日本ヒューレット・パッカードは15日、都内で記者発表会を開催。企業向けの新製品となる、超小型筐体PC「HP EliteDesk 800 G1 DM」、10.1型Windows 8.1タブレット「HP ElitePad 1000 G2」と「HP ElitePad 610 G1」、管理機能を強化したA4インクジェットプリンタ/複合機「HP OfficeJet Enterprise X」シリーズを発表した。

今回発表された新製品。ただし中央に積み上げられているのは、デスクトップPCの従来モデル

発表会では、まず同社 代表取締役 副社長執行役員 プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括の岡 隆史氏が登壇。現在の市場トレンドとHP製品の方向性について語った。

2014年の第1四半期は、Windows XPのサポート終了と消費税増税という2つの大きな要因があり、個人向けPCは前年比33%増、企業向けPCは前年比43%増と好調な出荷となった。日本HPとしても、業界を上回る伸びを達成できたという。まだ市場には600万台のWindows XPマシンが稼働しており、急激な反動と需要減は起こらないだろうと予測する。

日本HPの岡隆史氏

3月までは大変好調だったが、そのけん引役になったWindows XPマシンの残り稼働台数を考えると、まだまだイケルという判断

一方、企業がITに要求される課題はいくつかあり、導入時における一番のポイントとして、以前は価格が挙げられていた。しかし昨今は、Windows XPのサポート切れ、情報漏えい、不正侵入の報道もあり、セキュリティを考慮するようになっているという。さらに、多くのデバイスが使われているために、それらの管理コストも重視されるようになっている。

このため、日本HPでは多種多様なニーズにこたえられるべく製品層を厚くしつつ、それらを守るためのセキュリティの強化と管理性を上げることに注視しているという。

企業のIT部門が抱える課題は多いが、ニーズとしては単に安いコストだけではなく、その後の管理コストやセキュリティに関心があるという

ということで、一貫した管理性とセキュリティ面の強化とともに、ラインナップの充実が現在の戦略となっている

次に、日本ヒューレット・パッカード プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括 パーソナルシステムズ事業本部 コマーシャルビジネス本部 モバイルビジネス部 部長の村上信武氏がPC新製品の紹介を行った。

日本HPの村上信武氏

新しい2製品にセキュリティソリューションを加えているのがポイントだ

岡氏の発言を引き継ぐ形で、導入・管理工数を低減するシステムとして、まず「HP Client Security」を紹介した。ID/パスワード、デバイスアクセス制限、データ保護のためのアプリケーションソフトウェアだ。ビジネスデスクトップPCには標準インストール、オールインワンPCにはプリインストールオプションを提供している。

さらに今回、「WinMagic SecureDoc for HP」を提供する。これはWinMagic社製ソフトのHP版であり、クライアントPCデータの暗号化とそのキー管理を行うツールだ。導入工数を減らし、管理コストも下げられる。HPの独自機能として、ストレージがRAID環境でも、暗号化が行えるという。

こちらは従来からビジネスデスクトップにプリインストールされている「HP Client Security」。アンチウイルスソフトではない

データの暗号化を管理する「WinMagic SecureDoc for HP」。システム復旧に必要な復元領域は暗号化されていないので、これでシステムを回復したのちデータ復号を行うことで、迅速な復旧が可能になる

さらに、2つの新製品を発表した。1つは新規開発の超小型筐体PCとなる「HP EliteDesk 800 G1 DM」で、幅175mm、厚み34mmと、500mlのペットボトルよりも低く、半分の厚みしかない小型PCだ(参考記事:日本HP、本体容量1リットルの小型&省電力デスクトップPC)。超小型でもデスクトップ用CPUを採用し、IntelのCeleron、Pentium、Core i3/i5/i7を搭載できる(Core iシリーズは省スペース用のT型番)。

超小型筐体の「HP EliteDesk 800 G1 DM」。壇上で本体とPETボトルを出し、小ささをアピールしていた

HP EliteDesk 800 G1 DMでは省スペース性を生かし、モニターの下部に設置するモニターマウントキットや、机の下に設置するマウントキットも用意される。また、DisplayPort×2基とD-Sub×1基の出力端子が用意されており、最大3画面の表示が可能だ。一般的なOA端末だけでなく、高機能デジタルサイネージやキオスク端末への応用にも対応できるという(本製品は歯科向けレセプトコンピューターシステムの開発販売を手掛ける株式会社ミックが採用を決定している)。

新規製品だが、モニターマウントキットやデスク下への固定部材も用意されている。モニターの下に設置するのはデスクトップ利用時に電源ボタンが押しやすい配慮との事だ

省スペース性を生かして、デスクトップ利用だけでなくサイネージやキオスク本体内部に組み込むこともできるという

採用事例も紹介された。保守時にエンジニアが鞄の中に交換筐体を持って行けるという小型性が評価されたそうだ

もう1つが10.1型Windows 8.1タブレットの新製品となる「HP ElitePad 1000 G2」だ(参考記事:日本HP、10.1型WUXGAのWindows 8.1タブレット - LTE対応au/docomoモデルも)。こちらはジャケットデザインで登場した先代「Elite Pad 900」の後継となる。プロセッサを32bit 2コアから64bit対応 4コアへパワーアップしたほか、ディスプレイも高精細なものに変更しているが、本体サイズは同一だ。このため、従来から提供している豊富な拡張オプションがそのまま利用可能というメリットがある。

また、LTE通信モジュールを内蔵したauモデル/docomoモデルを用意し、相互接続試験を実施済だ(auモデルはLTE2/3G2バンド、docomoモデルはLTE3/3G2バンドに対応)。なお、ソフトバンクモデルに関しては現時点で対応予定がないという。

見た目は同じながら、BayTrail採用で大幅に強化された「HP ElitePad 1000 G2」。従来モデル「HP ElitePad 900」のオプションパーツをそのまま利用できる

auとdocomoのLTE通信に対応したモデルもあり、IOT(相互接続試験)済。LTEだけでなく3Gにも対応しているので、カバレージの広さでモバイルをサポートする

日本HPの中原和洋氏

最後に、日本ヒューレット・パッカード プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括 プリンティング事業統括本部 プリンティングビジネスビジネス本部 本部長の中原 和洋氏が登壇。エンタープライズプリンタの新製品を紹介した。

ビジネスプリンタは大まかに、「初期導入コストに敏感なSOHO/SMB向けにインクジェット」、「中堅・大手企業支社でスピードと保有コストに優れるレーザー単機能機」、「大企業では管理性とセキュリティに優れるレーザー複合機・コピー機」が使われていると分析。

日本HPでは、すでにスピードと保有コストに優れる分野に「HP OfficeJet X」シリーズを投入しているが、今回は、管理機能とセキュリティ性の高いエンタープライズインクジェット製品として、複合機を2モデル、プリンタを1モデル投入する。

企業向けプリンタとしては、モバイル向け製品とHPページワイドテクノロジーによる高速製品が高評価だという。従来、初期コストメリットでSOHO/SMB市場向けに位置付けられていたインクジェット製品を、エンタープライズレベルに投入するというのが今回の新製品だ

今回の新製品では、すでにHP OfficeJet Xシリーズで投入されているHPページワイドテクノロジー(紙幅いっぱいに印字ヘッドを用意して高速印刷)の高速性、低コスト、耐水・速乾インクに加えて、8インチVGAタッチパネルとオプションのキーボードを用意。コピー機ベースの高機能なレーザー複合機に比肩する高機能性を持たせた。

さらに、Webベースで複数機をまとめて管理できるだけでなく、グループ管理を強化している。個人認証機能についても、暗証番号やパスワードだけでなく、LDAPによる幅広い認証に対応した。Windows CEベースによって、将来の拡張性を備えたファームウェアとHP OXP(HP Open Extensibility Platform)にる柔軟性も併せ持っているという。

インクジェットならではの低ランニングコストに加えて、高い管理性とセキュリティを持つコントロール部を設けている

8インチタッチパネルという高機能レーザープリンタ並の操作性と、オプションのキーボードで入力性を上げている。また、Webインタフェースによる複数端末の管理、グループ毎の機能制限、Windows CEベースの新ファームウェアなどが特徴的だ

インクジェット製品ということで、低ランニングコストと少ない保守パーツという価格上のメリットもある。保守体制も「修理対応」なので、本体の設定を保持したまま対処できるほか、5年間の翌日出張保守メニューを新設。さらに「インク定額パック」によって、大量に印刷するユーザーはより経済的に利用できることをアピールした。

月5,000枚、カラー50%で3年間という試算では、大幅なコストダウンと保守部品の少なさをアピール。さらに保守メニューを拡充している

ランニングコストの安いインクジェットでエンタープライズ市場に食い込む戦略

「HP EliteDesk 800 G1 DM」。家庭用の無線LAN(Wi-Fi)ルータ程度の大きさで、見た目にかなりのインパクトがある。右下に見えるのはUSB接続された光学ドライブ

底面。VESAマウントの大きさでネジ穴が用意されており、他社と違ってオプションではありませんというのがウリ

フラットパネルモニター「Quick Relese」は、そのVESAマウントに装着する

フラットパネルモニター「Quick Release」の台座(写真は立てた状態になっているが、本来はこれが机の下にある)。装着は簡単でメンテナンス性は良い。物理セキュリティとして、ケンジントンロックとワイヤーを通す穴も用意されている

中央がオプションのモニターマウントキット。超小型PCの場合、モニターの背面にピギーバッグで取り付けるケースもあるが、そうすると電源ボタンにアクセスしにくいので、このような形になっている。左に積んであるのが省スペース化の歴史というべきキャビネット群

内部構造。右側に見えるのがCPUクーラーで、下にあるCPUはデスクトップ用のもの。このためCPU選択が幅広い。2.5インチHDDの下にメモリスロットがある。メンテナンス性も高い

「HP ElitePad 1000 G2」。展示されていたのはLTEモデル。アンテナ設計も日本向けに最適化しているという

こちらはソリューション展示で、POSへの応用例。従来の「HP ElitePad 900」からそのままアップグレード可能

CPUはIntel Atom Z3795で64bit対応なので、OSもWindows 8.1の64bit版が使われていた

複合機の上位モデルである「HP Officejet Enterprice Color Flow MFP X585z」。下位モデルとの差はADF性能のほか、出力フォーマット、キーボードの有無、PCレスでSharePointサーバーに出力する機能、重送検知機構など

こちらがプリンタ新製品となる「HP Officejet Enterprice Color X555dn」

複合機X585zの操作パネル部。8インチのタッチパネルゆえ、情報量が非常に多い

HPページワイドテクノロジーのキーとなるプリンタヘッド。A4用紙幅に42,240個のインクジェットノズルが配置されており、紙送りと同時に噴射することで最高70ページ/分の出力を可能とする