一眼レフの入門者にとって、標準ズームの次に選ぶべきレンズは何か。キットレンズとは違った写りを味わいたいなら、開放値の明るい単焦点レンズがお勧めだ。中でもキヤノン EOSユーザーなら、これを選べば間違いない。そんな入門者向けの新しい定番レンズ「EF50mm F1.8 STM」の写りと使い勝手をレポートしよう。

キヤノン「EF50mm F1.8 STM」。実勢価格は税込18,000円前後(7月8日時点)

キヤノン「EF50mm F1.8 STM」は、今年5月のリリース以来、好調な売れ行きを続ける人気レンズのひとつ。1990年に発売されたロングセラー「EF50mm F1.8 II」の後継機種であり、気軽に持ち歩けるコンパクトさを維持しながら、外装のブラッシュアップやAFの静音化、操作性の向上などを図っている。

いちばんの魅力は、実売1万円台の低価格ながら、絞り開放値が明るく、ボケを生かした表現が気軽に楽しめること。下の写真は、絞り優先AEモードを選び、開放値のF1.8で撮影したものだ。ピントを数メートル先のレールの中間あたりに合わせたが、そこから前後にふんわりとしたボケが生じ、奥行きを感じる写真となった。

絞り優先(F1.8 1/2000秒) ISO100 WB:太陽光 カメラ:EOS 6D

一方で、絞りを絞り込んだ場合には、被写体のディテールをくっきりと再現する精細な写りとなる。下の写真は絞りF8で撮影。シャープネスの高い描写が得られた。

M絞り優先(F8 1/80秒) ISO100 WB:太陽光 カメラ:EOS 6D

レンズの焦点距離は50mmで、対角線画角は46度。昔ながらの由緒正しい標準レンズの画角であり、光学的な誇張が目立たず、眼前の風景を自然なフレーミングで切り取ることが可能だ。

マニュアル(F5.6 1/125秒) ISO250 WB:太陽光 カメラ:EOS 6D

ここまでの3枚はフルサイズ機「EOS 6D」を使ったが、APS-Cサイズ機に装着した場合には、焦点距離80mm相当の中望遠レンズとして利用できる。次の写真は、APS-Cサイズ機「EOS 70D」を使って、絞りF2.8で写したもの。バリアングル液晶を生かしてローポジションにカメラを構えることで、背景だけでなく近景にもボケを写し込み、主役であるウミネコを際立たせた。

絞り優先(F2.8 1/1250秒) ISO100 WB:オート カメラ:EOS 70D

開放値の明るさはボケの表現だけでなく、暗所撮影に有利という側面もある。下の写真は、展示された航空機のコクピットを捉えたもの。かなり暗いシーンだったが、絞りをF1.8に、シャッター速度を1/25秒に、感度をISO5000にそれぞれ設定することで、手持ちでブレを起こさずに撮影できた。また、ここでも前後のボケによって奥行きが生まれ、臨場感のあるイメージとなった。

マニュアル(F1.8 1/25秒) ISO5000 WB:オート カメラ:EOS 6D

注意したいのは、絞り開放値における画像周辺の光量落ち。こうした薄暗いシーンではあまり目立たないが、日中の明るい空などを撮ると周辺減光が気になる場合がある。RAW現像時に補正する、またはもう少し絞り込んで対処しよう。今後、同社から補正データが公開されれば、カメラ内機能での自動補正も可能になるだろう。

マニュアル(F2.8 1/80秒) ISO1600 WB:オート カメラ:EOS 6D