10月30日、新製品の開発背景からカタログに掲載されていないスペックまで、メーカー担当者が直接解説するケンコー・トキナーの「一般ユーザー向け10月度新製品発表会」が、東京都・中野区にある同社にて開催された。実機に触れることはもちろん、開発秘話が聞けた。
主な発表品目は以下の3点。カーボン三脚「SLIK ライトカーボンEシリーズ」(10月23日発売)、望遠レンズ専用リュック「aosta トレジャーズ」(11月5日発売)、単眼鏡「ケンコー SRシリーズ」(10月9日発売)だ。今回の催しは、一般向けに製品紹介をするという新しい企画の第1弾となり、参加費は無料。さっそく、その模様をお伝えしよう。
![]() |
![]() |
【左】単眼鏡「ケンコー SRシリーズ」。写真左から、「1625SR 16X25FMC スタビライザー」、「1225SR 12X25FMC スタビライザー」、「825SR 8X25FMC スタビライザー」 【右】1625SR 16X25FMC スタビライザーの側面 |
プレゼンターはケンコー・トキナーの田原栄一氏。最初は、エントリーモデルのカーボン三脚「SLIK ライトカーボンEシリーズ」(価格は50,000円~)を取り上げる。EシリーズのEはENTRYの略だ。
カーボン三脚の歴史を振り返りながら、「どうしてカーボン三脚は高いのか?」というテーマを掘り下げていく。1976年、スリックがカーボン三脚「500Gカーボン」を試作したところ、原材料費などコストだけで10万円におよび、製品化にいたらなかった歴史を紹介。カーボンパイプ(炭素繊維とエポキシ樹脂の複合材)の素材価格が高く、加工の手間がかかることが主な原因だった。
写真向け市販カーボン三脚の第1号は1994年「ジッツオG1228」に、国内初は1996年「ベルボン カルマーニュ640」に譲ることになる。スリック初の製品は「プロ804CF」「プロ803CF」で、より軽量化できた開発過程を振り返りながら、コストダウンの工夫とチャレンジについて語った。
具体的にはまず、2002年「カーボンマスターシリーズ」から、タイ工場での製造に切り換えた。エントリーモデルの「ライトカーボンEシリーズ」では、パイプ製造元を別ベンダーへと変更し、成形も「押し出し機」を使う方法から「巻く」方法にするなど、設計・製造段階から見直した。
また、ウレタングリップを3本から1本へ削減し、3Way雲台を安価な「割り締め式」に変更するなどコストダウンも実施。その結果、販売価格を抑えることができたという。アルミ三脚(同等サイズ)と比較して3割程度の軽量化に成功し、ブレの抑制にも優れる性能を確保している。
発表会では、実際に600mm F4レンズを装着したデジタル一眼レフを使って、ブレを抑える能力をデモンストレーション。一般の参加者も、アルミ製三脚とカーボン製三脚の違いを体験できた。
カーボン三脚「スリック ライトカーボンEシリーズ」仕様
■ SLIK ライトカーボンE84(65,000円) |
---|
28mmパイプ径中型カーボン三脚・4段タイプ、全高1,727mm、エレベーター下げ全高1,407mm、縮長555mm、重量2,090g、最低地上高290mm、最大搭載重量5kg |
■ SLIK ライトカーボンE83(60,000円) |
28mmパイプ径中型カーボン三脚・3段タイプ、全高1,795mm、エレベーター下げ全高1,475mm、縮長675mm、重量2,075g、最低地上高330mm、最大搭載重量5kg |
■ SLIK ライトカーボンE74(55,000円) |
25mmパイプ径中小型カーボン三脚・4段タイプ、全高1,725mm、エレベーター下げ全高1,400mm、縮長535mm、重量1,775g、最低地上高270mm、最大搭載重量4kg |
■ SLIK ライトカーボンE73(50,000円) |
25mmパイプ径中小型カーボン三脚・3段タイプ、全高1,750mm、エレベーター下げ全高1,400mm、縮長640mm、重量1,745g、最低地上高302mm、最大搭載重量4kg |