長時間労働のイメージが強いSE職。ITのシステム開発スキルを持つ女性たちは、結婚・出産などのライフステージの変化を前に、どのような働き方を模索しているのだろうか。今回は、在宅・時短勤務をしているSE職の女性などが交流を図るコミュニティー、「SE女子部」の設立イベントに潜入。自らの働き方について語る、参加者たちの話を聞いてきた。

在宅・時短勤務をしている、もしくはそのような働き方を希望しているメンバーが集まる「SE女子部」が設立!

出産を機に生き方、働き方を再考

SE女子部とは、結婚、出産、介護、転勤など、さまざまな理由で勤務制限がある、SE職女性のコミュニティーグループ。在宅・時短勤務をしている、もしくはそのような働き方を希望しているメンバーが、SNSやチャットをメインに交流している。7月に行われた設立イベントには、約20人のSE職女性が集合。はじめに在宅勤務をしている参加者の1人が、そこに至るまでの経緯について語ってくれた。

現在、WEBサイトのシステム改修などを、在宅で行っているというその女性は、3年前、娘の出産を機に勤めていた会社を辞めたという。「以前の職場では、やりがいを持って働いていましたが、業務は多忙をきわめ、数カ月間、深夜残業や休日出勤が続くこともありました」。出産後、時短勤務がかなわず、部署の配置換えも難しい状況となった時、「これまでの生活は、人生の潤いに欠けていたかもしれない」と感じ、退職を決意。自分の生き方や働き方を再考した結果、在宅勤務という選択肢にたどり着いたという。

勤務管理はGoogleスプレッドシート、打ち合わせはSkypeを駆使して「快適に仕事ができている」と語る彼女は、現在、業務の幅を広げようと、スキルアップのための勉強も重ねているとか。最後は会場に向かって、「同じ境遇の人たちが集まっているので、分かり合えることも多いと思います。共に成長していきましょう」と呼びかけた。

お金とやりがいのバランスが難しい

このあと行われたグループトークでは、参加者がお互いの働き方について話し合った。「前の会社では、残業=能力と評価される風潮があった。10~20年後も働けるイメージが持てなかった」「子どもの小1の壁が乗り越えられなかった」「双子の育児で退職を決意した」「夫が転勤のある会社で働いている」など、働き方を変えた理由は人それぞれ。しかし話を聞いていると、それぞれが新しい世界で活躍しているようだ。

働き方、子育てなど、さまざまなテーマを出し合い、悩みや思いを共有しあう参加者たち

時短勤務の正社員として働く人、NPOを運営しながら仕事に取り組む人、今までとは異なる分野の仕事を、SE職として勉強しながらチャレンジしている人など、参加者たちのキラキラとした笑顔が、とても印象的だった。

また、仕事で活用しているITツールやソフトの情報、仕事の仕方、それに子育てとの両立方法を共有するなど、会話は大いに盛り上がった。その一方で、悩みもあるようだ。出てきた言葉は、「同じ仕事を会社でしていたら、報酬は変わってくるのかと考えてしまうことがある」「働く時間帯を選んでいる以上、フルタイム勤務と比較すれば収入面に差があるので、お金とやりがいのバランスが難しい」など。仕事にやりがいを感じ、成果にこだわってきた人たちだからこその、悩みなのかもしれない。

働く時間に制限あっても活躍を

IT関連の事業などを手がけ、今回、SE女子部の運営を担っているコネクティルの坂口健太郎 代表取締役は、「SEの仕事は納期が決まっているので、直前に徹夜で作業をしたり、バグが出た時に修正の対処をしたりして、長時間労働になりやすい傾向がある」と指摘。その結果、仕事がきつい、休めない、メンタルの病気を抱える人が多いなどのイメージが定着してしまい、新しい人材が入ってきにくい状況にあるという。

そんな中、在宅で働くSEは増えてきているのだとか。企業の1プロジェクトに追加人員として入ったり、パーツ部分の発注を請け負ったりする仕事が主とのことだ。坂口代表は「人材不足だからこそ、働く時間に制限がある人たちに活躍してもらいたい」と語った。

フルタイム勤務でも、働きやすい環境を整えているSEの職場は、もちろん、たくさんあるだろう。しかしその選択肢の一方で、個人の希望や事情に応じて、やりがいのある仕事を続けられる環境が、もっと広がることを期待したい。