「身分相応」という言葉がある。日本では、古くからその人の身分や能力にふさわしい生き方や生活を送ることが美徳とされてきた。同様の意味を表す表現に「身の丈を知る」という言葉もある。多くを求めず、自分のキャパシティをよく理解することが成功につながると言われている。

確かに長い人生を「つつがなく」過ごすためには、必ずどこかで自分が感じる「幸せ」に落とし所をつけなくてはいけない。いつまでも「幸せ」を感じずに、もっと幸せに、もっと幸せにと思い続けることは、結局いつまでも「幸せ」にはたどり着けないのかもしれない。

しかし、本当にそうだろうか?

実際に自分が知る人で、この人は仕事が成功している、あるいは生活が充実していると思う人の多くは、「身分相応」「身の丈を知る」という言葉からは程遠い人が多い。正確に言うと、「身分相応」「身の丈を知る」ことは、「今のままの自分で満足する」ことに他ならないが、成功している人の多くは「身の丈」を知った上で、ちょっと背伸びができている人が多い。

この時の「ちょっと」というのがポイントだ。

無理してまで背伸びをしている人というのは、結局は目的に背が届かない人が多い。自分の「身の丈」を、まずはしっかり理解してみる。その上で「ちょっと」背伸びをしてみると、「ちょっと」の背伸びというのは意外とそのうち背が届くようになる。

何もいつも、いつも背伸びをすればいいというわけではない。日々の生活の中のふとした瞬間に、いつもよりもちょっとだけ新しい経験をしてみるだけのことだ。

普段は行かないようなちょっと高級な店に入ってみよう。

ちょっとだけ大人な服装をしてみよう。

これまで読んだことのないちょっと難しい作家の書物を読んでみよう。

日頃感じる、モヤモヤっとした閉塞感は、案外とこの「ちょっと」ができないことが原因かもしれない。


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサー等を経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。2015年4月より東北芸術工科大学にて教鞭をとる。