カシオ計算機株式会社の創業者の一人である故・樫尾俊雄氏が発明した数々の製品について、展示を行っている樫尾俊雄発明記念館(東京都世田谷区)。「時の記念日」にちなみ、6月10日~7月24日の期間限定で、時計の特別展示が行われることは既報の通りだ。
これに先立ち、その展示内容が報道関係者に先行公開された。会場では、1980年代からのカシオ製多機能デジタルウオッチが多数展示され、カシオ計算機の時計事業部長である増田裕一氏がスピーチ。当時の興味深いエピソードや、話題のスマートウオッチに対する考え方などを語った。
最新スマートウオッチのコンセプトも基礎技術も、20年以上前から製品化していた
ひたすら興奮のタイムスリップ体験。特別展示の内容をひと言で表現するなら、ただそれに尽きる。テーブルの上にずらりと並んだ、80年代、90年代の懐かしい多機能デジタル時計の数々。もはや頭と耳に染み込んだ山口百恵の「デジタルぅーは、カ、シオ♪」のCFソングが、鮮やかなサウンドで脳裏によみがえる。
特に三十代後半~五十代のみなさま、これは絶対に行くべきだ。無料だし、仕事外出の途中でちょっと立ち寄ってもいい(ただし予約が必要)。そして涙するのだ。デジタルという言葉が、世界を変える魔法のように見えたあの時代に。
【左】懐かしい製品がずらり。旧青少年たちの青春の日々がよみがえる! 【右】多機能時計の展開をまとめた年表。商品の推移を通じて、デバイスがキャラクター処理からグラフィック・サウンド処理、通信技術を交えて進化していくさまが見えるのが面白い |
ただ数字と針の組み合わせでしかなかった(子供にはそう見えた)それまでの腕時計を、最新技術(謎の機能)と尖ったデザインセンスで、カシオは秘密兵器に変えてしまった(ように見えたんですってば)。思えば、続々と登場するカシオの多機能デジタル時計は、当時、日進月歩といわれた半導体や集積回路技術をもっともリアルに見せてくれたアイテムだったのだ。
「カシオは遊び心あふれる商品をたくさん作っていましたよね、っていわれることが多いんです。でも当時、私たちは遊び心じゃなく、必死で作っていたんですよ」
そういって笑う増田氏。しかし、展示されている製品群をあらためてよく見ると、なるほどその言葉は俄然重みを帯びてくる。
今回の展示では、懐かしのカシオ多機能デジタル時計製品を4つのカテゴリーに区分している。スケジュール管理や電話帳、辞書機能などを搭載した「ビジネス」、音楽再生やカメラ、ゲームなどを主眼とした「エンターテイメント」、温度・気圧・高度などのセンサーやGPS機能に代表される「アウトドア」、そして脈拍計・血圧計・活動量計などを持つ「健康・フィットネス」。
そのどれもが、最新のいわゆる「スマートウオッチ」における代表的な機能・用途そのままなのだ。カシオはそれらを20年以上前に、すでに製品化していたのである。