った。

ADHDって何?

そもそも、ADHDにはどのような特徴があるのだろうか。齊藤氏によれば、ADHDは発達障害のひとつで、生来性の脳機能障害に基づく疾患。「不注意」「多動性」「衝動性」のうち、いずれかの症状が見られるうえ、「生活の中で症状が著しい障害となり、本人もしくは家族が大きな苦痛を感じている」などの条件にあてはまった場合、医療機関にて診断がつくという。

米国精神医学会によると、子どもの5%、大人の2.5%がADHDを持っているとされ、環境との相互作用に起因する二次性精神疾患の発症も多いとのこと。大人の場合は、うつや不安障害、解離性障害、トラウマ関連疾患が起こりやすく、子どもの場合、疾患と関わりがあるかは不明だが、不登校が起きやすかったり、非行に走りやすかったり、反抗がひどくなりやすかったりする傾向があるそうだ。

齊藤氏は、「ADHDの認知は徐々に広まり、診断・治療ガイドラインや、治療薬も進歩しつつある」としながらも、「親の支援や、学校教育における理解は進めていかないといけない」と課題を指摘。「医療的治療だけでなく、心理社会的支援がもっと必要」と訴えた。

薬物療法ありきではない

シオノギ製薬とシャイアーのADHDに関する調査によれば、ADHDの子どもを持つ母親(283名)の68.5%が「医療機関に行って良かった」と回答し、ADHDと診断されたことで「症状の原因がはっきりしてほっとした」(59.7%)という声も挙がったという。しかし一方で、「子どもの将来が不安で落ち込んだ」(41.7%)と答える人もいて、ADHDの診断名がつくことは、疾患の内容が十分に理解されていない日本において、覚悟が必要なことも多いようだ。※「注意欠陥・多動症(ADHD)の子どもを持つ母親と小学校教師に対する意識調査」(調査期間: 2016年12月1~5日、調査方法: インターネットリサーチ)

この点について石隈氏は、「まずは、学級における他の子との交わりの中で、ADHDを持つ子どもがどのように良さを発揮していけるかを、考えることが大切」と指摘。その上で「教師が親に、子どものできている部分を伝え、『もっとできることがあるかもしれない』と受診を勧めるとスムーズ」と語った。

学校心理学を専門とする石隈利紀氏(学校法人東京成徳学園 教授、筑波大学特命教授・名誉教授)

また高山氏は「ADHDの診断ができるのは、日本では医師のみだが、アメリカでは臨床心理士も可能」と、アメリカと日本の違いについて指摘。「行動療法やペアレントプログラムなど、心理社会的支援というのをまず行って、それから必要があれば、医療機関に紹介する」という流れがあるという。

ADHDを持つ人たちの支援団体「えじそんくらぶ」の代表を務める高山恵子氏

両者の話を受けて、齊藤氏は「医療機関を受診し、薬物療法を行うことで、ADHDを持つ子どもの良い面が見えてくることがある」と、薬を使うことの利点を挙げた一方、「子どもが親や教師と信頼関係を築いていったり、親が症状をうまくコントロールするスキルを身につけたりすることで、症状が改善するケースも多い」と指摘。

「親や学校が、ADHDの子どもを支えようとした結果、『薬の力も借りてみよう』と思えることが大切。本人と周りの努力によって、『ここまで成長した』と思えることが、治療の目標だ」と語り、「周囲のサポートの先に、薬物療法を見据えるという流れが理想」とした。

最後に高山氏は、「ADHDの子どもが持つ衝動性は、環境によっては実行力や行動力という利点にもなる。周囲の理解と支援によって、特性は個性になる」と語った。ADHDの子どもを真に支えるには、ADHDに対する正しい理解の広がりや、社会的な支援の充実が、求められているといえるだろう。

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