テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第197回は、10月30日に放送されたテレビ東京のバラエティ番組『あさモヤさまぁ~ず2』(毎週土曜5:30~)と『モヤモヤさまぁ~ず2』(同23:00~)をピックアップする。

今秋から日曜21時台だった『モヤさま』が土曜23時台に移動し、さらに土曜朝に『あさモヤ』がスタート。今回は『あさモヤ』が“北新宿”を町ブラ、『モヤさま』が“浦和周辺”を街ブラしたのだが、「朝と深夜の1日2回」という異例の放送になったことで、どんな変化が生まれたのか。

  • さまぁ~ずの大竹一樹(左)と三村マサカズ

    さまぁ~ずの大竹一樹(左)と三村マサカズ

■早朝に店のない町をブラブラ歩く

まずは早朝5時30分から『あさモヤ』がスタート。「行く必要も理由もない、名も知れぬ超ド級なマイナーな“町”をブラブラするあさモヤ。小さな町をほっつき歩く朝っぽい爽やか番組なんだよね」というナレーションが聞こえてきた。

前回から、さまぁ~ずと田中瞳アナがブラブラしているのは、埼玉県鴻巣市の北新宿(きたしんしゅく)。半径約450mの住宅と緑ばかりの町だが、「お店が見つからず番組が成立するか不安だったんだけど、一般のおうちにピンポンしたり、謎の穴に叫んだりしてたら一週目があっという間に終わってたんだよね」というナレーションが流れ、「なんだかんだでとれ高満載」というテロップが表示された。

しかし、スタート早々から広々とした道路なのに車が一切通らず、「あんまりないよね。こんなシーン」とつぶやく大竹。想像以上のゆるさに、「金曜深夜時代の“モヤモヤ”が帰ってきたかも」と感じた人も多いのではないか。

3人はタイヤのホイールに色を塗って外壁に飾ってある家のインターホンを押すことに。「一般のお宅にお邪魔する際、インターホンで怪しまれないようにするため」に番組名などが書かれた“ピンポンうちわ”を見せると、47歳の主婦が登場。さらに「ホイールキャップが大好きすぎて、一緒にお風呂に入って、毎日一緒に寝ている」という8歳の小学2年生が現れた。

少年は「まぶしいな~」といきなり日傘を要求して笑わせると、おもちゃ感覚で171個も集めたというホイールキャップを見せながら熱弁をスタート。ホイールキャップをハンドルやトレーに見立てた三村マサカズのボケもすべてスルーして、さらなる笑いを誘った。

最後は、「いつまでもホイールキャップ好きでいてくださいね」というナレーションが流れ、母子で手を振って見送るいつも通りのさよならシーン。高齢層が多いであろうリアルタイム視聴者の年齢層と、ブラブラする町を考えると、こんなほのぼのとしたムードが『あさモヤ』の世界観になっていくのだろうか。

■出演者も作り手も「朝」を都合よく利用

次に訪れたのは、区画整理の道路拡張によって2階のドアがむき出しになってしまった家。三村が2階に上がっておそるおそる顔を出し、ダチョウ倶楽部のお約束ギャグ「押すな押すな」のアシストを家主に求めるが、当然やってもらえない。さらに、高所恐怖症の田中アナは「2階のドアを開けてさわやかな番宣を」とムチャぶりされたが、こわばった表情でうまくできなかった。

その後3人は川を見つけて「葉っぱレースをやろう」という話になるが、三村が朽ち果てそうな木のベンチに座って「超~ラク」、大竹一樹も「しばらく動けないな」と休憩モードに突入。三村がくつろぎながら「これを朝見てるんだよね。朝見るかなあ……」と切り出された大竹も「朝に見る感じを体感しなきゃいけないとダメなんだよね」と返し、さらに三村は「朝だったらこれで全然もっちゃうみたいな」とテキトーにまとめようとした。

葉っぱレースに使う葉っぱも目の前にあるものをテキトーに選び、レースも3枚まとまってしまう形になり盛り上がらず。「世紀の泥仕合だった」「朝は流れている葉っぱの画でいい」というテロップが表示され、大竹が「朝だから。朝ってこうだから」とオチをつけた。

番組の締めくくりは、「地元民にはおなじみ」という牛乳会社のトラックを見つけて電話し、「懐かしの瓶牛乳を3人で飲む」という何とも朝っぽい映像。来週も北新宿の続きであることを予告しつつ、夜の放送をしっかり宣伝して番組は終わった。さまぁ~ずもスタッフサイドも、朝番組でのあり方を求めるような素振りを見せつつ……結局考えるふりだけしてテキトーで終わらせるというイメージは、ファンの好きな深夜時代の『モヤさま』そのものかもしれない。