英ARM社は、米国サンタクララ市で開催されたイベント、ARM Techcon 2012で、先日発表した64bitプロセッサCortex-A50シリーズの概要を公開した。
Cortex-A50は、ARMv8アーキテクチャのプロセッサで、Cortex-A53と同57の2つの製品がある。Cortex-A53は、インオーダー構造で消費電力を重視した構成のプロセッサで、Cortex-A57は、アウトオブオーダー機構を搭載し性能を重視したプロセッサになっている。また、この3つのプロセッサを組み合わせることで、ARMの提唱するbig.LITTLEコンピューティングを実現でき、平均消費電力をA57単体で使う場合よりも下げることが可能になる。
Cortex-A53は現行のCortex-A7の、A57は、A15の論理的な後継プロセッサであり、それぞれのパイプラインを64bit化するなどしてARMv8アーキテクチャに対応している。ARM社は、昨年のARMv8の発表時に、ARMv7は終息するのではなく、これからも続くとしていたが、具体的な実装であるA50シリーズをみるに、Cortex-A7/A15の後継製品としてA53/57を想定しているように見える。
かつてのインテルプロセッサやAMDのプロセッサも、64bitモードを装備していながら、オペレーティングシステムなどの関係で、32bitプロセッサとして使われていた時期があった。ARMv8には、64bitモードと従来のARMv7互換の32bitモードがあり、32bitのシステムをそのまま動かすことが可能だ。そう考えると、Cortex-A15のハイエンドプロセッサとしてCortex-A57が採用されてもおかしくはない。少なくともプロセッサだけは、先に64bit化されることになると思われ、オペレーティングシステム側の対応、各システムベンダーの考え次第ということになるだろう。
Cortex-A50シリーズには、A7/15と同様に仮想マシン支援機能が搭載されているため、64bitコードのハイパーバイザー(仮想環境管理システム)の上で32bitのゲストOSを動作させることも可能であり、また、64bitコードのOSの上で32bitアプリケーションを動作させることも可能だ。スマートフォンやタブレットが完全に64bit化するには、オペレーティングシステムの対応が必要となるが、すでにLinuxなどは64bitカーネルが作られており、開発にはそれほど長い時間はかからないと思われる。また、PCで多くのシステムが64bit化した理由の1つは、メモリ空間の問題、すでに多くのAndroidタブレットが2ギガバイト程度のメモリを搭載しており、メモリ空間自体が逼迫しはじめるのも時間の問題と思われる。
ここでは、コンファレンスセッションで公開されたCortex-A53とA57の情報をお届けする。今回はCortex-A53を解説し、次回、A57を解説する予定である。
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