『眠れる森の美女』に隠されていた究極の愛の物語を描いた映画『マレフィセント』(7月5日公開)で、主人公の邪悪な妖精マレフィセントを演じた女優のアンジェリーナ・ジョリー。見た目のみならず、彼女の人生ともリンクする点が多く、"マレフィセント=アンジェリーナ・ジョリー"と言われるほどのはまり役と言われている。

また、全米公開から3日間で記録したオープニング興行収入7,000万ドルは、彼女が主要キャストとして出演した作品史上1位の記録となり、名実ともにアンジェリーナ・ジョリーの代表作に。インタビューで彼女は、本作に込められた強いメッセージについて、そして、マレフィセントというキャラクターは、初めて彼女の子供たちと一緒に作り上げたと語った。

アンジェリーナ・ジョリー
1975年6月4日、アメリカ出身。1993年に映画初出演。『Mr.&Mrs.スミス』で現在のパートナーであるブラッド・ピットと出会う。2011年『最愛の大地』で監督デビュー。2001年より慈善活動にも注力している(2001年UNHCR親善大使、2012年UNHCR特使就任)

――オーロラ姫に呪いをかけたマレフィセントが抱く"究極の愛"をテーマにした本作。『眠れる森の美女』にはなかった物語が描かれていますが、もとの作品とのテーマの違いについて、どう考えていますか。

1959年の作品(『眠れる森の美女』)にも、母性とか愛情、そして、いかに暗い側から痛みを乗り越えるかということは潜在的にはあったと思います。今回重要だったことは、純粋無垢(むく)な赤ん坊に呪いをかけるという、これ以上ないというくらいひどいことをした人を、どうやってみんなに理解させるか、どうやってみんなを味方にさせるかということ。洗礼式のシーンを見ると、彼女に対する気持ちはまったく違うものになっていますよね。そのように人々の認識を変えられたことが、今回のすばらしい点だと思います。

――さまざまなメッセージが込められている本作で、アンジェリーナさんが受け取ったことは何でしょうか。

この作品には、特に、いじめを受けたり、疎外感を味わったりしている子供たちへのメッセージが含まれていると感じます。どうやったら強くなってそれを乗り越えられるか。そして、女性に向けても、例えば、虐待や何か不正を受けた場合、攻撃的になったり暗いところにいったりすることがありますが、どうやったら女性らしさやソフトな部分を取り返せるかということが込められています。また、環境問題や正義感というものも描かれていると思います。

――演じられたマレフィセントというキャラクターは、子供のころに好きだったそうですが、多くの子供がプリンセスに憧れるなか、珍しいと感じました。

私のパーソナリティーにも関係しているのだと思います(笑)。プリンセスというのは当時、単純すぎて、一面的で、強さはあまり持っていなかった印象があります。もちろんプリンセス全体ということではありませんが、自分が育ったころに見ていたディズニー作品に関しては、プリンセスは単純で強さを感じませんでした。マレフィセントは怖かったけど、大好きだったんです。

――「きちんと役作りができているかとても緊張した」とコメントされていましたが、役作りでこだわった点を教えてください。

オリジナルのものは、非常にみなさんに愛されている作品なので、アニメのファンをがっかりさせたくないという気持ちがあったんです。私自身も、マレフィセントが大好きで、キャラクターとして興味深かったですし。注目したのは、マレフィセントは声の存在感がすごく強いということです。だから、私が正しい選択をしないと、ちょっとでもぶれたら奇妙なものになってしまうという怖さがありました。

――その声のトーンなど、どのように決めていったのでしょうか。

今回は子供たちのために、より自分のおかしいところを出したり、色物的な要素を出したりしました。現場にも毎日子供たちがいて、声は彼らが決めてくれたんです。「それだ!」という感じに。目もどれがいいか彼らに決めさせました。衣装の承認も。また、セットもどれがかっこいいか、どれが興味がないかという反応を見て、決めることができました。そうやって子供たちと一緒に作り上げた役というのは、今回が初めてですね。

――今回、愛娘のヴィヴィアンちゃんと初共演も果たしました。「アップ! アップ!」(抱っこ抱っこ)というシーンがちょっと笑えて印象的です。

「アップ! アップ!」はしょっちゅう言うんです。ついさっきも(笑)。あのシーンは、マドックスが初めて私のところに来た時のことを思い出しながら演じました。子供って無条件に愛を与えてくれるんですが、マレフィセントはそういうものが自分に与えられると感じていないし、どうしていいかわらかない状態になっていると思うんです。おそろしい彼女が一番怖がるのがあんな小さな子供だというのが、笑えるんだと思います(笑)。

撮影:Hiroyuki Tsutsumi
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