「録画」を憎むテレビ局の本能

そもそも、テレビ局はずっと "録画" を快く思ってこなかった。録画されると「CMの広告価値」が下がるからだ。実際、録画番組でCMを飛ばさずに見ている人は皆無だし、「この時間帯にはこういう人が見ている」というCM挿入の前提となる状況が崩れるため、生視聴に比べ、広告価値は下がる。テレビ局にとっては目の上のたんこぶのようなものだった。

とはいえ、いまさらそれを問題にしてもしょうがない。録画という行為を排除するのは難しいためだ。テレビ局もずっとそう思ってきた。

どうやらその認識を変える状況が出てきたらしい。筆者に対し、あるテレビ局関係者はこう話す。「ネット配信がビジネスになりはじめたのが、問題を蒸し返す原因かもしれない」と。

2015年には、日本でもNetflixやAmazonがビジネスを開始し、「ネット配信向けのコンテンツ市場」の価値が高くなった。また、「TVer」をはじめとした、動画広告から利益を得る形の「テレビ番組見逃し配信」も登場し、ネットでテレビ番組をみる行為も、決して珍しいものではなくなった。

有料配信にコンテンツを出せば、テレビ局には視聴収入が入る。見逃し配信では、生視聴と同じく広告料が入る。しかも、見逃し配信は録画と違ってCMを飛ばすことができない。

2015年中に取材した複数のテレビ局関係者が、「まだ収入はごく小さいが、見逃し配信は今後の収入の柱になりうる。少なくとも録画されるよりはずっといい」と話していた。テレビ局内でそういう論調が出てきたのは、2015年夏から秋にかけてだ。これは、NexTV-Fでテレビ局が「録画禁止の導入」を声高に主張し始めた時期と符合する。偶然とは思えない。

テレビ側は見逃し配信を収益の柱にしたいと考えている(写真はTVer開始の共同記者会見にて)