Mozillaは、既報の通りFirefoxの新バージョン9をリリースした。本稿では、インストールからアドオンまでを簡単に紹介したい。
Firefox 9の新機能
さて、まず気になるのは、新機能である。リリースノートによれば、以下の通りである。
- 型推論を追加し、JavaScriptのパフォーマンスを劇的に向上
- Mac OS X Lionでのテーマ統合を改善
- Mac OS X Lionで2本指スワイプナビゲーションを追加
- JavaScriptを通じたDo Not Track設定の確認が可能
- CSS font-stretchプロパティに対応
- CSS text-overflowプロパティの対応を改善
- HTML5、MathML、CSSなどの標準対応を改善
- いくつかの安定性に関わる問題を修正
- いくつかのセキュリティ問題を修正
この中で、もっとも注目なのは、型推論(TI:Type Inference)が導入されたことであろう。Mozillaによれば、35%以上の高速化が図られたとのことである。JavaScriptは動的型言語といわれ、値の型を知らなければJITコンパイラはその値があらゆる型の場合を想定したコードを生成する。このために、Javaなどの静的型言語と比較すると、実行速度がかなり遅くなる。そこで、プログラムのコード解析と実行時の変数型監視を組み合わせて、実行前にJavaScriptプログラムの型情報を得るものだ。型情報が得られたことで、JITコンパイラは効率的にコードが生成できるのである。実際にどの程度の高速化が達成できたかを後ほど確認してみる。
Firefox 9のインストール
すでに、Firefox 8がインストール済みならば、Firefoxメニューの[ヘルプ]→[Firefoxについて]を開く。更新が自動的に開始されるので、[更新を適用]をクリックする(図1)。
初めて、Firefox 9をインストールするならば、Firefox 9のページからインストーラをダウンロードする(図2)。
[無料ダウンロード]をクリックし、保存したファイルをダブルクリックして、インストール開始する(図3)。
画面の指示に従い、インストールを進めよう。特に、難しいことはないであろう。起動したFirefox 9は図4となる。
今回のバージョンアップでは、ユーザーインタフェースの変更はなかった。
高速化したJavaScriptエンジンを試す
同じ環境に、Firefoxの8.0.1と9.0をインストールし、ベンチマークをとってみた。SunSpiderとKrakenの2つである。SunSpiderは、WebKitプロジェクトが提供するベンチマークで、現在では、実際のWebページとはやや乖離しているとの指摘がある。一方、Krakenは、Mozillaが開発したもので、より現実的な負荷に近いといわれている。ただし、いずれもあくまでもベンチマークであり、ブラウザの性能を表すものではない点に注意いただきたい。以下、ベンチマーク結果である。
改めてまとめると、
/ | Firefox 9.0 | Firefox 8.0.1 |
---|---|---|
SunSpider | 296.1 | 301.8 |
Kraken | 4851.1 | 6856.8 |
となった。Karkenの結果は、約30%の高速化となった。一方、SunSpiderでは、速くなってはいるが、ほとんど変わらないといえよう。2010年4月にリリースしたものだが、進歩の速いWebブラウザの世界では、もはやベンチマークとして意味をなさなくなっているのかもしれない。Krakenの結果は、冒頭にあったMoziilaの発表した数値に近い。このあたりを根拠としていることがうかがえる。このようなベンチマーク以上に、実際にFirefox 9.0を体験してみるとわかるはずだ。これまで、重く感じたサイトも速いと感じられる。