タブレット型コンピューター上のOSにタッチ機能は欠かせないため、現在開発中のWindows 8(開発コード名)では、Windows 7が備えたタッチ機能を更に強化している。順当な進化であることは間違いないのだが、同機能は本当にWindows 8が求められる機能なのだろうか。今週もMicrosoftの各公式ブログに掲載された記事を元に、Windows 8に関する動向をお送りする。
Windows 8レポート
マルチタッチ型インターフェースを強化するWindows 8
Windows 8がマルチタッチ型インターフェースを備え、同種のデバイスをサポートしているのは周知のとおり。そもそもWindows 7もマルチタッチ機能を備えているが、対応するディスプレイかタブレット型コンピューターを用意しなければならず、実際のタップ操作を体験したユーザーは多くないだろう。筆者も取材中にマルチタッチ対応ディスプレイを備えたWindows 7に触れた程度の経験しか持ち合わせていないが、一般的なデスクトップコンピューターの設置環境では、ディスプレイの設置場所を考慮しなければならず、使いやすいとは言えないのが現状である。
MicrosoftはWindows XP Professionalに、ペンタッチ機能を備えたWindows XP Tablet PC Editionを2002年にリリースし、その後も同Tablet PC Edition 2005を2005年にリリースするなど、タブレット型コンピューターへのアプローチは以前から行われていた。つまり先駆者の一人ながらも、現在人気を集めているのはiPadやAndroidのようなマルチタッチ型インターフェースに特化したOSである。
タブレット型コンピューターが、デスクトップ/ノート型コンピューターの代替品となりつつある背景もあり、Windows 8はOSのその形を変えつつ、タブレット型コンピューター向けのデザインを重視しているのだろう。サポートするジェスチャーもWindows 7の同機能と同じくパンやズーム、回転といった操作が行える(図01)。
図01をご覧になるとわかるように、Windows 7と違うのは画面下部に現れる「アプリコマンド」や画面右側に現れる「システムコマンド」が加わっている点。また、図にある一本の指や二本の指だけでなく、複数の指を必要とする場面も想定しているため、今後の登場するであろう様々なMetroアプリケーションでのマルチタッチ操作も可能になりそうだ。このほかにもWindows 7で問題となったタッチ操作に関する改良を加えている(図02~03)。
しかし、気になるのは肝心のハードウェアである。現在使用しているタッチ型デバイスがWindows 8でサポートされるか不安に感じているユーザーは少なくないだろう。現在同社では、数多くのコンピューターでテストを行っているが、残念ながら一部のハードウェアは対象から外れるようだ。約50台にも及ぶハードウェアのなかでもThinkPad X220T系やASUSのEP121などは問題なく動作するという。もちろんWindows 8は未完成のOSであり、コンピューターベンダーやMicrosoftが動作を保証するものではないが、興味深い情報であることは確かだ(図04)。
このようにWindows 8の開発は着々と進んでいる。次のバージョンに関する開発も始まり、夏には開発が完了するといううわさも流れているが、ここでタッチ機能を踏まえてWindows 8の展望を確認してみよう。そもそもWindows OSに求める旧来からのファイル管理や操作性と、マルチタッチ型インターフェースは相乗効果が起きるものではない。それだけに従来からWindows OSを使ってきたユーザーにとって、Metroデスクトップやマルチタッチ型インターフェースの強化は、どれだけのアドバンテージを与えるかは疑問だ。
例えばマルチタッチ型インターフェースの強化することで利便性が大きく向上するのであれば、ディスプレイの買い換え需要が発生するだろう。しかし、Windows 7の例を思い出せば答えは簡単。あくまでもWindows 8のマルチタッチ型インターフェースはタブレット型コンピューターやスレートPC向けの機能であり、同種の購入需要の方が高まりそうだ。
Windows OSファミリーという観点から見れば、Windows 8の起動速度やパフォーマンスの向上、ネットワーク接続やタスクマネージャーといった機能面の拡充、USB 3.0のネイティブサポートなど歓迎できる箇所は多い。それだけに異なる操作性を求められることになるスタートボタン廃止が惜しまれる。結局は"慣れ"の問題になってしまいそうだが、ユーザーの使用スタイル変更を求めるWindows 8が成功に至るのか、興味深く注視したい。