シャープは、米・ラスベガスで開催されている「2014 International CES」に合わせ、液晶テレビ「AQUOS QUATTRON+」(日本名:AQUOSクアトロン プロ)の北米市場投入や、ホームオーディオ機器の新製品を発表した。ハイエンドの4Kモデルと従来のフルHDモデルの間を補完し、4Kテレビよりも大幅に安い価格で4Kコンテンツの精細感を引き出せる製品として訴求、他のテレビメーカーに対抗する。

シャープが2月以降北米市場に展開する「AQUOS QUATTRON+」

一般的な液晶パネルがR(赤)・G(緑)・B(青)の3色の画素から構成されるのに対し、同社の「クアトロン」技術を採用したパネルはRGB+黄(Y)という4色の画素を備え、自然界に存在する色の再現性を高めている。2013年11月に発売した「AQUOSクアトロン プロ」では、さらに画素の配置と駆動方式を工夫することにより、画素数自体はそれまでのクアトロン技術採用テレビと同じだが、フルHDパネルよりも高精細(シャープでは「4K相当」と表現)な表示が可能となっている。

黄色の画素を加えたことで色の再現性を高めただけでなく、1ピクセルを構成する4色の画素を独立駆動することで解像感もアップ。フルHDパネルで「4K相当」の表示を実現した

映像制作の現場では4K対応が広がりつつあり、4Kコンテンツへの関心は高まりつつも、4KテレビとフルHDテレビの間にはまだかなりの価格差があることに注目。60型以上の大画面テレビにおいて、フルHDでは満足できないが4Kテレビはまだ高すぎて手を出せないという、他社の製品ラインナップではカバーできない層に向けてAQUOS QUATTRON+を提供する。

右から2列目が今回北米向け製品の目玉となるAQUOS QUATTRON+。「フルHDか、4Kか」という他社の製品ラインナップに対し、第3の選択肢として提案する

なお、日本国内向けのAQUOSクアトロン プロは画面サイズのみが異なる1シリーズの製品群で展開しているが、北米向けのAQUOS QUATTRON+は日本向けモデルとほぼ同じ機能を持つ「UQ」シリーズに加え、THX Display認証や15Wサブウーファーなどを省いて価格を抑えた普及機種「SQ」シリーズを用意し、より戦略的な価格で販売する。希望小売価格は60型モデルでAQUOS QUATTRON+ UQが2,999.99米ドル、AQUOS QUATTRON+ SQが2,299.99米ドル。同時に発表された4Kテレビ「AQUOS 4K Ultra HD」の60型モデルは4,999.99米ドルとなっており、同社では「4Kの半額以下」で4Kに迫る表示が可能という低価格をアピールしている。SQシリーズは2月、UQシリーズは3月発売予定。

一部の機能を省いて既発売の日本向けモデルよりもより戦略的な価格設定とした「SQ」シリーズを用意。なお、上位の「UQ」シリーズでは機能面だけでなくフレーム素材などもSQより高級なものを採用している

また、番組表やインターネット連携などをまとめた「SmartCentral」機能を刷新し、ケーブルテレビ、衛星放送の各番組表と、YouTubeやHuluなどのストリーミングビデオを統一されたユーザーインタフェースから検索できるようにしたほか、レコメンデーション機能も追加し、見たいコンテンツへのアクセスのしやすさを改善した。

また、SmartCentralはiOSおよびAndroid用のアプリも用意しており、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器からテレビの操作が行えるので、付属のリモコンだけでは行いにくい検索時の文字入力なども簡単にできるほか、モバイル機器内の写真をテレビに表示するといったコンテンツ共有機能も備えている。

タブレットなどからテレビの操作や画像の共有が行えるSmartCentralアプリ

テレビ以外の製品では、5GHz帯の電波を利用していわゆるハイレゾ音源をワイヤレス伝送するWiSA(Wireless Speaker and Audio)規格に対応したユニバーサルプレーヤー「SD-WH1000U」(BD/SACD対応、3,999.99米ドル)と、従来のオーディオ機器に接続して伝送を無線化するWiSA対応ワイヤレスブリッジ「VR-WR100U」(599.99米ドル)を今春発売する。

WiSA対応で高品位のオーディオを非圧縮伝送できるユニバーサルプレイヤーを発表。ワイヤレスHD規格で映像の無線伝送も可能

シャープ執行役員兼Sharp Electronics Corporation会長兼社長の大澤敏志氏

WiSAは最大8チャンネル(7.1chスピーカーシステムに対応)の24bit/96kHzデジタル音声信号を非圧縮で伝送できる無線オーディオ技術で、Bang & OlufsenからWiSA対応のワイヤレススピーカーが既に発表されていたが、プレイヤー側は今回のシャープ製品が初の対応機器となる。サラウンドスピーカーなどを部屋の後ろ側へ設置する場合などにも長いケーブルを引き回す必要がなくなるほか、Bluetoothオーディオなどとは異なり非圧縮伝送なので高品位の音源も本来の品質で楽しめるのがメリットとなっている。

市場や同社の経営は依然として苦しい状況ではあるものの、プレスカンファレンスで挨拶したシャープ執行役員兼Sharp Electronics Corporation会長兼社長の大澤敏志氏は、経営の構造的な改革の効果が現れ、2013年は見通しを上回る業績になったと報告。コンシューマー向け、法人向け、コンポーネント(部材)の各事業を行う北米市場でも、2014年は再躍進の年としたいと意気込みを語った。