一般的に、女子はクールな男が好きな傾向がある。姉の好みのタイプは「サナトリウムで咳しながら本を読んでる男性」だそうだ。この人は間違いなく和服を着ているだろう。色は白そうだし、身体が弱いから本ばっかり読んで知識は豊富そうだし、なんとも妄想がかき立てられるキャラ設定である。

さて、そんな感じの男子が『生徒諸君!』にも登場する。ナッキーが初っぱな恋をする、飛島さんだ。中学3年生の割りにはガタイがよく、少々ロン毛でクール。もう少しでサナトリウムに入れそうな感じの美少年である。実際こんな中学生がいたら、腹が立ってしまうだろうが、飛島さんなら仕方がないかもしれない。何しろ、高校生になるかならないかで結婚を決めてしまうのだ。いいのか、飛島さん。人生長いんだぞ。しかしそのお相手は、余命短いナッキーの妹、マール。

ないものねだりというか、ギャーギャーうるさく飛び回るナッキーは、地味に絵描いてる飛島さんに心惹かれる。飛島さんもまた登場時にはナッキーに興味があったようだ。なぜなら、ナッキーに「絵を描かせてほしい」などといかがわしい申し出をするからだ。男子が女子に絵のモデルを申し込むって、結構な勇気がいりそうだけどなあ。中学生がなあ。

で、その飛島さん、非常に少女漫画のヒーローらしいことをする。それは、ナッキーの本質を見抜いて、誰にも見せたことのない表情のナッキーを描いて見せたのだ。それは、なんだか淋しげな笑い顔のナッキー。少女漫画では、「主人公の本当の姿をわかってくれる」男というのは、かなり株が高いことになっている。もちろん、「うわべの私じゃなくて、本当の私を知って!」と女が常々思っているからなんだけど。

こうしてナッキーのハートをガッチリ掴んだ飛島さんだが、「やっぱ俺、マールにするわ」と言い出す(※実際はこんな言い方、してません)。その理由は交通事故だ。飛島さんは、事故にあって右手が動かなくなってしまう。

マールとの結婚を決めた飛島さんは、ナッキーに「ホントは僕、君のこと好きだったんだけどさ」と打ち明ける。「でも右手が動かなくなって、画家としての僕の将来はめちゃくちゃさ。だから君とは釣り合わないよ」だそうだ。つまり、「俺にはもったいない女だ」から、やめてマールにしとくのだそうだ。こういう振られ方って、どうなんだ?

失恋するときの痛みの多くは、自分を否定されること。自分の至らないところ、マイナス点がクローズアップされるから、辛い。だけど、目一杯肯定されて振られたとしたら、傷つくんだろうか、つかないんだろうか。褒め振られしたことないからわかんないけど、なんかバカにされたような気持ちになりそうだなあ。「君はボインだし料理もうまいし、僕にはもったいないよ」とかいって振られても、「だったらなんで」と、諦めつかないかもしれないなあ。

ちなみに、飛島さんがケガしたのは、ナッキーに仕上がった絵をうきうきと届けに来たとき。そのケガが原因で「俺の将来めちゃくちゃ」とか言われたら、責任感じてもよさそうなものだが、ナッキーはどうやらそうは思わない明るい神経の持ち主である。

そうして、妹のマールと飛島さんは同居して、自宅でイチャイチャし始め、両親ばかりか飛島さんまで取られてしまい、辛い思いをするナッキー。かわいそうに。しかしドラマチックな展開は、ここでは終わらない。次なるナッキーの恋が始まるのだ。

というわけで、以外と飛島さんネタが長引いたので、続きは次回にいたしましょう。竹内まりやの『けんかをやめて』を聴いて予習をしといてくださいな。
<つづく>