日立アプライアンスは7月16日、冷凍冷蔵庫のプレミアムモデル「真空チルド」の新シリーズ全12製品を発表した。同日に都内で開催された新製品発表会では、最上位モデルの「R-X7300F」について説明。また、新機能の性能をアピールする数々のデモンストレーションを行った。
大容量化と保鮮性能を求める声
製品発表会には最初、日立アプライアンス 取締役 家電・環境機器事業部長の松田美智也氏が登壇。松田氏は「2013年は増税前の駆け込み需要により、冷蔵庫の需要が高まったが、その反動で2014年は大きく減少した。しかし2015年以降は回復傾向にあり、今後も冷蔵庫の需要台数は増え続けるだろう。また、最近は501L以上の大型製品の割合が増えており、今後も大容量化へのニーズが高まると考えている」とコメントした。
日立アプライアンスが2014年に発売した670Lタイプの大容量冷蔵庫「R-X6700E」の購入者に行ったアンケートでは、購入時に最重視したポイントとして、「大容量」が最も多く挙げられた。また、購入者の8割は「さらに大容量の製品を購入したい」と答えたという。
また、401L以上の製品使用者を対象とした調査で、次に冷蔵庫を購入する際、重視するポイントとして1位になったのは「容量、サイズ、省エネなどの基本性能」、次点が「野菜の保鮮性能」だった。これらの結果を受け、新製品の開発では「大容量化」と「野菜の新鮮さの保持」を重視したという。
2014年に発売した大容量冷蔵庫(670L)購入者へのアンケート。約8割のユーザーがさらに大きな容量を求めている |
容量401L以上の冷蔵庫ユーザーへのアンケートでは、次回購入時に重要視するポイントの2位に「野菜の保鮮性能」が挙がった |
プラチナ触媒で野菜を「眠らせる」
真空チルドシリーズはもともと、光触媒を使用して野菜を新鮮なまま保持する「スリープ野菜」を搭載していた。これは、野菜から発生するエチレンガスや匂いの成分を触媒によって分解し、炭酸ガスを発生させるという機能。庫内の炭素ガス濃度が上がると、野菜は呼吸活動が制限され、「眠る」ような状態になる。このため、水分の放出が通常よりも大幅に抑えられ、栄養素の残存率もアップするという。
新製品では、北海道大学 触媒化学研究センターとの共同研究により、光触媒に代わって「プラチナ触媒」を採用した。プラチナ触媒は光触媒と同様、エチレンガスなどに反応して炭酸ガスを発生させる。ただし、触媒反応面積が光触媒の約30倍に広くなるという点が異なる。プラチナ触媒では、光触媒の約6倍のエチレンガスを分解し、約2.1倍の炭酸ガスを発生させられるそうだ。
光触媒を採用していた従来モデルは、炭酸ガス発生量の問題で野菜庫の一部しか「スリープ野菜」機能を搭載できなかった。しかし、新製品では野菜室すべてのエリアで野菜を眠らせるスリープ野菜に対応した。
プラチナ触媒に使われる原料。プラチナ触媒を家庭用冷蔵庫に採用したのは、今回発表した製品が世界初だ |
野菜庫のプラチナ触媒は、庫内の緑色のハンドル内部に格納されている。ハンドルは、庫内の仕切りを移動させるときにも使う |
従来の光触媒方式と比較すると、プラチナ触媒は反応面積が約30倍。生成できる炭酸ガスの量も約2.1倍に増えている。多くの炭酸ガスを作れるようになったため、従来は野菜庫の一部しか適用できなかった「スリープ野菜」が、野菜庫全体で使えるようになった |
さらに、R-X7300Fは野菜室の湿度を高め、野菜のみずみずしさを保つ「うるおいカバー」「うるおいユニット」を搭載している。触媒による高炭酸ガス環境をキープするため、庫内は密閉性が高く結露が発生しやすい。そのため、うるおいカバー下部に「蒸散ボード」を搭載。蒸散ボードのおかげで、高湿度ながら結露しにくい理想的な庫内環境を作り出した。