三菱電機は7月14日、冷凍冷蔵庫「置けるスマート大容量」シリーズの新製品発表会を開催した。発表されたのは、ドアにガラス材を使用した「WX」シリーズと、ドアに鋼板材を使用した「JX」シリーズ。WXシリーズは475Lから705Lまでの4タイプ、JXシリーズは475Lから605Lまでの3タイプが発売される。

「置けるスマート大容量」シリーズの新製品。右がガラス材ドアのWXシリーズ「MR-WX71Z」、左が鋼材ドアのJXシリーズ「MR-JX53Z」

会場で披露された新製品。左から「MR-JX48LZ」「MR-JX61Z」「MR-WX48Z」「MR-WX53Z」「MR-WX60Z」「MR-WX71Z」

三菱電機 静岡製作所所長の松本匡氏

冷蔵庫も「時短」がキーワードに

製品発表会では、三菱電機 静岡製作所所長の松本匡氏が登壇し、冷蔵庫のニーズや製品開発の背景について説明した。現在、共働き世帯が増加しており、家事にかけられる時間は減少している。そのため、「時短」に対するニーズが高まっているという。

2011年の社会生活基本調査によると、「主婦の一日の家事時間構成」の約6割を「炊事」と「買い物」が占める。この炊事と買い物の時間を減らすため、忙しい共働き世帯では食材のまとめ買いや作り置きをすることが増えている。こうした背景もあり、核家族化により世帯人数は減少傾向にあるものの、冷蔵庫は大容量化が求められているそうだ。

また、三菱電機で冷蔵庫の不満に関するアンケートを実施した結果、おもな不満は電気代と、容量、製氷室の衛生面、そしておいしく冷凍できないという点だった。三菱電機では、従来から「置けるスマート大容量」「まるごとクリーン清氷」を採用。そこで、今回の新製品では「おいしく冷凍できない」という不満に注目したほか、コンパクトタイプのラインナップを拡充した。

共働き家庭が増えたことで、主婦が家事に費やせる時間は減少。家事に使用する時間の半分以上は炊事と買い物で占められている

冷蔵庫の不満に関するアンケート。冷蔵庫の容量に関する不満は「置けるスマート大容量」、製氷機の衛生面については「まるごとクリーン清氷」機能ですでに解消しているという

まるごとクリーン清氷は、製氷機ユニットを丸ごと外して洗浄できる機能。内部のパイプやポンプまで洗える

断熱材などの改良により、製品サイズはそのまま、容量を増やした「置けるスマート大容量」

おいしく冷凍、おいしく解凍

三菱電機の冷蔵庫は、「過冷却現象」を利用した冷凍機能を搭載しているのが特徴。これは、氷点下を過ぎても凍らない現象だ。過冷却現象を利用している機能は「氷点下ストッカー」と「切れちゃう瞬冷凍」。氷点下ストッカーは、食材を氷点下(約-3℃から0℃)に冷やしつつも、凍らせずに保存するというもの。切れちゃう瞬冷凍は、冷凍した食材がサクッと切れるというもの。食材全体に一瞬で氷核を形成して均一に冷凍することで細胞破壊を抑え、解凍しても食材の食感やうまみ成分を維持する。氷点下ストッカーよりも低温(約-7℃)で長期保存が可能だ。

氷点下以下の温度になっても、水などが凍りつかない現象が「過冷却現象」。この現象を利用して「切れちゃう瞬冷凍」や「氷点下ストッカー」を実現

氷点下ストッカールームは冷蔵室の下段にある。足の早い刺身や生肉などを凍らせず、長持ちさせられる

冷蔵庫前面のタッチパネルを「氷点下保存・解凍モード」に変更することで、カチコチに凍った食品をすばやく解凍できる

新製品では、氷点下ストッカーに解凍機能が追加され、「氷点下ストッカーD」として進化した。「D」は「Defrost(解凍)」に由来する。

タッチパネルで「氷点下保存・解凍モード」に設定すると、カチコチに冷凍した食材も約90分で包丁が入れられるかたさまで解凍できる。氷点下ストッカーDでは、氷点下で解凍するため、食材からドリップが出にくい。冷蔵室や電子レンジを使った解凍方法よりも、食材のうまみをキープしたまま解凍できるという。

また、解凍といっても、氷点下ストッカーDではチルド室よりも低温(-3℃から0℃)で保存するため、そのまま保存しても鮮度が長持ちしやすい。「急な予定で解凍した食材を使わなくなった」あるいは「食材の一部だけ利用したい」といった場合にも役立つ。

左上は冷蔵室で1日解凍、右上はチルド室で1日解凍、左下は電子レンジで解凍、右下は氷点下ストッカーDで解凍したもの。氷点下ストッカーDで解凍した肉は明らかにドリップが少ない。チルド室解凍と比べて75%ドリップを抑制した

解凍した肉を、そのまま3日間保存した結果を比較。左上の冷蔵室と右上のチルド室に置いた肉はドリップが流出。一方、下の氷点下ストッカーDで保存した肉からはドリップが流れ出ていない

変質しやすいひき肉を1週間保存した結果を比較。チルド室で保存した左のひき肉は、茶色っぽく変色しているのがわかる。氷点下ストッカーDで保存した右のひき肉は赤く、新鮮な色のまま

大容量でも省スペース

「置けるスマート大容量」シリーズの冷蔵庫は、断熱材に独自の「薄型断熱構造 SMART CUBE(スマートキューブ)」を採用することで、大容量をキープしたまま省スペース化を図っている。

2014年モデルでは、奥行きサイズが73.8cmと69.9cmの2種類しかなかった。三菱電機の調査によれば、奥行き70cmの冷蔵庫を設置できる家庭は約68%だが、奥行き65cmの冷蔵庫ならば84%と、奥行きを5cm短縮することで、より多くの家庭で設置できるようになるそうだ。

特に、マンションなどで見られるシステムキッチンなどは、奥行きが65cmのサイズが多く、奥行きがそれより長い冷蔵庫はキッチンのデザインを損なってしまう。そこで、新製品では、奥行きが65cmタイプの「MR-WX48Z」(容量475L)もラインナップに追加した。MR-WX48Zは、2006年に発売された「MR-G40J」とほぼ同じ奥行き、幅は3.5cmコンパクトになったにもかかわらず、容量は74L増えている。

断熱材であるウレタンを薄くすることで省スペースと大容量を両立

奥行き65cmの冷蔵庫ならば、約84%の家庭で設置可能だとわかった

システムキッチンの奥行きは65cmが多い。冷蔵庫の奥行きが65cm以上だと、冷蔵庫だけが飛び出てしまい、キッチンのデザインを損ねてしまうことも

2006年に発売された「MR-G40J」と新製品「MR-WX48Z」を比較。奥行きそのままで、容量は74Lアップした

湿度センサーによる省エネ機能

もちろん、冷蔵庫の不満点のトップに挙げられた「電気代」についても改善。従来は温度センサーのみで室温をセンシングしていたが、新製品には湿度センサーも搭載。低湿度時の無駄な発熱を抑制し、結露防止用の冷媒の流し方も効率化できたという。外気の温度と湿度、両方の環境に合わせてコンプレッサーを効率的に運転し、余計な電力を使う必要がなく、省エネ性能をアップさせた。