呼び出しが簡単になったブートオプションメニュー
そもそもWindows 8では、起動時にハイバネーションファイルを読み込むことで、デバイスドライバーの呼び出しやサービスの実行で発生する処理時間を軽減し、高速な起動を実現している。図12は通常の起動(コールドブート)とWindows 8の高速起動をグラフ化したものだが、通常はBIOSによるPOST処理を終えると通常はシステムの初期化が実行され、ユーザーセッションと呼ばれる各ログオンユーザーの処理に移るという流れ。一方のWindows 8は休止状態で使用するハイバネーションファイルを読み込み、一部の処理をバイパスすることで高速化を実現している。Microsoftによると、Windows 7の通常起動と比べて30~70%も高速化しているそうだ(図12)。
詳細なロジックは、Building Windows 8に掲載された2011年の記事で確認できるが、その一方で問題となるが起動オプションの設定。あらためて述べるまでもなく、Windows OSではOSの起動開始直後にほかのOSを呼び出す項目や、セーフモードを実行するためのメニューを用意し、コンピューターの活用に役立てている。だが、前述の起動高速化がネックになるとは当初だれも気付かなかったようだ(図13)。
Windows UXチームのChris Clark(クリス・クラーク)氏いわく、「HDDではなくSSDを使用した時はわずか七秒でWindows 8が起動するため、従来のように[F8]キーを押して同メニューを呼び出すのが難しい」とのこと。そこでMicrosoftは、いくつかのシナリオを想定したが、最終的に至ったのは従来のキー入力による呼び出しではなく、Windows 8が稼働している状態から呼び出すというものだ。もちろんWindows 8に何らかのトラブルが発生し、正常起動しない場合にブートオプションメニューが表示されるのは従来どおりである(図14)。
具体的にはチャームから<設定>→<PCの詳細設定>で呼び出すPC設定の<全般>にある<今すぐ再起動する>をクリックするすることで、ブートオプションメニューが現れるというもの。「システム構成(msconfig.exe)」でブートオプションを一時的に変更し、セーフモードの設定を調整する操作を自動化したものに近いだろう。同様の結果を得る操作は各箇所に用意されており、チャームの<設定>に用意された<シャットダウン>ボタンをクリックすると現れるメニューの<再起動>を[Shift]キーを押しながらでも同メニューを呼び出せる。また、コマンドライン派は「Shutdown.exe」のオプション「/r /o」を使用してもよい(図15~17)。
その一方でUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)と非UEFI(BIOS)環境でも同様のブートオプションメニューが用いられると、ブログ記事で説明されていた。異なるハードウェア環境でのUI統一は基礎設計の第一歩だが、UEFI環境では同セットアップ画面を呼び出すことを可能にするという。もちろん同機能をサポートするハードウェアが欠かせないものの、従来のコンピューターのように[F2]キーなどを押す手間から解放されそうだ(図18)。
新しいOSの新機能をすべて享受する場合、OSのリリースに合わせて新しいハードウェアを用意するのが望ましいが、現時点でUEFIに関する機能がどのマザーボードで動作検証を行っているのか判断できない。だが、間もなくリリースされる予定のWindows 8 Release Preview登場後はハードウェアの動作検証も行えるため、UEFI搭載のマザーボードや新しいSSDで、一足早いハードウェア環境の構築にいそしんでも面白いだろう。
阿久津良和(Cactus)