セイコーエプソンは1日、都内で記者発表会を開き、新規事業となる「スマートサイクル事業」および、古紙を原料とするオフィス向け製紙機「PaperLab」(ペーパーラボ)を発表した。

PaperLabと設置イメージ

PaperLabは、オフィスで使用済みのコピー用紙を原料として、再生紙を作り出す製紙機。本体サイズはW2.6×D1.2×H1.8mと比較的小型で、作成可能な再生紙のサイズはA4またはA3だ。一般的なコピー用紙のほか、名刺用といった厚手の紙や、CMYおよびCMY混合による色を付けた再生紙、香りを付けた再生紙も作れる。古紙の投入から約3分で再生紙ができあがり、A4用紙で1分あたり14枚の作成能力を持つ。

PaperLabの処理能力

セイコーエプソン 代表取締役社長の碓井稔氏

PaperLabのテクノロジー

セイコーエプソン 代表取締役社長の碓井稔氏によれば、十分な経済的メリットを提供できるようになったため、発表にいたったという。今回はあくまで発表にとどまり、記者からは製品価格やコストに関する質問が多く飛んだが、正式な発表まで具体的な回答は控えるとした。

碓井氏は「新しいコピー用紙を買うよりは安い。電力コストや輸送コスト、再生紙へのリサイクルや機密文書の処理を外注するといった部分も込みで、経済的メリットを出せるようになった」と話す。ビジネスモデルや提供形態(リースや販売など)も、正式発表で明らかにされる。

企業内で紙のリサイクルを実現

製品化は2016年の予定

オフィスが抱える「紙」の課題と(写真左)、使用済み用紙に関する従来のワークフロー、およびPaperLabによるシンプルなサイクル(写真右)

製品化と正式発表は2016年を予定しており、すでにセイコーエプソンの社内では試験運用を開始。製品化当初は大手企業や自治体への導入を見据え、一部で2016年早々から実証実験に入るそうだ。将来的には一層の小型化を実現し、例えばエプソン製のビジネスプリンタ/複合機とPaperLab(製紙機)を、オフィス内に並べて設置するような使い方も想定している。

使用済みの紙をどうやって再生紙にするか

話をPaperLabに戻すと、原料として使える古紙は一般的なコピー用紙で、雑誌などは「使えなくはないが想定していない」(開発責任者のセイコーエプソン 市川和弘氏)とのこと。A4コピー用紙で考えた場合、約1.2枚の古紙から1枚の再生紙を作れる。

コア技術のドライファイバーテクノロジー

PaperLabの開発責任者を務めたセイコーエプソンの市川和弘氏

技術面のポイントは「ドライファイバーテクノロジー」だ。まず、原料の古紙に機械的な衝撃を加え、「繊維」レベルまで細かくする。使用済み用紙の表面から、トナーやインクなども落とす。続いて結合素材によって強度や白色度を高め、最後に成形して再生紙を生み出す仕組みだ。

最初の繊維化は、シュレッダーよりもはるかに古紙が細かくなる。よって、機密文書を原料とした場合に情報を完全抹消できることも、PaperLabの大きなメリットとして掲げた。また、水を使わないため、オフィスのバックヤードに設置しやすく、環境負荷も低い(PaperLab内部の湿度を保つために少量の水は使う)。

原料となる古紙を繊維化。写真右は、PaperLabで実際に繊維化されたもの。もともとは使用済みのコピー用紙だ

繊維化の次は「結合」

結合の次は「成形」(ここで実際に再生紙を出力)

PaperLabによって、水資源の消費とCO2排出量を削減

PaperLabで作った色付きの再生紙

今回のPaperLabは、セイコーエプソンが打ち出した新事業、スマートサイクル事業の第1弾に当たる。スマートサイクル事業のコンセプトは「紙に新たな価値を与え、循環型社会を活性化」だ。PaperLabに続くプロダクトやソリューションは明らかにされなかったが、こうした「紙」をベースとしたリサイクル型の市場規模を、セイコーエプソンはワールドワイドで約3,000億円以上と試算する。PaperLab関連については、「3年から5年で売り上げ100億円の規模に乗せたい」(碓井氏)とした。

今回、セイコーエプソンが打ち出した「スマートサイクル事業」。紙やプリンティングといった、同社が得意とする分野において、新しい市場の創出を狙う