リコーは、ドイツ・ベルリンで開催された家電関連展示会「IFA 2015」において、全天球画像がワンショットで撮影できる「RICOH THETA」の上位モデル「RICOH THETA S」を発表した。高画素化やスマートフォンを使ったライブビュー撮影に対応し、国内を含むグローバルで10月下旬に発売する。価格は349ドルで、日本では43,000円前後の見込み。既存の「RICOH THETA m15」も併売される。

RICOH THETA S。従来の縦長のボディデザインは変わらず。新しくマットなブラックカラーを採用した

RICOH THETAに高機能モデルが登場

RICOH THETAは、2つのレンズと撮像素子を備え、一度のシャッターで2枚の画像を撮影、それを合成することで上下左右360度の全天球画像を生成できるカメラだ。ちょうどGoogleマップのストリートビューを思い浮かべるとわかりやすい。2013年の登場以来、一定の人気を得ており、他社製の全天球カメラも複数登場してきた。

屈曲光学系も一新し、大口径化した

上位モデルとなるRICOH THETA Sでは、より高画素になるなど高機能化を図り、ビジネス現場での利用も想定して開発されたという。リコー 新規事業開発センター所長の大谷渉氏は、ユーザーからのフィードバックにもとづいて新開発したとしており、軽量でコンパクトという特徴は維持しながら、撮像素子は1/2.3型1,200万画素CMOSセンサーと大型化し、出力画素数も1,400万画素と高画素化した。

センサーの大型化と高画素化に加えて、6群7枚構成の新レンズは開放F値がF2.0と明るくなった。そのほか、画像処理技術も進化し、特に暗所での画質が向上。長秒時撮影によって低ノイズの夜景撮影も可能になったという。

基本的なデザインは踏襲しているが、写り込みなどにも配慮してボディはブラックに。現在の設定状況などを表示するLEDランプも設けた。

シャッターボタンを押せば撮影できる簡単操作は変わらないが、専用のスマートフォンアプリ「RICOH THETA S」経由でライブビュー撮影にも対応。無線LAN経由でスマートフォン・タブレットとRICOH THETA Sを接続し、ISO感度や露出補正をしつつ撮影できる。

正面に撮影状況を示すLEDを設けたほか、側面には動画・静止画切替ボタンを配置

【左】ライブビュー撮影に対応。【右】ISO感度、シャッター速度、ホワイトバランスを変更できる「マニュアル」モードを搭載

動画撮影もRICOH THETA m15と同様に可能だが、従来の1回最大5分から最大25分(もしくは4GB)までに長くなり、フルHD(1,920×1,080ドット)/30fpsでの記録に対応した。そのほか、無線LANモジュールを一新したことで転送速度が最大4倍まで高速化したとしている。また、micro HDMI端子も底面に追加された。

撮影や操作に使う専用アプリ「RICOH THETA S」に加え、画像編集用の「THETA+」アプリがすでに用意されているが、今後さらに動画編集用の「THETA V+」アプリを提供する予定だ。

【左】今後、動画編集用アプリも追加。【右】無線LANの通信速度は最大4倍に

リコー 新規事業開発センター所長の大谷渉氏

大谷氏は、高画質化したことで「既存ユーザーも新しいステップに進んでほしい」とコメント。まだRICOH THETAを使ったことのない人に対しては、「天球画像革命を起こしましょう。ユニークな360度体験をしてほしい」とアピールする。

全天球画像をGoogleマップへ投稿できる

GoogleのCharles Armstrong氏

今回、ゲストとしてGoogleマップのプロジェクトマネージャーであるCharles Armstrong氏が登場。RICOH THETA SはAPI経由でほかのサービスとの連携が可能だ。GoogleのOpen Spherical Camera APIをベースにしたことで、撮影した全天球画像をストリートビューの画像としてアップロードできるようになっている。

新たなストリートビューアプリも公開。プレスカンファレンスの時点ではiOS版が公開され、その後すでにAndroid版もダウンロード可能になっている。スマートフォンカメラなどでも同様のことはできるが、RICOH THETAであれば1回のシャッターで全天球画像が撮影できるため、快適にストリートビュー用の画像をアップロードできる。

【左】ストリートビューアプリで、地図から全天球画像を選んで確認できるようになる。【中】これはArmstrong氏が撮影した画像だそう。【右】実際のストリートビューの画像

リコーの専用Webサイト「theta360.com」を経由して、全天球画像をTwitterやFacebookなどのSNSへ共有できるほか、YouTubeやGoogle+といったGoogleのサービスにも全天球画像をアップロードできる。また、動画をスマートフォンへストリーミングすることも可能で、現時点では全天球表示にはならないが、今後全天球表示のストリーミングを可能にするアプリを提供予定だとしている。

RICOH THETAは個人ユースだけでなく、法人でも使われており、特に不動産や観光産業での利用が進んでいるという。今回のRICOH THETA Sでは、こうした法人利用においてさらに活用されることを期待する。

既存モデルのRICOH THETA m15(右)との比較。基本デザインは同じだが、細部にちがい。本体サイズはわずかにRICOH THETA Sの方が大きくなり、ハードケースの流用は難しいようだ

本体側面

本体天面と底部。micro HDMI端子が新設され、キャップがなくなった