アップルがApple Store実店舗にて提供しているジュニア向けプログラム「フィールドトリップ」がApple Store, Ginzaで開催された。今回は山梨県甲府市の山梨英和中学校・高等学校の生徒が参加した。

iMovieを使ってのワークショップの様子。iPadを使ってセルフィーを撮るところからスタート

フィールドトリップは毎年春と秋に開催され、幼稚園生から高校生までを対象としている。今回は山梨県甲府市の山梨英和中学校・高等学校の生徒が参加。前半はアップル純正の映像編集アプリ「iMovie」を使って自己紹介ムービーを制作するというワークショップ、後半は学校での研究活動を振り返るプレゼンテーションが参加した生徒たちの手で行われた。

山梨英和中学校・高等学校の三井貴子校長

iMovieを使ってのワークショップでは、iPadを使ってセルフィーを撮るところからスタート。生徒たちは普段学校で使っているというiPadを手にし、スタッフのこうすると綺麗に撮れるよといったアドバイスを受けながら、思い思いのポーズで写真を撮っていく。撮った写真をタイムラインに並べ、他の映像素材、別録りした自己紹介のオーディオパート、プリセットの効果音などを足していって、オリジナルのムービーを作り上げていった。授業で使っているということで、iPadの操作で躓く生徒は殆どおらず、すいすい作業は進んでいくといった印象だ。山梨英和中学校・高等学校では中学2年生から高校3年生までの5学年がiPadを個人所有している。

後半は、同校の三井貴子校長の挨拶でスタート。2012年からiPadを使ったICT教育を取り入れているのだが、これにより「学び」というものが根本的に変わったという。教えられるということから、自ら楽しんで学ぶという形に変容したとのことだ。「フィールドトリップ」への参加は、昨年に続き2度目となる。

「be動詞と一般動詞の疑問文の作り方」というテーマで発表を行った中学3年生の工藤さんと田口さん

英語が苦手という中学3年生の工藤さんと田口さんの「be動詞と一般動詞の疑問文の作り方」というのプレゼンテーションからスタート。二人はiTunes Uを利用して英語担当の教諭とやりとりしながら動画を作成していったと報告。be動詞と一般動詞を擬人化し、説明動画とすることで、英語の理解を深め、ほかの生徒とも共有し、学習に進んで取り組んでいくことを目的にしていくという。

英語の授業で勉強した『賢者の贈り物』という物語を動画にした高校1年生の中村さん

二番目に登壇したのは高校1年生の中村さん。英語の授業で勉強した『賢者の贈り物』という物語を、こちらもまた学習に役立てる目的で動画を作成している。制作にあたっては「ロイロノート」で構成を考えていったそうである。ロイロノートは、写真、動画、テキストなどのカードを線でつなぐだけでプレゼンテーションが行えるアプリで、絵コンテを作りながらムービーを組み上げていくこともできる。思考を整理するのにも良いツールだ。実際に作ってみたところ、英語の授業も楽しく受けられるようになったそうだ。

「最小二乗法によるカテナリーフィッティング」をテーマにした三井さんと、「Unicritical多項式のジュリア集合と円環領域」を主題に据えた國友さんの発表

続くは、「最小二乗法によるカテナリーフィッティング」をテーマにした三井さんと、「Unicritical多項式のジュリア集合と円環領域」を主題に据えた國友さんが発表を行った。二人とも高校2年生だ。山梨英和中学校・高等学校は、文科省指定のスーパーサイエンスハイスクールで、各学年でさまざまな取り組みを行っているのだが、今回は高2の二名がプレゼンを行った。

三井さんは「カテナリー曲線」というロープの両端を固定して垂らした際にできる曲線について研究。上下を反転させることで力学的に安定するので、アーチ橋などの構造体で多く見られる。著名な建築家であるアントニ・ガウディの作品でも多く取り入れられているとのことだ。このカテナリー曲線を実験と解析行うことで曲線の変化について纏めた。國友さんは、雪の結晶などで見られる「フラクタル」の一種である「ジュリア集合」の形状について研究を行った。二人とも研究には「Mathematica」という科学技術計算で用いられるMac用ソフトを利用したとのことだ。

文学部卒の筆者には、正直チンプンカンプンな内容ではあったが、実験の内容をムービーで見せたり、得られた結果を図形に起こして可視化されると、なんとなく分かったような気になった。これはきっとiPadやMacを使うことで彼女たちのプレゼン能力が着実に高められている、ということの証なのだろう。

高校3年生の萩原さんと藤巻さんは、環境について楽しみながら学習できるオリジナルカードゲームを作成

そして、高校3年生の発表に移った。山梨英和中学校・高等学校はまた、ユネスコスクールにも認定されており、高校1年生から「グローバルスタディーズ」という授業でEducation for Sustainable Development(ESD:持続可能な開発のための教育)をテーマに学んでいる。高校3年生の萩原さんと藤巻さんは、この授業で学んだことから、環境について楽しみながら学習できるオリジナルカードゲームを作成、実際にゲームをプレイしてから得られた知識がどのようなものでどの程度のものであったかをレポートした。

平成27年度山梨県芸術文化祭賞を受賞した高校3年生、美術部所属の吉井さんのアニメーション作品が最後に披露された

プレゼンテーションの最後は、平成27年度山梨県芸術文化祭賞を受賞した高校3年生、美術部所属の吉井さんのアニメーション作品が披露された。『MEMORIES』と題されたこの作品は、ストップモーションアニメを作成できる「ストップモーションスタジオ」、先ほど紹介した「iMovie」、アップル純正の音楽制作アプリ「GarageBand」を使って制作された。吉井さんは、キャラクターを描き、動画を編集するのはもちろん、なんと音楽までも自作している。フリー素材で良いものがなかったから自分で作ったと話していたが、曲も驚くレベルのクオリティに仕上がっていた。飼っていた犬との記憶を辿るという内容で、喪失感と今でも残る犬との思い出を対比させながら瑞々しく描いていた。吉井さんは、現在でもストップモーションアニメの技法を中心として作品に取り組んでいるが、今後はさまざまな技法に挑戦し、表現の幅を広げていきたいと、将来を語った。

近藤美和教諭からは労いの言葉が

プレゼンテーション終了後、同校の近藤美和教諭から一言。まとまった形でプレゼンテーションを見て感極まったと感想を述べ、どんどんiPadを使いながら学びを深めていってほしいと期待を寄せた。

恒例の修了書授与に続き、USBメモリ付きのリストバンドがプレゼントされた

フィールドトリップ、最後は恒例の修了書授与。あわせて、USBメモリ付きのリストバンドがプレゼントされた。忘れられない学習体験ができるフィールドトリップの次回開催は2016年秋を予定している。教室で学んでいることに合わせて、さらに理解を深められるようなプログラムが用意されている上、Apple Storeを発表の舞台にできる。参加申し込みは、こちらをチェックしていただきたい。