インテルは9月26日、都内で記者会見を開き、タブレット向けAtom SoC「Atom Z3700シリーズ」の新ラインナップとして登場した、開発コード名「Bay Trail Refresh」と呼ばれる新ステッピング採用製品群を解説した。従来のBay Trailと比べ、グラフィックス性能が20%以上向上するなど性能強化がはかられているという。

型番の末尾が"5"や"6"になっているZ3700シリーズが、Bay Trail Refreshをベースにしたモデル

Atom Z3700シリーズは、Bay Trail-Tの開発コード名で知られたタブレット向けのSoCとして昨年リリースされ、以来、タブレットの普及加速とともに多くの製品で採用され、知名度も高いSoCだ。今年の春頃から、モデル型番の末尾が"0"ではない、Atom Z37x5や、Z37x6といった新モデルが公開され、ラインナップが幅広く拡充されているが、このモデル型番の末尾が"5"や"6"になっているZ3700シリーズが、Bay Trail Refreshをベースにしたモデルである。

Bay Trail Refreshでは、従来のBay Trail-Tから、グラフィックス性能の向上、タブレットの普及価格帯を狙ったエントリーモデルの拡充、64bit OSへの対応という3点が成し遂げられたとインテルは説明する。中身の話としては、チップの新ステッピングへの移行による改良だ。Bay Trail-TベースのZ3700シリーズは最終的にB3ステッピングまで市場投入されたが、Bay Trail RefreshではC0ステッピングへと移行している。

Bay Trail Refreshの3つのポイント

グラフィックス性能は従来のBay Trail比で20%以上の性能向上としているという。具体的には、B3までの統合グラフィックスコアの最大動作周波数が680MHzだったところ、ステッピング改良でRefreshでは最大833MHzまで引き上げられており、これがダイレクトに性能向上につながっているものと考えられる。

グラフィックス性能が20%向上

モデルラインナップは、Bay Trail-Tでは6モデルであったものが、Refreshでは現時点で12モデルまで拡充。上位モデルも追加されているが、より注目なのは75~150ドルの低価格タブレットをターゲットにした下位モデルの追加だ。Windows 8.1に「with Bing」が登場したこととあわせ、2万円しないようなWindowsタブレットが可能となった理由である。なお、64bit版Windowsを(バリデーションレベルで)サポートしているのは最上位モデルのみだが、64bit版AndroidについてはBay Trail Refresh全モデルでサポートしているという。

75~150ドルの低価格タブレットをターゲットにした下位モデルを用意し、64bit OSのサポートも充実させた

記者会見では、最新のAtom Z3700シリーズの電力削減の要となっている、「S0ix」ステートの説明も行われた。タブレットとPCでは利用形態が異なるため、ステートに求められる仕様も異なってくる。タブレットでは、より頻繁な画面のON/OFFがあり、スリープからの速やかな復帰が求められる。そこで、S0(システム動作状態)への復帰を従来のS3(スリープ状態)よりも高速にする、S0ix(S0i1~S0i3の3段階)ステートを追加した。

インテル モバイル&コミュニケーションズ事業部に所属するエンジニアの平井友和氏。「S0ix」ステートについて説明

タブレットとPCでは利用形態が異なるため、ステートに求められる仕様も異なってくる。特にスリープ時に何を動かすのか、スリープからどれだけ高速に復帰できるかが重要

S0i1~S0i3の3段階のステートを追加。表横軸で左に行くほど復帰が速く、縦軸で上に行くほど電力が必要となる

Bay Trail RefreshではS0i1とS0i3の2種類の利用が可能で、S3とは排他となるそうだが、もっともS3に近いS0i3は、従来のS3に近い低消費電力状態からの高速な復帰できる。おおよその目安として、S3で復帰に1~2秒かかる環境で、S0i3であれば300~500ミリ秒で復帰。環境によるが消費電力もS3が20~40ミリワットのところ、S0i3では30~100ミリワットと微増の水準に収まる。

S0ixステートの定義とフロー。ブロック図の青い部分が動いているデバイス、赤い部分が停止(電力カット)したデバイスと見て欲しい。ステートがS0i1まで進むと、「LPE」(ローパワーエンジン、オーディオ再生など担当)と「SEC」(セキュリティエンジン)、あとはDDRが動いている程度。S0i3まで進むとオーディオ再生なども止まる。なお、S0ixは「InstantGo技術の要求を制御するAPIをサポートできる技術」であるとのこと

Windowsタブレットの動作であれば、電源ボタンを押して数秒でS0i3へ移行。この図の中で、縦軸は消費電力、横軸は時間の経過を表すのだが、S0i3状態で、30秒ごと定期的に電力を短時間だけ消費しているのがわかる。この30秒ごとの動作は、レジュームの高速化のために、システムの状態などをチェックしに一瞬だけ通電しているもの。また、図の中央あたりにやや大きく通電しているが、これは、定期的なチェックとは別に、電子メール着信などプッシュ処理のためにネットワークを起こしている処理ができることをイメージしたもの

S0ixの実現には、従来はバラバラにステートへ最適化していたようなBIOSや各種デバイス、インタフェースなどを、協調して最適化させる必要がある。そのため調整に難航し、S0ixの実現には時間がかかってしまったそうだ。今後は多くのS0ix対応製品が出てくることに期待できる

説明の"オマケ"として、ユーザーでもS0ixの動作を確認できる方法を紹介。2つのコマンドは、ともにWindows 8.1のコマンドプロンプトから利用できる。WPAもMicrosoftがWeb上で配布している

会見ではあわせて、Bay Trail Refreshを搭載するタブレット新製品としてマウスコンピューターの「WN801」が初公開となったほか、ジェネシスホールティングスとプラスワン・マーケティングの2社がBay Trail Refreshで新たなパートナーとして今後製品を投入することも発表となった。

Bay Trail Refresh搭載の新製品と新パートナーも発表

マウスコンピューターの「WN801」。詳細はこちらの記事

新パートナーのジェネシスホールティングス

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