「ある意味、9眼。」のキャッチコピーでおなじみ、カシオ計算機のデジタルカメラ、EXILIM「EX-10」。幾度となくご紹介しているように、1/1.7型のCMOSセンサーや、広角端F1.8、望遠端でもF2.5という開放値を持つ明るい光学4倍ズームレンズ、先進の「エクシリムエンジン HS Ver.3 アドバンス」を搭載する、EXILIMシリーズのフラッグシップモデルである。このEX-10を引っさげて、"プレミアムコンパクト"といわれる「ひとクラス上の品質と表現力を持つコンパクトカメラ」の市場に参入した思惑について、カシオQV事業部の企画部門および開発部門に聞いてきた。

EXILIM EX-10

ハイスピードテクノロジーを生かす高性能化

まずは、企画部門からお話をうかがった。お相手は、カシオ計算機 QV事業部 開発部 商品企画室の萩原一晃氏と田中仁氏だ。

カシオ計算機 QV事業部 開発部 商品企画室 萩原一晃氏

萩原氏「当社でも、以前は1/1.7型や1/1.8型のセンサー、明るいレンズを使用した製品も出していたんです。当時は『プレミアムコンパクト』という言葉もない時代でした。

ご存じの通りここ数年、この市場がにわかに活気づいてきました。コンパクト機における市場規模が縮小傾向にある中、唯一、このジャンルだけが伸びている。カシオとしても、レンズ交換式ではない究極のコンパクト機をラインナップに加える必要があると思っていましたし、高価格帯製品の研究開発は継続して行ってきました」

カシオ計算機 QV事業部 開発部 商品企画室 田中仁氏

田中氏「ZRシリーズでも、ハイグレードのEX-ZR1000やEX-ZR1100が好調です。また、お客様からも、ZRシリーズからステップアップしたいが、使い慣れた『EXILIM』から、センサーが大きくてレンズが明るいものを選びたい、という声がありました」

―― EX-10には、有効1,210万画素1/1.7型のCMOSセンサーが採用されましたね。ただ、他社製品を見回すと、センサーサイズでも画素数でも、より大きなセンサーを採用しているカメラも見受けられますが。

萩原氏「これはセンサーだけでなく、レンズにも関係する問題です。今回、さまざまなセンサーとレンズの組み合わせを試しました。その中で、EX-10に採用した1/1.7型CMOSセンサーとズームレンズの組み合わせが、EXILIMのアイデンティティでもあるハイスピード技術と相性が良かったんです。

特に望遠端でも開放値F2.5という明るいレンズ、これは非常にハイスピード撮影に向いている。ISO感度を上げずにシャッタースピードを速くできますから。このレンズとのスペックバランスをもとに、使用するセンサーを決めたという感じです。やはりEXILIMの根本には、連写合成を含むハイスピード技術があります。これはお客様からも求められている性能で、ハイスピードだからEXILIMを選んでいただけていると思います」

広角端F1.8、望遠端でもF2.5という開放値を持つ明るい光学4倍ズームレンズ

アートショットの新機能「宙玉」

―― ハイスピード処理といえば、映像エンジンである「エクシリムエンジンHS Ver.3」も「エクシリムエンジンHS Ver.3 アドバンス」になりましたね。どんなところが変わったのですか?

萩原氏「エクシリムエンジンHS Ver.3を基本として、センサーやレンズの性能向上に対するチューニングを施しています。例えば、被写界深度が浅くなったことへのチューニングなどですね。あとは、新機能である2軸ブラケティング撮影機能「プレミアムブラケティング」や、アートショット「宙玉(そらたま)」の処理です」