ダイソンは4月27日、ヘアードライヤー「Dyson Supersonic」の発表会を都内で開催。創業者のジェームズ・ダイソン氏が登壇し、プレゼンテーションを行った。
Dyson Supersonicはダイソン初となる美容家電。羽根のない扇風機・テーブルファンを小型化してドライヤーに応用したかのようで、まさに従来の常識を覆す製品、という印象だ。扇風機に使われてきた特許技術「Air Multiplier(エアマルチプライアー)テクノロジー」により、中に取り込んだ空気をモーターの力で3倍に増幅させ、強い風圧と風量、高速な気流を実現。最大風量13L/秒、風圧3.5キロパスカルの風で髪を乾かす。ダイソン氏は「フロー(気流)ファンではなく、プレッシャー(風圧)ファンを採用した」と強調していた。
風の吹き出し口。空洞になっているのが画期的だ。ダイソンの扇風機同様に風圧が高く、直進の風が勢いよく吹き出す |
吸気口の内部にはフィルターを内蔵し、ホコリが入り込むのを防ぐ。カバーは簡単に着脱でき、手入れしやすい |
また、ドライヤーの心臓部であるモーターには、新開発の「デジタルモーターV9」を採用。直径27mmと500円玉大の大きさで、一般的なドライヤーに使われているものと比べてはるかに小さい。重さも49gと軽量だ。
モーターの回転数は最大110,000回/分。通常のドライヤーの回転数が15,000回/分程度であるため、8倍近くも回転する。インペラー(羽根車)のブレード数を従来の11枚から13枚に増やしたうえ、モーターの軸にカーボン繊維を巻いた磁石を採用し、高速回転を実現させている。高速化することにより運転音を大きくしてしまう可能性があったが、周囲にチューブや消音器を設けることで、不快な音を低減している。
モーターの生産について、ダイソン氏は「ドイツで軍事用機器を製造するメーカーが作っているため、輸出許可が必要で時間がかかった。高い精密性が求められるインペラーは長年つきあいのある日本のメーカーに委託している」と、品質に対するこだわりを語った。
ダイソンがドライヤーの開発に投じた費用は総額5,000万ポンド(約80億円)。これには毛髪を科学的に分析するための研究施設の整備なども含まれている。会場には、実際に行われていた実験過程のVTRや、使用された研究装置なども展示されており、美容家電分野への進出にあたっての同社の本気度を示した。
そして、毛髪へのダメージを抑えるために採用されたのが「インテリジェント・ヒートコントロール」という技術だ。ガラス玉を用いたサーモセンサーを内蔵し、毎秒20回測定した温度データをもとにマイクロプロセッサーが発熱体を制御する仕組みだ。ドライヤーの温度設定は、78度、62度、45度の3段階だが、設定温度を超えないようにコントロールし、過熱による髪へのダメージを抑えるとしている。
ダイソンがもう一つこだわったのは「スタイリングのしやすさ」。一般的なドライヤーはモーターをヘッド部分に組み込むが、ダイソンのドライヤーはグリップ部分に内蔵。本体重量は618gと実はやや重めなのだが、ヘッド部分に重量を持たせることで重心を下側に移行。手の負担を低減している。
3種類の付属アタッチメント。ノズル状のものがブロー用で、先が細いほうが集中的に風圧の高い風を当てることができる。お椀状のアタッチメントは風を均一に分散させて髪に当て、カールやウェーブをキープしながら乾かせる「ディフューザー」。アタッチメントはワンタッチで装着できる |
アタッチメントはブローに向いたノズル2種類と、パーマヘア用ノズル1種類の計3種類。いずれも装着はマグネット式。ワンタッチで装着できる。吹き出し口は二重構造なので、表面が熱くなりにくいことも特長だ。
発表会には、ヘアメイクアップアーティストの加茂克也氏も登場。ステージ上でデモンストレーションを行い、「風量はプロ用のドライヤーよりあると思う。風圧も強く、ドライヤーを当てると根元の地肌が露出するほど。地肌に直接風を当てると、速く乾くだけでなく根元のクセを抑えられるので、毛先の流れが均一になりキレイに仕上がる。ヘッドが短く、手元と髪の毛との距離が近いのも使いやすい」と、プロの目線で評価した。