「Intuos4」の最大の魅力は豊富に用意されたオプション機器。今回は前回に引き続きオプションペンの中から、クラッシックペンとインクペンを紹介する。

軽量細身のクラッシックペン

前回紹介した標準のグリップペンは、一般的な筆記具と比べるとかなり太めのデザイン。グリップ付きのボールペンなどが人気のように、長時間描くのに疲れにくいデザインだ。しかし、手が小さい人や、普段色鉛筆など軽量な筆記具を使っている人にとっては、太く重く感じ、かえって疲れてしまうかもしれない。そんな人にお勧めしたいのがクラッシックペンだ。

クラッシックペンは、旧「FAVO」(f-430、f-630)のペンのデザインの復刻版。まるでコカコーラのボトルのような、セクシーな曲線が印象的な細身のペンだ。このペンの大きな特徴はグリップ部分が非常に細く軽量なこと。ペンの長さは標準ペンとほぼ同じだが、その太さは一番細い部分と同じ位置で比較すると、標準のグリップペンの約2/3、極太グリップと比べると半分の直径しかない。重さも標準ペンの17gに対し、11gとこちらも標準ペンの約2/3。実際手でもってみると、はっきりと「細い」「軽い」と感じることができる。

軽量細身のクラッシックペン。細い部分の直径が10mm。手の小さい人にオススメだ

ペンの表面は標準ペンのようなラバーではなく、樹脂にマット塗装。そのため、持つと硬い感触があり、サラサラとした肌触りだ。やや滑る感じがするが、軸のカーブのおかげで安定したホールド感がある。標準ペンのラバーの感触が嫌な人には、この表面仕上げは快適だろう。

ペンとしての性能はグリップペンとまったく同等で、筆圧、傾き検知に対応。消しゴム、サイドスイッチも利用可能。芯も標準とおなじ4種類がついてくるので、様々な描き心地にカスタマイズできる。標準のペンが手に合わないと感じている人には代替ペンとしてイチオシだ。ただし、標準ペンで可能な、サイドスイッチの取り外しがクラッシックペンではできない。もっともクラッシックペンのサイドスイッチは標準ペンよりもでっぱりはひかえめで、それほど気にはならない。スイッチの機能が不要な場合はドライバでオフにできるので、さほど問題はないだろう。

付属スタンドは「Intuos3」に付属していたのと同じ台形タイプのもので、Intuos4のスタンドと異なり、芯を収納しておく機能はなく、芯抜きも付属していない。標準のグリップペンのスタンドを流用しよう。

実際に描けるインクペン

「インクペン」は見た目はクラッシックペンとほとんど同じデザインだが、芯に実際に描けるボールペンを使うことができるのが大きな特徴のペン。本体の上に紙を置いて、実際に絵や字を描いていくことで、パソコン上でも同じ筆跡が得られるというわけだ。

インクペンは見た目はクラッシックペンとほとんど同じだが、芯の規格が全く異なる。標準のグリップペンの芯は流用できない。

インクペンは「Intuos2」時代に製品化され、当時は紙に書くのと同時にタブレット入力できるペンとして人気だったが、タブレットPCや、液晶タブレットが手が届きやすい価格になっている現在、インクペンの必要性はあまりなくなってきている。現在メーカーが想定している用途は主に電子伝票などの業務用途。とはいえ、手元を見ながら描けるペン、タブレットユーザーなら気になる存在だ。

実際に使ってみると、当たり前だが手元を見ながら描けるのはやはり快適。精度が高く、盤面と画面でズレが生じることもない。通常のスタイラスペンだと、かなり慣れていてもきれいな円、水平、垂直をちゃんと描くのにはそれなりに緊張するが、手元を見ながら描くインクペンではそのようなストレスは一切なく、描くことに集中できる。また、通常は画面の表示を拡大しなければ書きにくいような小さな文字を書いても、画面上でもほぼ正確に再現される。

インクペンで描いたラフスケッチ。右が実際に紙の上に描かれたもののスキャンデータ、左「がComic Studio」上に同時に描かれたデータ。紙上では約4cm四方の小さな絵だが、かなり忠実にデータ入力されているのがわかる

手元で実際に線が描かれるので、トレス(なぞり書き)が楽に出来るのも大きな魅力。「Illustrator」や「Flash」などベクター系のアプリケーションで使えば、伸縮自在の線画データを手早く作ることができる。

Flashの鉛筆ツールでクルマの写真をトレスしてみた。編集が楽なベクターデータの線画イラストはスキャンで作成することができない。トレスが楽にできるインクペンが威力を発揮する

また手元を見て書ける利点として、定規が使えるということがある。円を書くためのテンプレートや、曲線を書くための雲形定規などを使って線がひけるのは大きな魅力だ。

ただし、ボールペンであるデメリットもある。まず、筆圧検知をあきらめる必要がある。ペンの性能としては筆圧検知に対応しているのだが、手元で書ける線は一定の太さ。どのような筆圧になっているかは、画面を見なくては確認できないので筆圧のコントロールが事実上不可能なのだ。メニュー選択やドラッグ操作でも、紙にインクが付いてしまうので、各種操作用に他のペンやマウスとの併用が必須。また、手元だけを見て書くと、しらないまにメニューバーやスクロールエリアなどの操作エリアにペンが入ってしまい、思わぬ誤動作を招くことがある。特に画面のスクロールを一度してしまうと、手元の紙と画面の位置をふたたび正確に合わせることが困難。「PhotoShop」のフル画面モードや、「ArtRage」など、フル画面で描けるアプリケーションと併用するのがいいだろう。

交換ペンはボールペン芯(黒)の他にポリアセタール芯(グリップペンの標準芯)が付属していて、芯を取り替えれば通常のスタイラスペンとしても利用できる。ただしこれらの芯は非常に長く、グリップペンをはじめ、他のペンとは互換性がない。フェルト芯、ストローク芯なども用意されていない。また、サイドスイッチと消しゴムスイッチはついていない。

かなり特殊なペンだが、手早くラフを描く作業や、トレス作業など、工夫次第で面白い使い方ができるペンだ。

次回はアートペンなどのオプションペンを紹介していく予定だ。

Illustration:まつむらまきお