8054回目となる『笑っていいとも!』最終回のオープニングは、タモリの一人語り。白のマントに身を包み、外国人牧師風の漫談をはじめた。

『笑っていいとも!』の最終回に出演したビートたけし

オープニングはタモリの4分漫談

「今朝、近所の人に見送られ『サヨナラ、ありがとう』と言われて、『引退するブルートレインはこんな感じかな』と」「番組がはじまった1982年は500円硬貨が発行された。今は亡きテレフォンカードも発売された。私もさっき知った。プロデューサーに聞いた」「それから747ジャンボが今日で最後の飛行。さっきニュースでやってました」「一番の思い出は青汁、お笑いやる気しません。ツッコミもやりたくないから、ボケられると頭に来ます」などと約4分間しゃべり、「『いいとも!』最終回、行ってもいいかな?」とまとめた。

続いてタモリがお昼最後の『ウキウキウォッチング』を歌いはじめる。いつも以上に直立不動でしっかり歌っているタモリ。登場した月曜レギュラーたちの笑顔は、どこかぎこちなく、寂しそうだ。タモリの歌を聴いた指原莉乃は、もう泣いている。香取慎吾も口数が少なく、「どうにか今まで通りにしてるんですよ」とその目は潤ませていた。

明日からは『かぶっていいとも!』

CMが明けると、テレフォンショッキング最後のゲストとなるビートたけしが登場。紋付き袴姿で、手に表彰状を持っている。これは『東スポ映画大賞』で恒例の毒舌表彰だ。今のご時世、生放送番組でやるのは極めて異例となる。果たしてピー音なしで乗り切れるのか……。以下、完全ノーカットで。

「表彰状、タモリ殿。長らく『笑っていいとも!』の司会を務めてきたタモリさんに私から表彰状を贈りたいと思います。ちなみにこの表彰状はゴーストライターが書いたものです。私は一切書いていないことをご了承ください。本日は32年間続いた国民的長寿番組『笑っていいとも!』の最終回という晴れの日に世界的人気映画監督であり、高額納税者人気タレントであり、さらに『総理大臣にしたい男』5年連続ナンバーワン、『上司にしたい男』3年連続ナンバーワンという人気と実力を兼ね備えた超一流タレントである私を呼んでいただき、誠にありがと……」と言いかけたところで、タモリが「何しに来たんだよ!と第1ツッコミ。

たけしは気にせず、「私の『笑っていいとも!』の思い出と言えば1983年2月、理屈ばっかり言っていた田中康夫が気に食わず生放送中に乱入し、首を締め上げたこと。その結果、翌日のスポーツ新聞には『たけし、心身症』と書かれてしまいました。今となってはいい思い出です」とここでタモリが「表彰状じゃないじゃん!」と第2ツッコミ。

ここから一気に毒舌モードへ。「『いいとも青年隊』と言えば、かつて女をだまし、金をせしめ、詐欺恐喝罪で訴えられたH賀研二、パチンコでマンションを買ったといばっていたK保田篤さん、いまだ『世界ふしぎ発見』でしか姿を見ることのないN村真さん、さらにはいいとも青年隊卒業後、ホームレスになってしまったK田K作さん、そして全く売れなかった萩本欽一さんのところのあさりど。などなど数々の一流タレントを輩出してきたことを忘れてはいけません」と言い切ったところで、タモリが「何が言いたい!」と第3ツッコミ。

「そして何と言ってもこの番組の名物コーナーである『テレフォンショッピング』(たけしの言い間違いで客席は大爆笑)。友達を紹介するという名のもとにいきなり電話をして出演をお願いするという斬新な企画でありました。しかしながら女優の矢田亜希子さんが大竹しのぶさんを友達として紹介するときに、思わず『初めまして』と言ったとき、私はショックのあまり、耳が聞こえなくなりました。得意の作曲活動をあきらめなければいけない事態に陥ってしまいました。あらためて芸能界というのはヤラセの世界だなと痛感した次第でございました」と話すとタモリは苦笑いのみ。確かにツッコミにくいところだ。

「そして32年間、初めて新宿に来た番組観覧の田舎者を相手に何もやらず、間抜けな芸人に進行を任せてきたタモリさんに触れないわけにはいきません。かつてあなたは、ヘルスの呼び込み、オレオレ詐欺の出し子、パチンコ屋のサクラ、フィリピン人との偽装結婚のあっせんなどを経て芸能界に入り、イグアナの形態模写、4か国語麻雀、意味不明なハナモゲラなどの卓越した芸で、一部のエセインテリ集団から熱狂的な支持を受け、あれよあれよという間に国民的人気番組の司会者まで上り詰めました。しかし、そんな『笑っていいとも!』も今日をもって終わってしまうのかと思うと、私としては残念でありません。明日からは、O倉智昭さんの『かぶっていいとも!』という番組がはじまると知ったとき……」と言うとさすがにタモリは、「やめなさい!」と第4ツッコミ。

「私はそのとき思わず聞こえなかった耳が回復し、今のゆがんで聞こえるまでになりました。最近では、新垣さんとの一度壊れた友情も復活し、今では二人で元気に作曲活動にいそしんでおります。ですからタモリさんも何の心配もすることなく、2流とも3流ともつかない芸人しか出ないと言われている『タモリ倶楽部』に全精力を注いで頑張っていただきたい。2014年3月31日、『A女、E女』(フジテレビ伝説のお下劣番組)復活を望む会 会長 イジリー北野」と読み上げた。オープニングのタモリ、たけしともに1ネタ4分間でまとめたのは、さすがとしか言いようがない。

続けてたけしは、タモリに大量の目録を渡しはじめる。その内容は、青山葬儀場割引券、紙おむつ一年分、ゲートボール高級スティック、都バス無料券、3D入れ歯交換券、多磨霊園永代供養券。隠居老人を思わせる、たけしらしいブラックジョークだ。これを「ありがとうございます。心温まるスピーチをホントに……」と受け流すタモリもさすがだった。

かつてひどい目にあっていた二人

たけしが「(『いいとも!』は)オレにも話が来たんだよ。でもウチの事務所が『あいつが月曜から金曜で行くわけないじゃないですか』と言ったらフジテレビはすぐ『そうですね』って言ってそれ以降は全然なかった」と話し出すと、タモリは「全然聞いてない」と驚く。実はこのくだり、以前出演したときも見られたものだが、お互いに忘れていたのだろう。それでも最終回にふさわしいトークではある。

たけしが「『タモさんか、さんまか、オレか』って話だった。でもハナからオレは相手にされてなかった。その前から休んでたから。『お化けが出たから』って理由で」と笑うと、タモリが「ゲストでもないのに(たけしが)朝のリハーサルに現れたんですよ。『どうしたの?』って聞いたら『お化けが出た』って。全然意味が分からないし、お化けが出てオレんところに来ても困るんだよ」とあきれる。2人のトークはこの図式が基本線だ。

しかし、最終回だからか、今日はタモリも話し出した。「昔はマネージャーがいいかげんで、倒れそうになっていても、『現場行って倒れましょう』って言う」と話すと、たけしが「『現場行って倒れたらギャラが半分出ますから』って背負おうとするんだよ」と呼応。ボケるタモリに乗っかるたけし。この図式もまた何かの番組で見たい。

さらに話はブレイク前の同世代トークへ。タモリが「われわれはけっこうひどい目にあった。二人そろって(プロデューサーから)言われたことがあったよね」と振られた、たけしが「『今までのテレビタレントらしくないから』と言われて素人みたいな扱いだった」と明かす。さらにタモリが「『こんなもの5年もつわけない。3年がせいぜい』とか言われて」とこぼすと、たけしは「オレはタモさんだけダメになればいいなと思ってて。と思ったら二人とも生き残っちゃったね~」とオチをつけた。

「明日のゲスト」は明石家さんま

その後、たけしから「これからペース変わらないんですか?」と声をかけられたタモリは、「いや、どうしようかと思って。そっちの方が心配で……。休日は朝の歯を磨く前からビールを飲むんだけど、これから毎日になっちゃうから、7月くらいに死ぬんじゃないか」と笑わせる。本当に新たな番組に出ないのなら、ちまたでささやかれる"タモロス"の人が続出するかもしれない。

Ⅹ/100アンケートは、「宝くじで10万円以上当たった人」。たけしの予想人数は1人だったが、結果は5人。ちなみに100万以上当たった人が1人だった。そして、通常なら翌日のゲスト紹介だが……「ついに"友だちの輪"が途絶えてしまった」と思っていたら、たけしが生野陽子アナに「これ明日の友達」とメモを渡す。「どんな番組になるか知らないけど、一応呼んじゃおう」と電話をかけた相手は、明石家さんまだった。

たけしから「佐村河内ですけど」とボケられたさんまは、しばし沈黙したあと、思い出したように「ああどうも、新垣です」とボケ返す。ガチンコかは微妙だが、さんまの間はスゴイ。さらにタモリから「電話でカチカチ言ってるのは歯か?」、たけしから「また違う女引っぱり込んでるんじゃないの?」と突っ込まれまくりのさんま。この3人の場合、さんまが徹底的にイジられる図式になる。

タモリから「明日大丈夫?」と聞かれたさんまは、「大丈夫よ」となぜか快諾。たけしが「朝8時から」と言われたが、さんまは気にせず「いいとも!」と宣言して電話を切った。たけしは、「(さんまは)寝ぼけてるね。ふだんはもっとしゃべるもん」、タモリも「寝起きが極端に悪い。朝に電話すると『あ~』とかしか言ってない」と同意。さんまなりに尺を気づかったのだろうか。わずかな時間だったが最後の『いいとも!』で、"お笑いBIG3"の生共演を喜んだ人は多かっただろう。

最後の一声は「明日も見てくれるかな」

CM明けのコーナーは、『曜日対抗いいともCUP FINAL』。これが昼放送の最終コーナーとなる。今年3カ月間の決着をつけるために、ここで火曜の中居正広、水曜の太田光、木曜の笑福亭鶴瓶、金曜の関根勤と各曜日のリーダーが急きょ登場。月曜の香取慎吾を合わせて、空気入れ競争が行われた結果、金曜日が優勝し、特製のタモリカレッジリングが贈られた。

エンディングで生野陽子アナが「同一司会者による生放送バラエティ番組の最多エピソード数」がギネス世界記録に認定されたことを発表すると、スタジオは歓喜の渦に。ギネス認定員が現れ、タモリに今度は本物の賞状が渡された。さらに、『笑っていいとも!』の番組も「生放送最多回数世界最高記録」でギネス認定。プロデューサーなどのスタッフ6名が登壇する華々しいフィナーレとなった。印象的だったのは、タモリが「こちらにいらっしゃるのは、1回目から(32年間)ずっと一緒のスタッフ」とたたえ、1人1人紹介していった姿。スタッフはタモリのはからいに目を潤ませていたが、その半数は白髪姿であることに歴史を感じた。

エンディング曲が流れると、客席から「キャー」の悲鳴が……。残り2分。「明日も見てくれるかな」は言えないわけだが、タモリは「何も考えてなかった」とあっさり。ここで中居が「昼間のお客さんにごあいさつを」と素晴らしい振りを入れる。タモリは、「長い間、32年間ありがとうございました。夜もありますんでよろしくお願いします」と頭を下げた。そして間髪入れずに、「32年間よく毎日来ましたよ。ありがとうございました」とレギュラーにも頭を下げたが、その様子は明らかに照れている。涙はまだ早いということか。

そしてタモリお昼最後の言葉は、含み笑いしながら「それじゃまた明日も見てくれるかな」。何とも力みのない、この人らしい締め方だった。『いいとも!』お昼の本放送はこれで終了。残すは夜の超特大号だけになった。32年の歴史をどう締めくくるのか。そのときタモリはどんな表情でどんな言葉を……。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。