今日向かったのは、東京メトロ日比谷線「神谷町」駅の「そば庄」。都内を代表するオフィス街のひとつで、隣駅が六本木とは思えないほど落ち着きのある街だ。駅前の住所は虎ノ門になり、有名企業のオフィスビルや大使館などが立ち並ぶ。そば庄は、そんな神谷町駅の4番出口の改札を出てすぐ。メトロシティ神谷町のゲートをくぐる手前に店を構える「立喰い」兼「立呑み」のそば屋である。

  • 「冷しおろしそば」(500円)

伺ったのは午前9時過ぎ。ちょうど通勤ラッシュの時間にぶつかってしまった。偽りなく筆者の2倍の速度で歩く人の波について行けず、ひとりだけ目的地が違うものだから、何度かぶつかりそうにもなった。こんな時間に、そばを食べるためだけに神谷町に来てすいません。

丁寧な接客が心地いい一軒

券売機は入口と店内にそれぞれ。商品写真も周りに並ぶ。天ぷらやイカ・ちくわ天、月見や山かけ、カレーなどごく一般的なラインナップだ。夏の足音が日増しに大きくなる今日この頃、というわけで久しぶりに冷たいそばを注文。

「冷しおろしそば」(500円)のボタンを押した。店内は、入って正面に立ち食い台と背の高いスツール付きのカウンター。左手側に厨房と2人がけテーブル(こちらもスツール)がある。この時間、相客はゼロ。店のオヤジさんは3人。アイドルタイムなのか、仕込みのネギを刻む音が響く。

物腰が柔らかい「いらっしゃいませ」の声。オフィス街の飲食店は、丁寧な接客の店が多い。「悪事千里を走る」とは言わないが、少し感じの悪い店だったりすると伝播するのも早いのかもしれない。客はいなかったが、完成までには2分ほど待った。スピード重視ではなく(と言っても2分で十分早いが)、丁寧な仕事をしているのがわかる。

爽やかな喉ごしの『冷やし』は夏にぴったり

冷たく〆られたそばの上にワカメと小口切りのネギ、程よく水気を絞った大根おろしが乗ったシンプルな一杯。端にワサビが少し多めに添えられている。麺のコシはしっかり。ぬめりなく、スルスルっと喉越しよく、濃いめのかけツユによく絡んでいる。おろしは辛味がほとんどなく、むしろ甘い。ツユに溶かしてもよし、そのままそばと口に運んでもよし。少ないが、ワカメのコリッとした食感は楽しく、ワサビでピリッと変化をつけるのも実に夏らしい気分になる。

  • 東京メトロ日比谷線「神谷町」駅にある「そば庄」

仕事でもなければなかなか下車する機会のなさそうな駅ではあるが、地上に出ず、階段の昇り降りも最小限でありつけるのはありがたい。冒頭にも書いたように17時30分からは「ほたる」と名前を変えて立ち飲み居酒屋へチェンジ。夕方の賑わいも気になるところだ。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。