iPod touchからApple TVに動画をストリーミング。対応するデジタルメディアはApple TVがサポートするメディア形式になる

iPadでマルチタスクもうれしいが、個人的には「AirPlay」があるからiOS 4.2を心待ちにしていた。で、使ってみたら、すこぶる便利! デジタルコンテンツ(動画/音楽/写真)の普段の使い方や管理方法の違いで満足度に差が出てくるとは思うが、すべてのiOSデバイスユーザーそしてiTunesユーザーに新たなコンテンツの楽しみ方を加わえてくれる機能だと思う。

AirPlayは、iOSデバイスまたはiTunesからデジタルコンテンツをApple TVやAirPlay対応機器にストリーミングする。特に第2世代のApple TVユーザーにとっては、AirPlayが利用可能になったことで同端末のすべてが体験できるようになったと言えるぐらい重要な機能だ。

AirPlayをサポートするiOSデバイスはiPad/ iPhone 4/ iPhone 3GS/ iPod touch (第2世代以降)。第1世代のApple TVはオーディオストリーミングのみ。iTunesからの動画ストリーミングにはv10.1以上が必要。

使い方は至ってシンプルだ。AirPlay対応端末やiTunesが自動的にネットワーク内のApple TVやAirPlay対応機器を検出する。AirPlay対応アプリケーションで動画や音楽を再生したり、写真を表示すると、プレイヤー画面にAirPlayボタンがあらわれる。タップするとストリーミング先のリストがドロップダウンしてくるので、例えばApple TVを選ぶと、Apple TVが接続しているTVに再生が切り替わる。

iPadの「ビデオ」のAirPlay選択

Apple TVに再生が切り替わると、iPad上に「このビデオは"Apple TV"上で再生中です」というメッセージが表示される

iPadの「iPod」のAirPlay選択

iPadの「写真」のAirPlay選択

これまでもオーディオのみAirTunesを使ってiTunesからストリーミングできたが、AirPlayでiOSデバイスからのストリーミングも可能になり、より自由に音楽を楽しめるようになった。例えばiPhoneでポッドキャストを聴きながら帰宅し、番組の途中で着いてしまったとしても、自宅のスピーカーに切り替えれば、ヘッドフォンを外してそのまま聞き続けられる。家中にAirPlay対応スピーカーを置いておけば、指先の操作だけで移動する先に音楽を飛ばせる。ちなみにわが家ではバスルームにAirMac Expressを接続したスピーカーを置いている。またAirPlayは動画と写真もサポートするから、映画を見ている途中で降車駅に着いてしまっても、自宅に戻ってApple TVに飛ばせば、同期することなく停止した場所から視聴を続けられる。このようにコンテンツを楽しむ場所を手軽に切り替えられるのがAirPlayの最大の魅力である。

AirPlay時代になって、iTunes (10.1以上)からもビデオストリーミングが可能になった

iTunesでは複数のスピーカーを選択してコントロールできる

今月11日にオープンしたiTunesの映画ストアを使う上でもAirPlayは重要だ。HD映画をサポートするiOSデバイス(iPhone 4/ iPad/ 第4世代iPod touch)でレンタルした映画は、パソコンや他のデバイスに移動できない。せっかくHD版の映画を借りてもモバイルデバイスの小さな画面でしか視聴できなかった。それがAirPlayによってTVにストリーミングできるようになった。「トイ・ストーリー3」など、パソコンのiTunes StoreでのレンタルはSD版のみで、iOSデバイスやApple TVのiTunesでHD版をレンタルできる作品は多い。そうなると、もしモバイルとTVの両方でHD版のレンタル映画を視聴したければ、iOSデバイスで借りてAirPlayを組み合わせるのが唯一の方法になる。

パソコンのiTunes Storeで「トイ・ストーリー3」のレンタルはSD(標準画質)版のみ

iPadのiTunesではHD(高画質)版をレンタルできる。おそらくパソコンよりもiOSデバイスの方がセキュアというコンテンツ提供者側の判断なのだろう

プライべート保護という点でもAirPlayに注目したい。Apple TVからパソコン内のiTunesライブラリにアクセスする主な方法はホームシェアリング(もう1つはRemoteアプリの利用)になる。ホームシェアリングだとライブラリのすべてにApple TVからアクセス可能になり、特定のプレイリストなどに制限できない。家族やルームメイトに見られたくないコンテンツがあっても隠せないのだ。AirPlayを使えば、見せたいコンテンツだけをTVにストリーミングできる。この仕組みは、昨今話題のWeb対応TVのあり方にも一石を投じる。例えば「WebのすべてをTVでも」がGoogle TVの訴求点だが、複数の人が見るTVの大画面に個人の電子メールアカウントやSNSアカウントを表示するのに抵抗がある人も多いと思う。AirPlayとApple TVの組み合わせならば、電子メールなどは手元のiPadで確認し、共有したい動画や写真だけTVに飛ばすというように、プライべートと共有を明確に切り分けられる。

Apple TVではホームシェアリングを通じてパソコンのiTunesライブラリにアクセスできるが、一部のコンテンツに制限することはできない

Google TVではFacebookもTVから利用できるが、リビングルームでははたして……

マルチタスクの意外な利便性

使っているうちに、意外な利用方法に気づくのは楽しいもの。AirPlayの場合、動画とマルチタスクという発見があった。iPadやiPhoneで音楽の再生中にメールなどを操作することは可能だが、動画を見ながら他の作業はできない。ディスプレイは1つなのだから当然だ。しかしAirPlayを使うと、iPad内の動画をTVに映しながら同時にiPadで文書作成なども行える。映像のメモ取りに便利だ。またiPadで音楽をバックグラウンドにWebブラジングなどをする場合でも、iPadではなくAVシステムで鳴らしたほうが快適だ。

iPadから動画をTVにストリーミングしながら、マルチタスクで他の作業も進められる

DENON、Marantz、Baowers & Wilkins、JBL、iHomeなどが、AirPlayワイアレステクノロジのハードウエアパートナーとなっており、今後AirPlay対応の様々なデバイスの登場が期待できる。またiOSアプリのAirPlay対応も今後の注目点の1つだ。残念ながら現状でAirPlayを満足に利用できるのはiOSの標準アプリばかりで、サードパーティのアプリではAirPlayボタンがあらわれてもオーディオのみだったりする。ただ、うまく活用すれば、iOSアプリとTVの組み合わせという新たな可能性が開けるだけに、今後の展開が楽しみだ。同様にMacにおいても、iTunes以外にAirPlayの世界が広がってほしいと思う。サードパーティのアプリケーションは難しいかもしれないが、Mac OS XやAppleの他のアプリケーションではサポートされてほしい。

MLB.com at BatのiPadアプリではオーディオストリーミングのみ。同アプリのビデオコンテンツをTVで視聴できたら大ヒットだと思うのだが……

iPadのYouTubeアプリはAirPlayフルサポート。でも、Apple TVもYouTubeは備えている

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