WSUS経由によるWindows 8.1 Update配布開始

4月9日に公開されたWindows 8.1 Updateは、マウスを中心としたWindows 8.1の操作性を改善するアップデートである。Windows 8.1の個人ユーザーの多くはすでにWindows 8.1 Updateを適用していると思われるが、法人ユーザーの一部は同アップデートを適用できずにいた。

多くの企業では、適用する更新プログラムの取捨選択を行うため、更新プログラムの配信や管理を行うWindows Server Update Servicesを導入している。現在のバージョンは2009年リリースの3.0 Service Pack 2 (WSUS 3.2)だが、Windows 8.1 Updateを適用したマシンは、WSUS 3.2に接続できなくなるという問題が発生した。

これはWSUS 3.2が、TLS 1.2ではなくSSLを使用していた場合、Windows 8.1 Update適用済みマシンを検出しないというトラブルである。そのため、WSUS経由によるWindows 8.1 Update配信は延期されていた。米Microsoftは4月16日(現地時間)、「Springboard Series Blog」で一連の問題が解消したことを発表。「MSKB2959977」を公開し、WSUS 3.2向け更新プログラムの提供を開始した。

WSUSに配信されたWindows 8.1 Update

だが、話のポイントはWindows 8.1 Updateの配布が遅延したことではない。今後リリースするすべてのアップデートは、Windows 8.1 Update適用を前提にすると公式に認めた点だ。今回のブログ記事で米Microsoftおよび日本マイクロソフトは2014年5月13日(日本は14日)以降、同アップデートの適用が必要であることを明らかにした。

単純に考えれば、Windows 8.1 Updateは一部のシステムファイルを置き換え、UIの改善にとどめている。そのため、新たに発見したセキュリティホールをふさぐ更新プログラムをアップデート適用版と未適用版の双方に対して開発するのは難しくないはずだ。しかしその分、工程が増えてしまうのも事実だ。この背景を考慮すれば、Windows 8.1 UpdateがService Packに位置せず、メジャービルド番号も繰り上げないというMicrosoftの意図が浮かび上がってくる。

Windows 8.1 Update適用済みマシンのバージョン情報。バージョンやビルド番号はWindows 8.1と同じだ

いずれにせよ現在Windows 8.1を使用し、自動更新を有効にしているユーザーは、5月からWindows Update経由でWindows 8.1 Updateが自動展開されることになる。ある日突然スタート画面に電源ボタンが現れ、タイルにコンテキストメニューが加わっても驚かないでほしい。なお、手動更新の場合、Windows 8.1 Update以外の更新プログラムは提示されないそうだ。

環境知能時代に備えるMicrosoft - SQL Server 2014リリース

MicrosoftのCEOにSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が就任して早2カ月。同社は体制が整ったせいか、「Mobile First, Cloud First」や「IoT (Internet of Things)」といったキーワードのもと、新たな戦略を推し進めている。モバイルデバイスやインターネットデバイスの普及拡大を見据え、ビッグデータの分析や応用に躍起になっている。

Microsoft CEOのSatya Nadella氏。プロジェクターの内容が黒板に見えるため、大学教授といわれても納得しそうだ

そのIoT時代に向け、Microsoftは収集したデータ「環境知能(Ambient Intelligence)」を管理するプラットホームとして、過去に開発・リリースしてきたエンタープライズ製品が役立つと信じている。Nadella氏の名前で投稿されたブログ記事で、データベースサーバーである「SQL Server 2014」、データベースと分散ファイルシステムであるHadoopを応用した「Analytics Platform System」のリリースを発表。さらに、IoTデータを分析する「Azure Intelligent Systems Service」のベータ版をリリースした。Nadella氏はこれら各製品を「環境知能をデータに変換する燃料(fuel)」と呼び、環境知能時代に役立てると述べている。

こちらがプロジェクターの内容。幾何学的なイラストは、IoTから生まれる相関図とみるのが正しいだろう

そもそも"環境知能"自体聞き慣れない単語だが、端的にまとめると「日常生活における環境情報をデータ化することで、環境そのものを知能のように扱う」ための技術。日本では2000年代後半から注目を集めている。そのアプローチは環境センサーや相互作用を可能にするロボットなどさまざまだが、近い将来に環境知能時代が控えているのは確かなようだ。

Nadella氏は今回の発表を「(環境知能時代に向けた)大きな一歩」と称し、まずはプラットホームの形成に着手したことになる。IBMがパンチカードによるデータ処理機器の開発から、コンサルティングを含むビジネスソリューションを提供する企業に変化したように、20年後のMicrosoftも現在と異なるビジネスソリューションを商材とする企業に変化しているかもしれない。

阿久津良和(Cactus)