ソニーが同社初のポータブルヘッドホンアンプ「PHA-1」を発表した。Dock端子を備えたiPod/iPhone/iPad各シリーズとのデジタル接続に対応するほか、非同期方式のUSB Audioとしても機能するなど、明らかにApple製品を意識した仕様となっている。発売予定日は10月10日だが、いちはやく出荷前製品をテストする機会を得られたため、早速レビューしてみたい。

付属のシリコンベルトでiPhoneを固定した「PHA-1」

Dock経由でデジタル信号を入力できる

正直、ソニーがここまで割り切った製品を投入してくるとは予想していなかった。Walkmanという一大ブランドを擁する同社のこと、明確にApple製品のみをターゲットとするデバイスは出しにくいのでは、という先入観があったからだ。しかし、このPHA-1は明らかに「iPod/iPhone/iPadを持つMacユーザ」を意識した仕様となっている。

最大の理由は「Dockのデジタル信号」のサポート。iPod shuffleを除くiPodシリーズ(第3世代以降)、およびiPhone/iPad/iPod touchでは、Appleの独自仕様である30ピンの「Dock端子」を介してデジタル信号を出力できるようになっており、PHA-1はここからデジタル信号を入力できる。コスト的な理由で現状高級オーディオ機しか対応しない、iPod/iPhone/iPadとのデジタル接続がサポートされているのだ。

ところで、Dockに関してよく耳にする誤解のひとつに、Dock接続ではもれなくデジタル信号が流れる、というものがある。しかし、こと音声に関するかぎり事実は異なる。デジタル信号の入力に対応した機器を用意しないかぎり、Dock接続ではアナログ信号が利用されるのだ。

音質という観点からすると、デジタルかアナログかの差は大きい。AACやMP3といった圧縮音源はiPod/iPhone/iPadで展開(デコード)された後、内蔵のDAC(Digital Analog Converter)チップによりアナログ変換された信号と、DACを経由しないデコードされたままのデジタル信号との2系統がDockケーブルを流れるが、低価格機はDockコネクタを備えていてもそのうちアナログ信号のみ入力可能、というケースがほとんどだからだ。

PHA-1では、英Wolfson社の24bit DACチップ「WM8740」を搭載。iPod/iPhone/iPadは世代ごとにチップ構成が異なるが(Wolfson社製DACを採用したモデルもある)、たとえばiPhone 4/4Sに採用されているCirrus Logic社製DACに比べると、Wolfson社製DACは高級オーディオ機における採用実績で上回る。そのような事情もあり、音質に期待するのは当然だろう。

アナログ回路に対するこだわりも、オーディオ&ビジュアルのメーカーならではだ。35μmの圧膜銅箔多層プリント基板や、オーディオ回路でのフィルムコンデンサや高音質電解コンデンサなど、据え置き型プリメインアンプにも採用される部品を使用しているという。さらにヘッドホンアンプ部の出力段にTI製IC「TPA6120」を、電圧増幅部には同じくTI製のオペアンプIC「LME49860」を採用することで、高音質化が図られている。

PHA-1のフロントパネル。ステレオミニジャックと(アナログ)オーディオ・イン端子が各1基、ON/OFFとボリュームを兼ねたツマミが配置されている

PHA-1のリアパネル。入力先を切り替えるスイッチと、Dockデジタル入力用のUSBポート、USB Audio接続用のマイクロUSB端子(type B)各1基が配置されている

サイドパネルにはゲイン切替スイッチを配備、接続するヘッドホンのインピーダンスに合わせハイ/ローを切り替えることで、8Ω~600Ωまで対応できる

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