BCN アナリスト 道越一郎氏

BCNは1月11日、全国23社2,381店舗の大手家電量販店のPOSデータに基づくPCおよぴデジタル家電製品における2011年の販売動向を発表した。

2011年は東日本大震災という大きな出来事が日本全体を襲ったが、その中でデジタル家電の市場は前年と比べてどのような動きを見せたのか。

年末商戦の結果を踏まえ、薄型テレビ、レコーダー、デジタルカメラといった機器の2011年の販売動向を個別に見ていく。

薄型テレビは大幅な価格の下落で厳しい状況に

2010年末のエコポイントの切り替え、2011年7月の地上デジタル放送への移行と、薄型テレビの買い替え需要の大きな波が過ぎ去り、その反動からか2011年夏以降の販売は低迷し、販売台数は前年比で82.9%、販売金額は58%と落ち込んだ。 販売台数以上に販売金額が落ち込んだ理由は、平均単価の減少によるもの。2010年は7万7,800円だった平均単価が、2011年には5万4,500円と約3割の下落。2011年12月には4万8,300円と5万円を切るに至った。

BCN アナリストの道越一郎氏は「これだけの価格の下落は、低価格戦略を続けるのか、あるいは別の戦略をとるのか、メーカーにとって大きな舵取りを迫られるような変化」と述べる。

メーカー別の台数シェアではシャープがトップ。年末商戦では前年同月比で2倍以上の販売台数となった50型以上の製品で60%以上のシェアを獲得。その一方で、30型未満の小型製品、30型台のボリュームゾーンではパナソニックがシェアを伸ばし、差を詰めている。

左側が薄型テレビ、右側がレコーダの2006年からの販売動向。赤線が平均単価で薄型テレビは大きく下落していることが分かる

レコーダーは堅調に推移

レコーダーも薄型テレビの状況と連動する形で、地上デジタル放送移行の7月に向けて販売が拡大後、秋から落ち込む形となっているが、2011年全体では、販売台数は前年と比べ22%増加、販売金額はマイナス4%のほぼ横ばいという、薄型テレビと比べて堅調な推移を示している。

しかし、この流れが2012年も続くかどうかは不透明だ。その理由はやはり平均単価が下落傾向にあるからだ。「レコーダーの分野はDVDからBD、BDからBDXLと記録メディアの進化によって平均単価を維持してきた面があったが、それが終わりを告げて平均単価が下がってきている」(道越氏)という。

今後機能面でどの程度の付加価値を出していけるかが鍵となるようだ。

デジタルカメラは、ミラーレスモデルの影響で好調を維持

「昨年はカメラにとって受難の年」と道越氏が言うように、2011年はデジタルカメラの販売が伸び悩んだ。

レンズ一体型、いわゆるコンパクトデジタルカメラの市場は、カメラ付き携帯電話の高性能、高機能化やスマートフォンの拡大による影響で年々縮小しているうえに、平均単価も安く消耗戦が続いている。販売台数シェアはトップがキヤノン、次いでパナソニックとなっているが、各社のシェアに大きな差はなく、熾烈なシェア争いを繰り広げている。

「コンパクトデジタルカメラの存在価値というものをどのようにして訴えていくかが、今後は重要になってくる」と道越氏は分析する。

一方、一眼レフやミラーレスカメラなどのレンズ交換型は、「災害の影響はあるが、ベースとしての需要は強く、また新製品も今後続くことからまだまだ勢いは衰えてはいない」(道越氏)としている。

2011年のデジタルカメラ市場はミラーレスが大きな注目を集めた年だった。ニコンやペンタックスが新規参入したのに加え、各社が精力的に新製品を投入した。12月に販売されたレンズ交換型カメラのうち、48.2%がミラーレスモデルとなるなど年末商戦でも存在感を示している。しかし、一眼レフでは新製品の不足やタイの洪水の影響で製品の調達が困難な部分もあり、年間を通じて前年割れする月が目立った。

道越氏は、「デジタルカメラ全体では、2011年は震災や洪水といったイレギュラーな状況で販売金額が落ち込んだが、おおむね堅調といっていいだろう。2012年は盛り返してくるのではないか」とした。

左側がコンパクトデジタルカメラ、右側がレンズ交換式カメラの販売動向。コンパクトデジタルカメラは毎年前年比を割っているが、レンズ交換式は販売台数は前年度並み、販売金額は若干減少となっている

災害の影響はどうだったのか

2011年は大きな災害に見舞われた年だった。しかし、震災の被害が大きい岩手、宮城、福島の3県ではむしろ落ち込みは続かず、テレビやレコーダー、デジタルカメラなどの各製品で前年を上回る販売台数となった。特に薄型テレビやレコーダーは、2012年3月末に延期となった東北3県での地上デジタル放送の開始に向けて、需要が大きく増加。東北3県における2011年12月の薄型テレビとレコーダーの販売台数はともに前年同月比で2倍以上となった。道越氏は「全国の販売台数に対して、東北3県が占める割合はそれほど大きくないが、力強い復興需要がある」と話す。

左側が東北3県で右側がそれ以外の地域の薄型テレビの動向。東北3県では12月に大きく販売台数が伸びている

レコーダーもテレビと連動するように年末にかけて需要が回復している

一方、2011年7月から10月にかけて起きたタイの洪水の影響は、デジタルカメラとHDDの販売台数で2011年後半にかけて大きく落ち込みを見せたが、インクジェットプリンタやPCは前年より上回るなど、こちらも一部の製品を除き、災害の影響は限定的だという。