ワイヤレス化の先にある「ヒアラブル」

こうしたヘッドホンのワイヤレス化の波を受け、最近「ヒアラブル」という言葉も出てきているようだ。これはウェアラブルの"耳"版、つまり耳に装着するデバイスを用い、単に音楽を聴くだけではないさまざまな用途に活用するという取り組みだ。

AirPodsでSiriを呼び出し、スマートフォンを取り出すことなく音声でさまざまな情報を知ることができること、そしてGear IconXがエクササイズアプリと連携し、進歩状況を音声で伝えてくれることなどが、ヒアラブルの主な事例といえるだろう。だがよりヒアラブルに特化したデバイスといえるのが、ソニーモバイルコミュニケーションズが11月に欧州での発売を予定している「Xperia Ear」である。

「Xperia Ear」は耳に装着して利用する対話型のエージェントデバイスだ

これはスマートフォンとBluetoothで接続するイヤホン型デバイスだが、片方の耳のみに装着するデバイスであるため音楽を視聴するのに用いるものではない。Xperia Earにユーザーが話しかけたり、Xperia Earが話しかけてきた質問に言葉やジェスチャーでユーザーが答えたりすることで、メールを読んだり、電話をかけたり、天気を調べたり……と、通常スマートフォン上でこなしている操作が会話だけで可能になる、対話型のエージェントなのだ。

「IFA 2016」で実施されたXperia Earのデモでは、会話とジェスチャーでメールを確認し、返信するまでのデモが実施されていた

Xperia Earは常に耳に装着しておくことで、適切なタイミングでスマートフォンの画面を見ることなく情報を得るという、新しい利用スタイルを実現するために開発されたもの。それゆえユーザーが装着したことをXperia Earが自動的に検知して質問してきたり、言葉だけでなく首を縦や横に振って返信したりできるなど、ディスプレイに依存しない利用スタイルが構築されている。モバイルインターネットサービスの利用は現在、スマートフォンのタッチ操作とディスプレイに縛られてしまっているが、今後Xperia Earなどのようなヒアラブルデバイスが台頭してくれば、それらに依存しない新たな利用スタイルが確立される可能性もあり得るだろう。

またサービスの側からも最近、LINEなどのメッセンジャーアプリが、AIを活用し会話しながら情報取得や買い物などができる、対話型のサービス「チャットボット」の取り組みが積極的に進められている。それだけに、ヒアラブルとチャットボットが連携して大きな流れを作り出せば、これまで"画面を見て、手で操作する"ことが当たり前だったインターネットサービスのあり方も大きく変わってくるかもしれない。iPhone 7/7 Plusがもたらしたワイヤレス化の波は、音楽の視聴スタイルの変化にとどまらない、より大きな流れをもたらす可能性を秘めているのだ。