よく男性から聞く恋愛の悩みに、

「彼女はイヤと言わなかったのに……」「ちゃんといいかどうか聞いたんですが、Noとは言われなかったんです」から、はじまって、

「付き合ってくれるのかどうかいつまでたってもわからない」「相手の気持ちがよくわからない。いったいどうすればいいのですか?」

というのがあります。

ちょっと抽象的すぎるので、具体的なエピソードをあげてみます。


某製薬メーカーで働くAくん(26才)は、会社の同僚Kちゃん(26才、女性)と飲みにいった際、友だちを連れてきてもらいました。その友人は、Nちゃん(26才、某電機メーカー勤務)といって、澄んだ目をしたAくんの好きなタイプの……とてもかわいい女の子でした。

Nちゃんがどんなふうにかわいいかというと、Aくんの同期で友人のKちゃんと比較してみる(失敬な!)のがわかりやすいかと思います。

たとえば、Kちゃんは、同期どうしで「飲みに行こう」となったとき、

「私、○○が食べたい」だとか「××へ行ってみたい」だとか、すぐに自分の意見を行って、仕切りたがる傾向があります。

また、お店についてからも、

「はい、ビールの人、手をあげてーっ」と、みんなの意見を聞いたり、「魚貝のサラダと唐揚げと、ピリ辛冷奴と……」と、次々に自分の食べたいものを注文したり、何事にもアグレッシヴなタイプといえます。ところが、そんな彼女の友人だというNちゃんは、

「あっ、それじゃ私も同じものを……」とか、「ええと、何でもいいかな。……あっ、私もKのを少し分けてもらうね」

と、控えめというか受け身というか、相手に合わせるタイプなのだそうです。

Kちゃんがビールをガバガバ飲み、食べ物をたくさん食べている間、Nちゃんは一杯のビールで顔を真っ赤にして、サラダやお魚や豆腐など……あっさりしたものばかりを少しずつ口に運んでいます。

(か、かわいい!)イロイロな意味で、すっかりNちゃんのことが気に入ってしまったAくん。彼も、Kちゃんほどではありませんが、わりと何事にも積極的なタイプなので、すぐに、

「ケータイ番号、教えてくれる? 今度ふたりでどこかへ行かない?」とNちゃんを誘ってみました。すると、NちゃんはKちゃんのほうをチラッと見ながら、

「あっ、私でよければ……」

とOKしてくれました。Kちゃんは、

「やっぱり。Aは絶対にNのこと気に入ると思ったんだよね」

と、二人を会わせた自分の直感をうれしそうに自慢するのでした。

というわけで、それから3週間後、Aくんは、Nちゃんとふたりで出かけることになりました。どうして3週間も間があいてしまったかというと、どこへ行くかなかなか決まらなかったからです。Aくんが、

「動物園へ行こうか?」

と言うと、Nちゃんは、

「いいですね」

と最初はOKするのですが、約束の前日になると、

「明日は雨みたいですよ……」

と、言います。

「雨かぁ、それじゃ、水族館かどこかへ行く?」

「いいですね」

と行き先を変更するのですが、当日になると「雨で体調を崩してしまって……。熱があるので今日はごめんなさい、行けそうにありません」

とメールがくる。そんなこんなで、ふたりで会うまでに3週間もかかってしまいました。けっきょく、いちばん最初の約束どおり、動物園へ来たふたりですが、Aくんは熱心に動物を見るのに、Nちゃんは気もそぞろでサッサと先に歩いていってしまいます。察しのいいAくんは、

(そうか、動物園、水族館、博物館系は通り過ぎるだけのタイプかも)

と気づき、Nちゃんと歩調を合わせて一緒に歩くようにしました。

思ったよりも早く動物園を出ることになり、昼食を食べようと、

「何が食べたい?」とAくんが聞くと、

「あっ、何でもいいです」

「あっさりと、こってりは?」

「……本当に、どっちでもいいです。Aさんは、何か食べたいものありますか?」

とNちゃんは答えます。Nちゃんが何も言わないので、近くにある有名なラーメン屋へ連れていくと、Nちゃんは、こってり系のスープにむせ、食べるのにも時間がかかり、とてもつらそうにしていました。

(まずい、いくらなんでも自分の好きにしすぎちゃったかな)

と反省してその日は彼女と別れたAくん。ところが、また、Nちゃんをデートに誘ってみると、

「行きたいです」

とOKのメールを送ってくるのです。ところが、またまた行き先であれこれやりとりをして、それでも行くところが決まらず……。

(うーん。彼女はいったい全体、自分に何を求めているのだろうか。そもそも、オレといて楽しいと思っているのだろうか? 控えめなところはかわいいけど、ふたりきりなのだからもう少し自分の意見を言ってほしい)

と困惑するAくんなのでした。


このように、自分の意見をあまり言わない女性もたまに……もしかするとけっこういるかと思います。考えてみると、若い頃は私も、あまり自分の意見を言わずに、男の子と付き合っていたかもしれません(いつ人格が変わったかというと、たぶん28才ぐらい)。

もともと、誘われるとNoと言えない性格、相手に合わせることに慣れている、自分の意見をハッキリ言えない性格……が重なると、男の子からみて、

「楽しいんだか、楽しくないんだかわからない」「何を考えているのかわからない」「どういうつもりなのかハッキリしない」女の子になってしまうようです。

相手を思いやり、相手からどう思われているかを気にかけてしまう心やさしい男性なら、彼女の本心を知りたいと考えるのもごもっとも! です。

そんな彼女にはどのように対処すればいいかというと「好き」とか「付き合ってほしい」とか、正直に自分の気持ちを伝えるのがいちばんです。

Nちゃんのような女性は、自分の意見をあまり言わないけれど、聞かれたことには答えるタイプ思いますので、きっとYesかNoかは、本人に教えてくれるはずです。

女性にたくさん「好き」や「かわいいね」を言ってあげると、相手はどんどん自分に自信をもてるようになります。そうすれば、イヤなものはイヤ、こうしたい、ああしたいと彼にだけは言えるようになるかもしれません。そうなると、ハッキリものを言う女性になってしまって……ということもあるかもしれませんが、彼女の心を開いたのは自分だけということで、男として自信を持ってほしいです。


酒井冬雪です。東京が……いい感じですね。こんな状態が長くつづいてくれると、私の眉間のシワがこれ以上深くならずにすみます。それはさておき、もうすぐ4月です。新入学、新社会人のみなさん、おめでとうございます。新しい環境に慣れるまで、がんばってしっかりごはんを食べ、きっちり眠ってください。健闘を祈ります!