「2016年6月30日をもって、サービスの提供を終了させていただくこととなりました―」。2016年6月6日、毎週の恒例として、TBSラジオの深夜番組「JUNKバナナマンのバナナムーンGOLD」のポッドキャスト(月曜配信)を聴こうとすると、冒頭のアナウンスに驚かされた。人気コンテンツを多く抱えるTBSラジオが、ポッドキャスト配信から手を引くと発表していたからだ。ポッドキャストのコンテンツについては、新サービス「TBSラジオクラウド」でのストリーミング配信に切り替えるとする同社。音声配信の収益化に挑戦する同社の新サービスは成功するのだろうか。

ラジオとポッドキャストは相性抜群

ポッドキャストは誰でも音声や動画を配信できる仕組みだが、豊富な音声コンテンツを有するラジオ放送局とは特に相性が良いサービスだといえる。本業のラジオ放送が音声コンテンツの宝庫であるため、ラジオ放送局は本放送を切り出すだけでも上質なポッドキャスト番組を制作可能だからだ。ラジオ放送局によるポッドキャストは実際に人気を集めており、ダウンロードランキングではラジオ番組に関連するコンテンツが上位を占めている。

TBSラジオのポッドキャスト一覧には、本放送に連動した人気番組が並ぶ(画像はTBSラジオHPより)

TBSラジオがポッドキャスト終了の理由として挙げている要素は2つある。1つは、「ラジオの面白さを多くの人に知ってもらう」という目的で始まったポッドキャストが、「ラジコ」の登場により一定の役割を終えたこと。もう1つは、サーバー負担などの維持費用の増大だ。配信サーバーを自前で用意する必要があるポッドキャストでは、番組が人気を獲得し、ダウンロード数が増えれば増えるほどコストもかかる仕組みになっている。

人気が出るほど費用がかさむポッドキャスト

ポッドキャスト配信にかかるTBSラジオの費用的負担はどのくらいか。同社インターネット事業推進室 兼 営業統括局事業部の萩原慶太郎氏に聞いてみると、「1つの番組が10MB程度(かそれ以上の大きさ)で、それが月間5,000万~6,000万ダウンロード」とサーバーの規模を説明したうえで、その維持・管理に大きなコストが掛かっていることを明かしてくれた。サーバーや回線費だけでもコストは年間数千万円に達するとのこと。維持・管理費や人件費など、そのほかにもコストが発生していることは想像に難くない。