10月2日から千葉県・幕張で開催されているIT・エレクトロニクスの展示会「CEATEC JAPAN 2012」。シャープブースでは、新技術を採用した液晶ディスプレイを中心とした展示が行われており、注目を集めている。

その1つが「IGZO」。IGZOは、低消費電力で高精細な液晶パネルとして話題になっているデバイスだ。

「IGZO」を採用した4K2Kディスプレイ

従来の液晶では、電気を流すと液晶分子が整列し、光を通すようになる。これによりバックライトからの光が透過し、映像などが表示されることになる。つまり、表示している最中は、電気を流し続けなければならないことになる。

それに対してIGZOでは、映像が表示されたら、電気を止めてもそのままの状態を維持できる。これにより、液晶自体が駆動する電力を大幅に削減することが可能で、これはとくに静止画表示の際に大きな効果を発揮する。

パネルを駆動する電力を大幅に削減する。左が従来型のディスプレイの消費電力で、右がIGZOディスプレイの消費電力

もちろん、ここで削減される消費電力は、液晶パネル自体のもので、バックライトが消費する電力は変わらない。

しかし、IGZOでは液晶のドット1つ1つのトランジスタを超小型化することで、開口率が大幅に向上している。従来と同等の透過率ならば、2倍の高精細表現を実現しており、また、開口率の向上により、従来よりも暗いバックライトで、従来と同等の画面の明るさを実現することも可能だ。

左が従来型ディスプレイで、右がIGZOディスプレイ。上のメーターがパネルの消費電力で、下のメーターがバックライトの消費電力

会場では、5V型~32V型のIGZOディスプレイを展示。32V型のIGZOディスプレイは、4K2K(3,840×2,160ドット))の解像度を持つ。また、6.1型のIGZOディスプレイはWQXGA(2,560×1,600ドット)で、498ppiという高い解像度を持つ。一般的な商業印刷よりも高い解像度だ。

6.1型のIGZOディスプレイ。498ppiの超高解像度

32V型の4K2Kディスプレイ。タッチ操作に対応したパネルも展示されている

IGZOは、静止画表示時の消費電力の低さから、待ち受け表示野割合が多いモバイル端末や、デジタルサイネージなど、幅広い分野での応用が期待されている。

IGZO以外にも、話題の新技術が展示されている。それが「モスアイパネル」(motheye panel)だ。モスアイは蛾の目の構造を参考に開発されたパネルだ。表面に細かな凹凸が設けられており、そこで光を屈折させることで反射を抑えている。

ブースには、モスアイパネルを採用した液晶テレビ「AQUOS(アクオス)」が参考出展されている。一般に、ディスプレイの表面は、グレアタイプ、ノングレアタイプの2種類に分けられる。グレアタイプは映り込みがあるがクッキリとした表示のパネルで、ノングレアタイプは映り込みが抑えられた映像を表示できるパネルだ。モスアイパネルを使った液晶ディスプレイは、表面や映像の質感はグレアタイプの液晶パネルに近い。しかし映り込みは非常に少ない。

モスアイの効果を示す展示

モスアイパネルを使用したAQUOSを参考出品

また、モスアイパネルを使ったショーケースも展示されている。ショーケースでは、ケースの半分が通常のガラスで、もう半分がモスアイパネルとなっており、モスアイの効果が分かりやすい。

モスアイパネルを使ったショーケース