セブン銀行ATMで利用できる視覚障害者向けの「音声ガイダンスサービス」をご存じだろうか? インターホンのキー操作のみで利用でき、視覚障害者にとっても、不安を抱かずに利用できるのが特徴だ。12月1日からは、視覚障害者・健常者を問わず、同サービスでのATM利用件数に応じて、1件あたり100円をセブン銀行からラジオ・チャリティ・ミュージックソンに寄付するなどの内容のキャンペーンを実施している。今回は、同サービスが開始されるに至った経緯を紹介するとともに、筆者が実際にATMで同サービスを利用した体験をレポートしたい。

今回は、セブン銀行ATMの視覚障害者向けの「音声ガイダンサービス」について、筆者が実際にATMで同サービスを体験した

セブン銀行設立当初から、視覚障害者向けサービスに大きな期待

セブン銀行は2001年に設立。設立当初は、セブン-イレブンが銀行をつくるらしいと話題となったが、そうした中、新しく銀行を作るのなら、視覚障害者が使えるようなATMを作ってほしいとの要望が強く寄せられていたという。というのも、既存の銀行のATMに視覚障害者向けの音声ガイダンスサービスを付けるのはシステム的にも大変な作業であり、全ATMにそうした機能を付加するのは難しく、そのため、新しくできる銀行であるセブン銀行に大きく期待が寄せられていた。

こうした要望を受けセブン銀行では、設立当初から同行のATMに、視覚障害者の人でも使えるような機能を付加することを想定した上で全国にATM網を広げていき、ついに2007年11月から、すでに全国に展開していた初代ATMと第二世代ATMを合わせた約1万3000台のATMについて一斉に、視覚障害者向けの音声ガイダンスサービスを付加し、提供を開始した。

全台一斉に同サービスを付加できたことについて、同行の宮里知江氏は、「当行は新しい銀行でメガバンクなどと比べてもシステム自体が小さいので、一斉に同サービスの機能を付加することができた」と話す。だが、それを実現するためには、設立当初からの同行経営陣の強い意思があったことは間違いない。現在では、1万7000台以上ある全ての同行ATMで、提携する500以上の金融機関の顧客に音声ガイダンスサービスを提供している。利用件数は、サービスを開始した2007年度に1,956件(※11/26~セブン銀行、2/12~提携先銀行の利用が可能に)、2008年度に6,566件(※4/21~信金・信組、ろうきん、JA・JF、証券の利用が可能に、※5/19~ ゆうちょ銀行の利用が可能に、以降現在に至る)、2009年度8,975件、2010年度1万1,306件、2011年度1万3,071件、と着実に増加している。

インターホンのみで取引きが完結するのが最大の特長

音声ガイダンスサービスで利用できる取引(各金融機関の取引きメニューに準じる)は、「引出し」と「預入れ」、そして「残高照会」。同サービスの特長として第一に挙げられるのは、冒頭でも触れたように、取引きに関する操作を全てインターホンに集中しているので、タッチパネルを使わず、インターホンのみで取引きが完結することが挙げられる。万が一取引中に不具合が発生した場合も、コールセンターに自動的に接続し、オペレーターから状況の説明を行うことができるようになっている。オペレーターは遠隔操作もできるので、いざという時に人手による対応ができる態勢が整っている。

また、第三者によるいたずら防止のため、「インターホンでの取引き」を選択した時点で、テンキーやタッチパネルでの操作ができなくなる。わかりやすい案内を実施しているので、操作に不慣れな人でも一人で操作できるよう操作方法を詳細に案内する。

また、通常以上にプライバシーに配慮しているため、「紙幣をお受取りください」など、通常ATMスピーカーから流れる案内はインターホンのみで流れる。金額も画面に表示されないようになっている。カード挿入時には「利用金融機関名」を、取引き終了時には「手数料」を音声案内する。提携金融機関を含め操作フローを統一している。

以上について宮里氏から説明を受けた後、筆者がアイマスクを付け、音声ガイダンスサービスを利用させていただくことにした

「間」があると不安に感じる方も多いため、少し速めのテンポで案内

まず、アイマスクを付け、インターホンを手に取る。すると、オペレーターとの通話を希望する場合は1を、インターホンによる取引は2を押すとのガイダンスが流れたので、2を押した。ちなみに、数字の5には突起があり、それを目安に数字に位置が分かる。一番下の列は左端が「*(アスタリスク)」、真ん中が「0」、右端が「#(シャープ)」。ガイダンスでは、取引を中断する場合は「*(アスタリスク)」、確認する場合は「#(シャープ)」を押すよう教えてくれる。この数字と記号の配置と操作方法は、視覚障害のある方には標準で、セブン銀行もそのことを確認の上、数字・記号配置と操作方法を決めたという。「*」や「#」の位置は普段はほとんど意識することはなかったが、こうした意味があって決められていることを初めて知った。

「*」や「#」の位置は普段はほとんど意識することはなかったが、意味があって決められていることを初めて知った

さらにガイダンスが進んでいくが、普通の会話よりもテンポが速い。これは、視覚障害の方にとっては、「間」があると不安に感じる方も多いため、少し速めの案内にしているからだ。

ガイダンスでは、耳の裏のボタンで音量を調整できることも案内され、少し聴力の弱い筆者も音量を大きくすることができ、聞きやすくなった。

耳の裏のボタンで音量を調整することができる

さらに、ガイダンスに従ってカードを挿入。「ミ・ツ・ビ・シ・ト・ウ・キョ・ウ・ユー・エ・フ・ジェ・イ・ギ・ン・コ・ウ」と合成音声が、挿入した金融機関名を、ゆっくりと教えてくれる。こうした案内があれば、もし異なるカードを入れても確認できるため、非常に便利だと実感。

ガイダンスに従ってカードを挿入。合成音声が、挿入した金融機関名を、ゆっくりと教えてくれた

さらに、ガイダンスの案内に沿って、取引内容は「引き出し」を選択、手数料がかかる場合があることもきちんと教えてくれた。続いて暗証番号や金額をインターホンで入力したが、横から撮影してくれたスタッフにも、どのような操作をしているかは全く見えなかったといい、この辺りにも、細かい配慮がなされていることがうかがえた。

横から撮影したスタッフにも、どのような操作をしているかは全く見えなかったという

視覚障害者の方々に考慮、カードと紙幣が出ている時間は普通よりも長めに

さらに驚いたことは、インターホンでの操作中でも、健常者が利用する際に利用するモニター画面も同時に遷移するということ。つまり、インターホンで取引していることは、周りの人には分からないような仕組みになっているのだ。

金額を入力後も、「ご希望の金額は○○円ですね。よろしければ『#』ボタンを押してください」との案内。金額の押し間違いもこれで防げる。また、預金残高も教えてくれるので、これも安心に利用できる1つのポイントだと実感した。

最後に「明細が必要な場合は『#』ボタンを押してください」との案内の後、カードと明細票、紙幣が出てきた。ただ、アイマスクをしている関係上、紙幣やカードが出てきた位置が分からずまごついてしまった。普通ならカードや紙幣を取り出す時間がかかるとカードがATMに吸い込まれてしまうところだが、視覚障害者の方々がこうした動作に時間がかかることを考慮して、カードと紙幣が出ている時間は普通よりも長めになっている。したがって、少し手間取ったが、無事、カードと紙幣を取り出すことができた。

視覚障害者の方々がこうした動作に時間がかかることを考慮して、カードと紙幣が出ている時間は普通よりも長めになっている

今回、体験させていただいた感想は、とにかく、障害のある方々に対して数多くのきめ細かな配慮があるという点だ。ただ、セブン銀行の悩みは、「ニーズはあるはずなのに、このサービスが十分に知られていないこと」(宮里氏)。視覚障害のある方に、セブン銀行の全ATMで「音声ガイダンスサービス」が利用できることを伝える方法が少ないことが、大変残念な点といい、普段視覚障害の方に接する機会が多い健常者の方にも知ってもらうことで、利用者を増やしていきたいという。

そのため、セブン銀行では一人でも多くの人に、この「音声ガイダンスサービス」を知ってもらうために、2010年からキャンペーンを実施。健常者であっても、すべてのキャンペーンに参加でき、セブン銀行を通じて、ニッポン放送のラジオチャリティミュージックソンへ寄付を行うことができる。キャンペーンの概要は以下の通りとなっているので、ぜひ参加してほしい。

キャンペーン概要

【まず知って!】クリック募金

  • 期間中、同社サイトに設けられた音声ガイダンスサービスキャンペーンページ内の「クリック募金に協力するボタン」1クリックにつき、セブン銀行よりラジオ・チャリティ・ミュージックソンに1円の寄付を行う。1人が1日にクリックできる回数は1クリック

【そして体験して!】ATM 利用件数に応じてセブン銀行より寄付

  • 期間中、音声ガイダンスサービスでのATM利用件数に応じて、1件あたり100円をセブン銀行よりラジオ・チャリティ・ミュージックソンに寄付する

【さらにセブン銀行口座を持っている人へ】インターネットバンキングを使った募金

  • セブン銀行口座を持っている顧客がインターネットバンキングを利用してラジオ・チャリティ・ミュージックソンに寄付する場合、その振込み手数料を無料にする

キャンペーンページ