キヤノンITソリューションズは21日、ESET製個人向けセキュリティ製品「ESETセキュリティ ソフトウェア」シリーズ最新版の販売開始を発表。あわせて都内で発表会を開催した。発表会では新製品の特徴に加え、ESET ASIA セールス/マーケティングディレクターを務めるパーヴィンダー・ワリア氏が登壇し、アジアや日本の市況を解説した。

左から順に、基盤・セキュリティソリューション事業本部 マルウェアラボ推進課の石川堤一氏、ESET ASIA セールス/マーケティングディレクターのパーヴィンダー・ワリア氏、プロダクトソリューション事業本部 プロダクト企画センターの山本昇氏

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ESETは、スロバキアに本拠を置くセキュリティ企業で、キヤノンITソリューションズは日本国内での販売代理店となる。ESETの拠点は世界180カ国にわたり、マルウェアのリサーチやテクノロジーセンターも複数の拠点で用意する。

コンシューマ向けのESET製品全体におけるアジア市場シェアは、2015年で全体の19%、市場規模が8億9700万ドル(グローバル全体では46億ドル)。北アメリカの46%、EMEAの31%に次ぎ全体で3番目に大きい市場となる。

ESET ASIA セールス/マーケティングディレクターのパーヴィンダー・ワリア氏

ESETコンシューマ向け製品の地域別シェア

このアジア市場の中で、日本はアジア市場トップとなる約半分の49%(4億3900万ドル)を占める。しかし、日本国内のセキュリティ製品シェアは、トレンドマイクロが30%、シマンテックが25%、Internet Security(マカフィー)が10%、ESETが5%となり、ESET製品のシェアは4位に留まっている。

新製品発表会で登壇したパーヴィンダー・ワリア氏は、自社製品の強みである軽さや検出率の高さ、検出速度などに触れた上で、「日本市場のシェアは4位だが、(利用数は)劇的に増えてきている。日本ユーザーの需要と要求に応える新機能を追加し、今後も成長できると思っている。国別のシェアポジションでは、例えばニュージランドや香港で2位、台湾では3位。日本でもじきに3位になりたい」と、日本市場への期待を語った。

アジア市場における国別シェア

日本国内のセキュリティ製品シェア

PowerShell形式のダウンローダも登場

キヤノンITソリューションズ プロダクトソリューション事業本部 プロダクト企画センターの山本昇氏は、マルウェアの最新動向と、Windows向けプログラム新バージョン「ESET Internet Security V10.0」の特徴を紹介した。

山本氏は、2016年は暗号化型ランサムウェアが大流行したとし、「今年はこれに尽きる」とコメント。「製品としては、脅威対策をきっちりサポートしていかなければいけない」と、新製品にランサムウェア対策機能を搭載した背景を語った。また、情報搾取を狙ったマルウェアも流行しており、家庭内ネットワーク保護機能やプライバシー保護機能も追加したと説明した。

キヤノンITソリューションズ プロダクトソリューション事業本部 プロダクト企画センターの山本昇氏

マルウェアの脅威傾向とランサムウェア対策機能

キヤノンITソリューションズ 基盤・セキュリティソリューション事業本部 マルウェアラボ推進課の石川堤一氏は、新機能の詳細と、搭載の背景を説明した。

キヤノンITソリューションズ 基盤・セキュリティソリューション事業本部 マルウェアラボ推進課の石川堤一氏

ESET製品によるマルウェア検出数

ESET製品によるマルウェア検出数は、2016年Q3期で急増し、過去最高の約500万件に達したという。主な攻撃はメール(添付ファイル)で、メール攻撃のトップ5は、ランサムウェアを狙ったJavaScript形式のダウンローダと情報搾取を狙ったマルウェアで占められている。2016年3月以降は半数以上がダウンローダとなり、「Locky」などの暗号化型ランサムウェアや、「Rovnix」や「Bebloh」などの情報搾取型マルウェアが特に多く検出された。

ランサムウェアは依然高い水準で攻撃が続いているが、JavaScript形式のダウンローダが主だった従来の攻撃に加え、PowerShell形式のダウンローダが2016年10月になり、多く検出されるようになったという。

国内で検出されたマルウェアのTop5

情報搾取を狙うマルウェア「Bebloh」検出率の推移

情報搾取を狙うマルウェアは、英文に加え日本語化が進み、流暢な日本語によるメール攻撃も確認されている。石川氏は「日本が標的となっている」こと、そして2016年11月も多数の攻撃が確認され続けていることに警鐘を鳴らした。

また、新たな情報搾取の脅威として、海外で発生しているRAT(遠隔操作ツール)によるデジタルストーキング行為を挙げ、家庭内のWebカメラやPC内蔵Webカメラが、意図せず第三者に操作される可能性に言及。パスワード設定のないネットワークWebカメラの映像を自動配信する「Insecam」では、日本国内の映像が1,200件以上登録されており、例えば個人宅の玄関など、意図したとは思いにくいプライベートな映像が流れている場合もあるといい、「"無防備なWebカメラ"に対してもセキュリティ意識を持つ必要がある」と語った。

個人PCの4つの課題を対策する新機能

これらインターネット脅威の背景を踏まえ、同社は2016年の個人PCセキュリティ対策として「メール攻撃を避ける」「大事なデータをランサムから保護する」「プライバシー情報などの外部流出を防ぐ」「家庭内ネットワークを安全に運用する」という4つの課題があるとした。新製品では、これら課題を解決する新機能を搭載している。

新機能のひとつ、ランサムウェア保護機能は、暗号化するための"鍵"をC&Cサーバと通信するなど、ランサムウェアの特徴的な動きをメモリ内で検知し防御する機能や、添付メール受信時にスクリプトコードを検査し駆除するもの。

また、家庭内ルータの脆弱性攻撃への対策としては、ルータのパスワードや既知の脆弱性をチェックし、より強度の高いパスワードへの変更や、ルータの構成変更などを提示する「ホームネットワーク保護機能」を新たに備えた。ネットワークにどんな機器がつながっているのか一覧で表示することも可能で、視覚的にも把握しやすくする。

Webカメラへの不正アクセス対策では、Webカメラを使用するAPIを検知し、事前に許可したソフトウェア以外のアクセスを遮断。覗き見行為から保護するWebカメラ制御機能を新搭載した。

ESET Internet Security V10.0

ホームネットワーク保護機能

このほか、ESET Internet Security V10.0の機能に加え、パスワード管理やデータの暗号化、位置情報確認やアクセス制限など盗難対策機能を盛り込んだ「ESET Smart Security Premium」も用意。従来ラインナップしていた「ESET NOD32 Antivirus」「ESET Internet Security」の2製品に続く高機能製品として、新たにラインナップした。

ESET Internet Security V10.0のスクリプトベース攻撃保護機能

ランサムウェア保護機能

Webカメラアクセス制御機能

ホームネットワーク保護機能

製品ラインナップと機能差

発売は12月8日。製品ラインナップと想定売価は下記の通り。

製品ラインアップ一覧表
製品名 ライセンス・台数/年 直販サイトの参考価格(税別)
パッケージ
ESET ファミリー セキュリティ 5台(Windows/Mac/Android)/1年 オープン
ESET パーソナル セキュリティ 1台(Windows/Mac/Android)/1年 オープン
ダウンロード
ESET ファミリー セキュリティ ダウンロード 3年版 5台(Windows/Mac/Android)/3年 9,800円
ESET ファミリー セキュリティ ダウンロード 1年版 5台(Windows/Mac/Android)/1年 5,800円
ESET パーソナル セキュリティ ダウンロード 3年版 1台(Windows/Mac/Android)/3年 7,600円
ESET パーソナル セキュリティ ダウンロード 1年版 1台(Windows/Mac/Android)/1年 3,800円
ESET ファミリー セキュリティ 3年間更新費 5台(Windows/Mac/Android)/3年 6,400円
ESET ファミリー セキュリティ 1年間更新費 5台(Windows/Mac/Android)/1年 5,400円
ESET パーソナル セキュリティ 3年間更新費 1台(Windows/Mac/Android)/3年 4,500円
ESET パーソナル セキュリティ 1年間更新費 1台(Windows/Mac/Android)/1年 3,000円
ESET Smart Security Premium ダウンロード1年版 1台(Windows)/1年 6,800円