鎌倉版リアル・ラピュタから富士山も

20分ほど山道を歩いて行くと、メインのルートから道が分かれ、「Cafe Terrace 樹(ITSUKI) Garden」と書かれた白い案内板が立っているのに気がつく。「こんな山の中にカフェテラス? 」と不思議に思うが、取りあえず矢印の方へ向かってみよう。

まるで「ラピュタ」のようだと言われる「Cafe Terrace 樹(ITSUKI) Garden」のテラス席

すると間もなく、まるで空中に浮かぶかのような煉瓦(レンガ)造りのテラスが視界に入ってくる。同店は、もとは別荘として利用していた場所を「ハイカーの憩いの場として開放しよう」と、昭和55(1980)年からカフェを始めたという。今回は、ドイツから茶葉を仕入れているというフルーツハーブティー(税込650円)を、バターを使わないアメリカのオールドスタイルなアップルパイ(税込700円)とともにいただいた。

フルーツハーブティー(税込650円)とアップルパイ(税込700円)で、ハイキングの疲れを癒やす

近年は、コツコツと手作業で造りあげた、山の中腹にあるレンガ造りのテラス席が、まるで『天空の城 ラピュタ』のようだと話題になり、訪れるお客さんも多い。テラス席からは眺望も良く、秋から冬にかけては木々の向こうに富士山が見える日もある。

●information
カフェテラス 樹ガーデン
住所: 神奈川県鎌倉市常磐917
アクセス: JR「鎌倉駅西口」徒歩15分。または、ハイキングコース経由で江ノ電「長谷」駅より徒歩25分

鎌倉で唯一行われる紅葉ライトアップへ

カフェでくつろいで元気を取り戻したなら、再び山道を歩いて行こう。カフェから10分もせず、「大仏坂トンネル」脇の石段でハイキングコースは終点になっている。ここからバス通りを5分ほど歩くと、鎌倉大仏(高徳院)の門前に出る。大仏を過ぎて長谷の街に出ると、一気ににぎやかになり、間もなく「長谷観音前」の交差点にたどり着く。

紅葉の名所である長谷寺には、多くの人々が訪れる

「長谷観音」こと長谷寺は大仏と並ぶ、鎌倉でも指折りの観光名所だが、初夏のアジサイの時期と晩秋の紅葉の時期は特に人が多い。意外に思うかもしれないが、京都などではすっかりお馴染みになっている紅葉の夜間ライトアップを実施しているのは、鎌倉ではこの長谷寺のみなのだ。

長谷寺では、鎌倉で唯一の紅葉ライトアップが行われている

日差しを燦々(さんさん)と浴びて真っ赤に輝く昼間の紅葉もきれいだが、闇の中、ライトアップの光に浮かび上がる紅葉の妖艶とも言うべき美しさは、また格別だ。11月も下旬になると、日暮れ後の冷え込みはなかなか厳しい。もし身体が冷えたなら、江ノ電で「長谷」駅から2駅目の「稲村ヶ崎」駅の近くには、天然温泉が湧く日帰り入浴施設「稲村ヶ崎温泉」がある。温泉でほっこり身体を温めてから家路につくのもオススメだ。

●information
長谷寺
住所: 神奈川県鎌倉市長谷3-11-2
アクセス: 江ノ島電鉄「長谷駅」徒歩5分

ハイキングを楽しみながらの鎌倉での紅葉狩り、いかがだっただろうか。都心から電車でわずか一時間の鎌倉に、このような豊かな自然が残されていることには、感動すら覚えるかもしれない。本記事で紹介したほか、建長寺や覚園寺、瑞泉寺など、鎌倉の紅葉の名所を挙げれば、枚挙にいとまがない。ぜひ鎌倉を訪れて、自然の中で深まりゆく秋を感じてほしい。

※記事中の情報は2016年10月時点のもの

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。