都民になって早うん十年。新宿も池袋も迷うことなく縦横無尽! という人も、はてさて、都内の地名や歴史においてもすらすらと答えられるだろうか。そんな、質問されると言葉に詰まってしまいそうな「東京トリビア」を少しずつ紹介しよう。

なぜ全国には「○○銀座」と称するところが多いの?

吉祥寺はどこにある?

まず第1問。住んでみたい街としても人気の吉祥寺、この街には本当に吉祥寺というお寺はあるのか? 答えは……NO。吉祥寺があるのは駒込のようだ。

吉祥寺という地名の由来には、江戸時代に起きたとされる「明暦の大火」が関係しているとのこと。本郷元町(現在の水道橋駅近く)にあった曹洞宗諏訪山吉祥寺の門前町が焼失してしまい、門前の住人たち現在の武蔵野市東部に移住。移住した人たちは吉祥寺に愛着を持ち、その地を吉祥寺村と称すようになったとされている(参考文献: 『地名の博物誌』(谷口研語著/PHP新書)、『東京の地名』(筒井功著/河出書房新社))。

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諏訪山吉祥寺の山門。文京区本駒込にある

なぜ歌舞伎町?

第2問。新宿・歌舞伎町には歌舞伎座がないのになぜ歌舞伎町なのか? 答えは……昭和の時代に歌舞伎劇場「菊座」を中心とした町計画があり、当時の東京都知事の賛同も得て歌舞伎町が誕生したとのこと。

計画されていた歌舞伎劇場は4階建て1,850人収容規模のものだったそうだが、建設は中止となり、代わりに新宿コマ劇場が建設されることになった。しかし、いったん決められた歌舞伎町という町名は変わることはなかったようだ(参考文献: 『歌舞伎町』(鈴木喜兵衛著/新宿第一復興土地区画整理組合))。

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誰もが知っている新宿歌舞伎町。だが歌舞伎町の名前の由来を知る人は少ない

なぜ池袋?

第3問。池袋の由来は? 答えは……本当にそこに池があったから。現在の池袋がある地域は昔、低湿地だったようで、現在の池袋駅西口一帯には「袋池」という名の袋状の池があったそうだ。

池袋から遠くない距離にある中野区の沼袋も、沼があったことが地名の由来。池袋、沼袋に共通する「袋」とは、洪水などによって自然にできた池や沼を意味する言葉らしく、この「袋」の付く地名はたいがいが湿地帯だったと考えていいらしい。茨城県の石岡市にも池袋という地名があって、こちらも湧き水の豊富な土地という(参考文献:『地名の由来から知る日本の歴史』(武光誠著/ダイヤモンド社))。

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東京の池袋西口には地名の由来の碑がある

なぜ五反田?

第4問。五反田の名前の由来は? 答えは……この地の水田が一区画五反の大きさだったから。

数字を含む地名は全国に数多い。古代より地理上の区分をするのに数字が使われ、その地を特徴づける自然物や事物の数、大きさなどが地名として定着したからだと考えられる。例えば東京には「一」から「十」まで数字のつく地名があり、一ツ橋=日本橋川と小石川の二つの川が一つに合流する地点に橋があった、二子玉川=二つの古墳があって二子塚と呼ばれていた、等がある(由来については諸説あり。参考文献: 『角川日本地名大辞典・東京都』(角川書店))

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六本木は昔、六本の松の木がランドマークだったという説もある

隅田川があるのになぜ墨田区?

第5問。隅田川があるのに墨田区なのはなぜ? 答えは……いくつか理由があるようだが、命名当時「隅」という字が当用漢字ではなかったことや、当時はまだ隅田川が法律で正式な名称とされていなかったことも関係しているようだ。

ちなみに、多摩川側の地域である二子玉川は、なぜ二子多摩川にならなかったかというと、「分かりやすく、書きやすい。感じが良い」といった理由で、地元(現在の世田谷区の多摩川流域)の人たちは「玉川」を用いるようになった、ということも関係しているとのこと(参考文献: 『角川日本地名大辞典・東京都』(角川書店)、『東京都の地名』(平凡社)他 )。

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人気の隅田川クルーズ。写真の右岸が墨田区、左岸が台東区である

なぜ半蔵門?

第6問。半蔵門の名前の由来は? 答えは……徳川家康の江戸城入城の際に服部半蔵が警護した門だったから。

都内にある街の名称は徳川家康による江戸の町づくりに由来するものが多く、由来を知ると東京という町の歴史がほの見えてくる。半蔵門の他にも、「御徒町(おかちまち)」とは、将軍の警護を行う下級武士の"御徒"が多く住んでいたことから付けられた地名、目黒区の「鷹番」は幕府の鷹場を管理する番小屋が置かれていたことに由来している(参考文献: 『東京23区の地名の由来』(金子勤著/幻冬舎ルネッサンス)、『地名の由来から知る日本の歴史』(武光誠著/ダイヤモンド社))。

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皇居は元は江戸城。千代田城とも呼ばれ千代田区の区名の由来である

○○銀座はなぜたくさんある?

最終問題。なぜ全国には「銀座」を名乗る地域が多いの? 答えは……直接的な答えではないが、銀座の華やかなさにあやかる地域が多かったとしても、「銀座通連合会」事務も特に他の地域が「銀座」と称することに対してとがめる等の関与をしてこなかったことで、増えていったのではと考えられている。

ただし、商店街(振興組合)の名称については、昭和37年(1962)施行の「商店街振興組合法」によって「会社法」第8条に準拠するとされ、「何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない」とある(商店街が振興組合として登記している場合に限る)。それ以前の時代にも「中小企業等協同組合法」などによって同様の制約があったようだ。

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全国の「○○銀座」第1号の戸越銀座は、本家の銀座の公認を得ているという


全問正解できただろうか。普段歩き慣れた街も、こうした歴史を知った上で見てみると、今までとはちょっと違ったように見えてくるもの。今まで気がつかなかったものの、街の片隅にはその街が歩んできた歴史を伝える石碑が残されている、ということもあるので、今度の週末はそんな発見をするために、都内のぶらり散歩をしてみてはいかがだろうか? また、東京のことをもっと知りたい人は、何度もチャレンジできる「第1回 東京通検定」もぜひどうぞ。

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