グラフィックに関わるクリエイターを中心に、広く活用されているワコムのプロ用ペンタブレット「Intuos4」。このIntuos4はどのように誕生したのだろうか? ワコムの開発陣の貴重な証言から、その誕生の秘密を探る。これまで、「初代Intuos」から「Intuos3」までの開発秘話を紹介してきた。今回は現行機種である「Intuos4」の開発秘話をお送りする。
「Intuos」シリーズ開発の歴史
「初代Intuos」
「Intuos2」
「Intuos3」
なお、歴代の「Intuos」シリーズの開発秘話を披露してくれたのはワコム 営業本部プロダクトマーケティング部プロダクトマーケティングGr.マネージャー 田中尚文氏と、ワコム プロダクト統括開発部ジェネラルマネージャー 福島康幸氏。両者共に「Intuos」シリーズ開発当初から製品開発に参加している。
電子ペンのON荷重と筆圧機能を飛躍的に向上させた「Intuos4」
Intuos3においてワコムの開発陣は、最高のペンタブレットを開発したという自負を持っていた。
「ベストの事はやったと思います。ユーザーからも『これで完成形だろう』という声もありました。『次はどうするんだろう?』という思いは、私たち開発陣にもありました」(福島氏)
Intuos3からIntuos4発売までは、4年半の期間がある。ワコム開発陣はこの間に、さらなる高みを目指しIntuos4開発に着手した。Intuos4で開発陣が目指したのは、「電子ペンの更なる機能向上」、「作業効率の向上」、「カスタマイズ性の向上」である。
「Intuos4では電子ペンのON荷重と筆圧機能が飛躍的に向上しました。基幹部品のチップセンサーとペンICを新たに開発し、部品レベルでIntuos3とは完全に別物になっています。チップセンサーと新たなICの開発により、電子ペンの消費電力も約70分の1になりました」(田中氏)
「電子ペンでタブレットに触れた時の感度、ON荷重が向上しています。Intuos3までの電子ペンは約10グラムの荷重で動作したのですが、Intuos4の電子ペンでは、1グラムでも動作します。これにより、Intuos3とは比較にならないほど繊細な書き味を実現しています」(福島氏)
ON荷重が敏感になったことで、実際に描くユーザーは、どのような変化を実感できるのだろうか。
「マンガやイラストなどを描かれるユーザーにとって、作画時のペンの入り/抜きは大切です。ただ、エンジニアの観点から言うと、1グラムのON荷重がユーザーの皆さんに実際に理解していただけるか疑問だったのですが、製品をリリースすると大きな反響がありました。ユーザーの皆さんの感性が、我々の想像以上に繊細で、非常に嬉しかったですね」(福島氏)
「筆圧を検出するチップセンサーというパーツが電子ペンには入っているのですが、この性能が向上したおかげで、より繊細な入り/抜きを表現できるペンになりました」(田中氏)
Intuos3を遥かに凌駕したIntuos4の電子ペンだが、この開発には苦労も多かったようだ。
「チップセンサーもペンICも、改良ではなくまったくの新規開発と言っていいものでした」(福島氏)
Intuos4では、ON荷重が繊細になっただけではなく、筆圧も2048レベルとなっている。これは、Intuos3の倍の数値だ。
「筆圧レベルは、描かれた線の筆圧階調のきめ細かさと思ってください。電子ペン側から筆圧情報をデジタルデータとしてタブレット本体に送るのですが、筆圧レベルが2倍になったことで、本来はデータのデジタル化にも、送信にも倍の時間がかかります。ですが、Intuos4では、新しいペンICを開発することで、さらに大幅な低消費電力化も実現しています」(田中氏)