この前、QAサイトで恋愛相談を見ていたら、「彼と一緒に酒を飲んでたら楽しくて飲み過ぎてしまい、酔っぱらって醜態を見せたら振られてしまった」という相談があった。「あんな姿を見たら、もう女とは思えない」とか言われたそうだ。それって、女からしたら「身長180cm未満なんて男じゃないわ」とか「年収1,000万以下だなんて、もう男だとは思えない」とか言われるのと同じ感じ。要は「てめえ、なに夢見てやがる」だ。

まー、若いうちは仕方ないんだろうけど、女になにか多大な期待を抱いていると、こういうことになる。いくら普段ピンクのフリフリ着てたって、生き物なんだからゲロだって吐くこともあれば、う○こも出るんだよ。生きていれば、いいところばっかり見せられるわけじゃない。女に甘ったるいいい夢見させてもらいたいなら、アイドルとかアニメにしなさい。彼らは滅多なことでは失敗をしないはずだ。

少女漫画が女のバイブルとしてこよなく愛されるのには、こうした女の失敗の数々や、女なら誰もがひっそり悩んでいる事柄がギッシリ描かれているからだ。そしてそうした悩みを、男が見事に解決してくれたりしてくれるから、少女漫画の男キャラはかっこいい。間違っても「醜態を見せられたから嫌いになった」などと、とぼけたことを抜かさないのだ。

『ホタルノヒカリ』は、ドジっ子主人公・蛍のお話である。蛍はひょんなきっかけで(それはもう本当にひょんな感じで)、会社の上司・高野部長と同じ家に住むことになる。と同時に、職場の若者・手嶋くんと付き合い始める。というこのシチュエーション、白壁チューとか男子の大声告白とかと同様、女向け漫画の王道になりそうだ。要は、非の打ち所がないくらいすばらしい設定なのだ。

一緒に住んでいる高野部長は、恋愛対象ではないので、かなりだらしないところが見せられて楽ちんだ。その上、歳がかなり上だから、いろいろ話も聞いてくれて理解がある。グダグダうるさい小言を言われようとも、「どんなに未熟でも許されること」「いつもの自分をさらけ出せること」によって精神的安寧をここで得られるわけだ。

でも、それでは心にハリがない。例えどんなにときめき合った男女でも、一緒に住むうちに、だんだんと馴れ合って家族化していってしまうもの。結婚した主婦が改めてジャニーズにはまるのと同じで、女はいくつになってもときめきが欲しいのだ。体ん中からなんかいいホルモンが出るらしいし。で、お外でめいっぱいかっこつけてドキドキを楽しむ相手が手嶋くんなのである。

どうせドキドキ恋愛している相手なんかとは、心の交流なんかできないわけで、「いいとこみせられなかった」とか「チューしちゃった」とか、アップダウンが激しい。こういうドキドキって楽しいっちゃ楽しいけど、やってる最中は結構辛いもの。

それを癒してくれるのが、一緒に住んでる高野部長なのだ。リアルな世界では、盛り上がってる最中の恋愛相談なんか、鬱陶しくて友達もよう聞いてはくれないし、かといって親に話すわけでもないし、割と自分で解決しなければならないことが多い。でも、家に帰れば、一緒に酒を飲んで語り合える男がいるのだ。しかも無駄にサカって襲ってきたりしない安全パイ。このシチュエーションだけで、女の求めるものすべてが満たされると言っていい。キャラ設定が違うだけで、要は『ホタルノヒカリ』も『きみはペット』も構造は同じなのだ。ほんっとにこんな生活してみたいッスよ!

夢と現実がほどよくミックスされてて、『ホタルノヒカリ』は面白い。次回は、具体的なシーンを取り上げつつ。
<つづく>