NISA(少額投資非課税制度)がスタートして9カ月がたちました。NISA口座を開設して、さて何を買おうかと迷ったとき、売れ筋ランキングを参考にする人もいるようです。でも、人気のある商品が必ずしも自分に合ったものとは限りません。それぞれの商品の仕組みやリスクをきちんと理解して、納得してから買うことが大切です。

今回は、日興アセットマネジメント ETFセンター長の今井幸英氏にお聞きした話をもとにして、人気の高い「レバレッジ型ETF」について見てみます。

日興アセットマネジメント ETFセンター長の今井幸英氏

「ETF」って何?

ETFは投資信託の一種で、金融商品取引所に上場しており、株と同じやり方で売買します。現在、東京証券取引所に約160のETFが上場していますが、どのETFも特定の指数に値動きが連動するように運用されているのが特徴です。

ETFで最も多いのが、日経平均株価に連動するタイプです。"連動する"というのは、日経平均株価が5%上がれば、そのETFの価格も5%上がり、日経平均株価が5%下がれば、そのETFの価格も5%下がるように運用されているということです。

日経平均株価は、東京証券取引所第一部に上場している銘柄のうち、代表的な225銘柄の平均株価なので、これに連動するETFを買えば、225銘柄に投資するのと同じ結果が期待できます。

ハイリスク・ハイリターンのETF「日経平均レバレッジ・インデックス」

一方、いま活発に売買されているETFは、「日経平均レバレッジ・インデックス」という指数に連動するタイプです。このレバレッジ・インデックスは、日経平均が5%上がったら10%上がり、日経平均が5%下がったら10%下がるというふうに、日々の値動きが2倍になるインデックスです。したがって、これに連動するETFも、日々の値動きが日経平均の2倍になるわけです。上がるときも下がるときも2倍ですから、日経平均が上がれば、通常の日経平均連動型ETFの2倍の利益が得られますが、日経平均が下がると損失も2倍という、いわゆるハイリスク・ハイリターンの商品といえます。

注意したいのは、日経平均の値動きが単純に2倍になるのは、前日と比較した場合だということ。2日以上立つと、単純な2倍にはならなくなってきます。

日経平均レバレッジ・インデックスは、前の日の価格(基準価額)に対するその日の変動率(騰落率)が、日経平均株価の騰落率の2倍になるよう計算されます。

例えば、ある日の日経平均株価が15,000で、3日続けて1,000ずつ上昇するとします。

日経平均は15,000、16,000、17,000、18,000と上がっていき、これを単純に2倍すると、毎日2,000円ずつ上がるので、15,000、17,000、19,000、21,000となります。

一方、日経平均レバレッジ・インデックスは、前日の基準価額に対して2倍なので、1日目は17,000ですが、2日目は、日経平均が6.25%上昇しているので(1,000÷16,000×100=6.25%)、その2倍である12.5%上昇して19,125となります。3日目は11.76%上昇して21,375というふうに、上がった基準価額に対して2倍上昇するので、単純な2倍より上昇率が高くなります。

日経平均株価が1,000円ずつ上がっていった場合

(グラフ1)

日経平均が右肩上がりだと、レバレッジ・インデックス連動型ETFの価格は2倍以上、上がるので、より高いリターンが期待できるわけです。

同様に日経平均が右肩下がりのときは、下落した基準価額に対して2倍なので、単純な2倍より下がり方が小さくなります。

(グラフ2)

上がるときは大きく上がり、下がるときは下がり方が小さいわけですから、これはうれしいですよね。

ところが、日経平均が3日連続で下がる後、3日連続で上がるケースだと、いったん基準価額が大きく下がるため、価格が回復しにくくなります。このケースでは、6日後に日経平均が15,000円に回復していますが、レバレッジ・インデックスは戻りきっていません。

(グラフ3)

逆に、3日連続で上がった後、3日連続で下がるケースだと、基準価額の上昇が大きい分、下がり方も大きくなります。日経平均は15,000円でスタートし、元の値段に戻りましたが、レバレッジ・インデックスは15,000円を下回ってしまっています。

(グラフ4)

では、上昇と下降を繰り返した場合はどうでしょうか。日経平均株価が15,000円からスタートして、上がったり下がったりを繰り返し、15,000円に戻ったケースです。レバレッジ・インデックスは単純2倍を下回り、その幅がだんだん大きくなっていくのがわかります。

(グラフ5)

したがって日経平均レバレッジ・インデックス連動型ETFは、購入時点から株式市場がどのように動くかにより、その基準価額は変わってきます。「日経平均の2倍」とは言われますが、日経平均株価が10,000円の時に購入し、日経平均株価が15,000円で売った場合、常に5,000円×2倍=10,000円の利益になるわけではないということを、しっかり覚えておきましょう。

レバレッジ型ETFは、短期で積極的に売買するのに適した商品

このように、日経平均レバレッジ・インデックス連動型ETFは、

  • "日々の"値動きが日経平均株価の2倍

  • 時間がたつにつれて、単純な2倍から運用成績がずれていく

という特徴があります。

したがって、株式市場の動きをみながら投資をしたり、短期で積極的に売買するのが好きな人に適した商品といえます。日経平均がしばらく上昇すると判断できるときに買ったり、株式市場の動きを常にウォッチしながら短期間で利益を確定するなど、上手く活用すれば大きな収益の期待できるETFです。

一方、市場の予測が外れるなどした場合、想定外の損失が生じることも考えられます。市場にあまり詳しくない人や、市場の上がり下がりに気を取られず、長期で資産を殖やしたい人には向かない商品です。そのような人は、通常の日経平均株価に連動するETFに投資をするのが好ましいかもしれません。

執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。新著『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)も発売された。また、ホームページのURLは以下の通りとなっている。

http://www.m-magai.net/