国の介護保険制度は8月より制度改正によって補助の対象となる条件が変更されたり、収入の多い人は自己負担がアップすることになりました。これまでよりも負担が厳しくなる人が増え、また今後も高齢化の進展に伴って負担はますます厳しくなりそうな予感。今は元気でもいざ介護が必要となったときに年金と貯蓄だけでは心配と感じている人もいるのではないでしょうか。親や自分の介護に備えるにはどうすればいいのか考えてみましょう。

公的な介護保険ではいざというときには万全ではないの?

介護が必要になったときには、国の介護保険制度で保障が受けられることになっています。保障される内容は要介護認定を受け、要介護度に応じて細かく決められています。年金のように決められた額が受け取れるのではなく、健康保険のように受けたサービスに応じた自己負担額を支払う方式です。

どんな介護サービスが受けられ、それに対していくらのサービス料がかかるかは、要介護度、サービスの内容によって異なります。細かい内容はここでは省きますが、大雑把に言うと基本的な介護サービス料の1割が自己負担となっています。それが今回の改正により、単身世帯で年金収入が280万円以上など一定以上の収入がある人は自己負担が2割にアップされました。

また、サービスを受けられる対象も見直されて、たとえば特養ホームに入所できる基準も要介護度3以上とこれまでよりも厳しくなっています。自宅で十分な介護ができなくても、要介護度2までだと特養ホームには頼れなくなったということです。さらに、1カ月に支払った介護サービス費の自己負担額が一定額を超えると超えた分の費用が払い戻される高額介護サービス費制度がありますが、これも新たに現役並みの所得者に相当する人がいる世帯の人は負担上限が37200円から44400円と引き上げられました。

介護が必要になると、その期間は長期にわたることも多く、家族の心身的な負担もさることながら、経済的な負担も大きくなりがちです。貯蓄の取り崩しと年金収入だけでは不安があるという人は、民間生保の介護保険も検討してみるといいでしょう。

生保の介護保険ってどんなものなの?

生保の介護保険は所定の要介護状態になると以後生涯にわたって介護年金が受け取れるタイプと要介護認定された時点でまとまった一時金が受け取れるタイプがあります。

安心感が高いのは、生涯にわたって介護年金が受け取れるタイプの商品ですが、保障が厚いゆえに保険料がかなり高くなるのがデメリットです。ただし、要介護状態にならずに亡くなった場合には、所定の死亡保険金が受け取れるので、死亡保障をかねた保険と考えて検討することもできます。

逆に死亡保障の終身保険を高齢になってから介護保険に保障内容を変更できるような商品もありますので、介護が必要になったときには死亡保障は必要ないので介護費に充てたいという人はそうしたタイプの死亡保障保険を選んでおくというのもひとつの方法です。ただし、これらの保険の場合は、通常の死亡保障の保険よりも保険料負担が高くなりますので、負担と給付のバランスをみて慎重に検討する必要があります。

所定の要介護状態になったときに一時金が受け取れるタイプは、将来のことが心配になり始める40~50歳台からの加入でも月々数千円程度の保険料で保障が得られます。

要介護状態になったときには自宅のリフォームや介護用品の購入など出費がかさみがち。介護施設に入居する場合には数十~数百万円のまとまった費用が必要なので、そうしたリスクに備えられるのがメリットです。

どんなことに注意して介護保険は検討すべき?

生保の介護保険は、保険会社ごとに要介護認定の基準が異なります。公的介護保険の認定基準に連動している会社もあれば、独自の基準で認定している保険会社もあります。加入を検討するときにはどんな状態になると保険金が受け取れるのか必ず確認することが大切です。いずれにしても、公的な基準で要支援など軽度の状態では保障されないことがほとんどです。深刻な要介護状態に備えるつもりで加入したほうがいいでしょう。

前述したように公的介護保険には、月々の自己負担の上限があるので、公的介護保険の適用されるサービスの範囲であれば、それほど大きな負担にはなりません。その一方で特養ホームに入れず公的サービスの対象外の有料老人ホームなどに入らざるを得なくなったというケースもめずらしくありません。そうなると入所に数百万円、毎月数十万円の費用がかかるのも事実です。ですから公的保険でカバーできない支出に備えるという前提で、自分たちに必要かどうかを検討してみてください。

若い世代では将来の公的保障がどう変わるのか予想もできないし、それよりも今の生活や健康で老後を過ごすための蓄えのほうがより重要です。介護保険は老後の生活がある程度見えてきた時点で今後のプランを立てた上で加入するかどうか考えるといいでしょう。

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 堀内玲子

証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て1993年に独立。1996年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。