役員人事を巡る創業家と現経営陣の“お家騒動”で注目を集める大戸屋に新たな動きがあった。会社側が「コンプライアンス第三者委員会」を設立し、対立の原因・経緯に関する調査・検討に乗り出したのだ。内部対立が表面化しているとはいえ、不祥事が起きているわけではないケースで第三者委員会が設置された珍しい事例だが、外部の人間が入ることで、感情が絡む企業内部の問題は解決するのだろうか。

大戸屋の“お家騒動”は解決に向かうのか

企業の内紛で第三者委員会設置は異例

実質的な創業者である前会長・三森久実氏の急逝に端を発する大戸屋の内紛。三森氏は生前、息子の智仁氏を常務取締役に取り立てる(2015年6月)など、同氏を後継者にしたいという意向があったようだが、現経営陣に体制が移行した後、智仁氏は常務取締役から取締役へと異動(2015年11月)になり、2016年2月には取締役を一身上の都合を理由に辞任していた。久実氏から大戸屋の株式18%超を相続した同氏の妻と智仁氏は、2016年6月の株主総会で承認された役員人事にも反対の意向を表明していたという。

「経営陣と遺族の間で対立が表面化し、深刻化している状況の中で、大戸屋という企業が社会に信用され、組織として社会の要請に応えていく上で、いささか懸念される事態が生じている」。コンプライアンス第三者委員会の委員長に就任した弁護士の郷原信郎氏は、お家騒動の渦中にある大戸屋の状況をこのように分析。企業不祥事絡みではないケースで第三者委員会が立ち上がることは異例だと認めつつも、「(創業家と現経営陣の間に)対立・確執が生じている原因・経緯について、中立的・客観的な立場から調査・検討を行い、必要な提案・助言を行うため」と委員会設置の目的を説明した。

委員会の設置については、2016年8月5日の取締役会を前に、大戸屋の窪田健一代表取締役社長と郷原氏が会って話をするなかで決まったという。委員会では今後、客観的な資料の調査や関係者へのヒアリングといった活動を進めていく方針。創業家側には委員会設置の趣旨を説明し、調査活動への協力を求めているが、現時点で回答は得られていないという。