生活動線に合わせた出店が重要

「20年来、店舗改装が思うように進んでいなかった」。宮島専務は、ミスドの業績が低迷する理由の1つとして、既存店の改装・移転が遅れたことを挙げる。20年も経てば店舗周辺の人の流れも変わるとする宮島専務は、「顧客のいる場所に(店舗を)移動すべきだった」と語る。

テイクアウト客も多いと見られるミスドだけに、人々の生活動線に合わせた店舗展開が重要なのは明白だ。キッチン付きの既存店舗は簡単に移転できないだろうが、トゥゴーならば人が集まる場所にリーチしていける。トゥゴー1店あたりの売上高は小さくても、200店まで増えればミスドの業績に与える影響も相当な規模になるはずだ。

新事業戦略の成否、トゥゴーが重要な要因に

コンビニ各社がドーナツの取扱いを開始した一方、一時期は大きな話題を呼んだクリスピー・クリーム・ドーナツが複数の店舗を閉めるなど、ドーナツ市場は競争が激化している。ミスドの「お客様売上高」も近年は下降を続けており、2015年度は前期比10.3%減の915億3,800万円だった。ミスドはトゥゴー出店のほか、定番商品の値下げ、既存店の改装、健康志向のメニュー強化などで集客を計り、業績回復を狙いたい考えだ。

定番商品の値下げは独自調査(画像左)に基づき実施。100円(税抜き)の商品を充実させる。健康志向メニュー(画像右)は紫芋、プレーン、きなこの3種類で2016年2月から販売。種類は増やしていく計画だという

コンビニドーナツの登場がミスドの業績に与えたインパクトについて聞かれた宮島専務は、「(ミスドとは)利用動機が180度違う」とし、影響は皆無もしくは軽微と断言した。コンビニのドーナツは数あるコンビニスイーツの1つだが、ミスドはドーナツ目当てで来店する客が多数なので、直接的に市場を奪い合う関係にはないということなのだろう。むしろドーナツ市場の裾野は広がっており、市場規模が縮むことはないというのが宮島氏の見立てだ。

ミスドはトゥゴーの出店計画を練る一方、既存店の改装で「V/21タイプショップ」という店舗を増やしていく方針を掲げている。V/21タイプショップはオープンキッチンでドーナツを作る過程を見せたり、坪数を広めにとってイートインのスペースを充実させたりするなど、顧客の満足度を高めるための趣向を凝らした店舗だ。この新型店舗でブランド価値の向上を計りつつ、トゥゴーでは顧客との接点を増やし、日々の売上を担保するというのが新事業戦略の方向性だと考えられる。ライバルが増えたことにより拡大したドーナツ市場を攻略するには、トゥゴーの出店場所や集客力が重要な要因となってきそうだ。