【レポート】
映画向けCG制作は、これからも恐らく「リアルタイム」になることはないだろう。
なぜならば、さらに上の極みを目指して、より高度な技術を導入していくからだ。
しかし、GPUのような圧倒的なデータ並列コンピューティングパワーの導入で、そうした、さらに先の高度な技術、すなわち、より複雑な計算を短縮することで、リアルタイムは無理でもインタラクティブにすることはできる。
ILMは、技術先行型の集団に思えるが、実際には「行いたい表現」が先にあり、それを現実的に実行できる手段を探す中で、最新技術に行き当たっているだけなのだ。
今期はそれがたまたまGPUだった……ということなのだろう。
しかも、ILMは技術信奉者ではない。
この基調講演中にも繰り返し訴えられていた「アーティストと監督主導の制作スタイルを良しとする」姿勢は首尾一貫しており、「高度な技術は"インタラクティブ"に扱えて初めて一人前」という点を信条としていることが伝わってくる。
なお、現在、ILMでは、その映像制作における「インタラクティビティ」をさらに高次元なものにするために、ルーカスフィルムのゲーム部門であるルーカスアーツ社とのコラボレーションを図り、インハウス及び関連スタジオ向けのビジュアライズツールとして「zViz」を開発して運用しているという。
「zViz」はゲームコントローラを使ってインタラクティブにバーチャルセットを構築、カメラパスを設定、キャラクタやメカなどのオブジェクトを配置、動かせるツールで、映画の制作ではプリビジュアライズ目的(*1)、ゲーム制作ではシネマティックシーン(ムービーシーン)の制作に役立てているという。
(*1)プリビジュアライズとは映画制作の初期段階にシーン設定やカット割りを検討するために作成される動く絵コンテのようなもの。監督が頭に思い描くその映画のコンセプトやシナリオ進行などを、制作スタッフ間で共有し、議論しやすくするために制作される。
現在は、ある意味、実験的なプロジェクトともいえる「zViz」だが、ここへ、より高度なシミュレーション等までを導入できるようになれば、映画制作のパイプラインの多くの部分を、こうしたインタラクティブツールで実現できるようになるかも知れないし、また、映画ゲーム化作品の制作の高効率化にも繋がるかも知れない。
映画向けCG制作のリーダー的存在のILM、そしてGPUテクノロジのリーダー的存在のNVIDIAとのコラボは、まだ始まったばかりだが、業界全体に影響を与えるまでに、そう時間は掛からないはずだ。
(トライゼット西川善司)
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