連載「ワーママのモヤモヤ整理します」は、託児付きランチサービス「ここるく」の経営者で、育休復帰・働き方改革のコンサルティングも手掛ける山下真実さんが、ワーママのモヤモヤを整理・解消に導いていく企画です。

今回、新型コロナウイルスの感染拡大によって、子どもの保育園事情や働き方が変わってモヤモヤしているワーママがオンライン上に集合! 緊急の座談会を開催しました。不安を抱くワーママたちに、山下さんはどのような言葉をかけたのでしょうか。

  • 新型コロナで保育園事情や働き方に異変! ワーママたちの緊急座談会

「子どもにきつくあたってしまう」在宅勤務&育児にモヤモヤ

この日の座談会はオンラインツールを用いて開催され、4人のワーママが参加しました。

参加者は全員、保育園児を持つ母親ですが、「緊急事態宣言」が出された後、全員が保育園から登園自粛要請を受け、自宅で子どもを見ているということでした。

そんな背景もあってか、子どもがいる中で仕事をするモヤモヤについて、悲痛な声が寄せられました。

「私の住んでいる地域では、在宅勤務の人に向けて登園自粛要請が出されています。私も在宅勤務に切り替わったのですが、最初はどうしても仕事ができず、毎日預けていました。ただ、子どもを感染リスクにさらしていることに罪悪感もありますし、登園人数がどんどん減り、先生たちに出勤させてしまっていることを申し訳なく感じて、登園回数を減らしたんです。夫が在宅勤務の週2回は保育園をお休みさせていますが、仕事にならないのが現状です」。

こう語るのは、1歳の息子がいるAさん。食品メーカーで営業をしており、昨年10月に復職したばかりです。

子どもがいると、仕事がストップしたり、急ぎの案件への対応が難しかったりします。やむを得ず仕事を代わってもらわなければならないときには、同僚に対しても申し訳なくて……。また、子どもに対してきつく当たってしまうことが、以前よりも増えてしまったと感じています」と苦しい胸の内を明かしました。

「復帰できない」モヤモヤも

さらに、育休からの復帰時期が延び、先の見えない現状にモヤモヤしているという声も寄せられました。

0歳と2歳の子どもがいるBさんは、ウェブ関連の企業に勤めていて、4月に職場復帰を予定していました。しかし新型コロナウイルスの影響により、復帰の時期を6月に延期したそうです。

6月に今の事態が落ち着くとは思えなくて、在宅で復帰することも想定しています。夫と2人で在宅勤務、子ども2人を見ながらやっていけるのか心配です」と、不安な気持ちを吐露していました。

Aさん、Bさんの悩める声に対して山下さんは、「予期せぬタイミングで、予期せぬことが起きたのだから、皆さんのモヤモヤや悩み、苦しみは、少なからずお母さんたちみんなが感じていることではないかと思います」とコメント。

「いきなり在宅勤務が始まり、私自身も小3と3歳の子どもたちが家にいる中での仕事に難しさを感じています。今まで経験したことがないところに、家族みんなで踏み込んでいる状況なので、全員でもがいている感じがありますよね」と共感の思いを寄せていました。

仕事をしながら子どもと一緒に快適な時間を過ごすのは難しい

そして、山下さんは「仕事ができないから普段保育園に預けているのであって、子どもを見ながらきちんと仕事ができるはずないですよね。大人が仕事をするペースと、子どもが子どもらしく生活するペースは違うので、一緒に快適な時間を過ごすのは、簡単ではありません」と指摘。

「子どもたちが何かに夢中になっていたり、お昼寝したりしていたとしても、『もしかしたら5分後に声をかけられるかも?』『起きるかも?』と思うだけで、仕事にはなかなか集中できないもの。子どもが生まれてから身に付けた母親の『特性』のようなものかもしれません」と話します。

家ではどうしても、子どもに注意が向いてしまい、思考が止まって仕事にならない……起業家として比較的フレキシブルに仕事ができる山下さんでさえ、普段から「家では仕事の目標を持つのをやめている」のだそうです。

まずは「無理ゲー」と割り切ろう

では、どのように仕事と育児の両立をすればいいのか、その問いに対して山下さんは、はっきりと、こう言い切りました。

「正直言って、子どもを見ながらの仕事は、どう考えても数十ピースしか入らない狭いスペースに、100ピースも入れなくてはいけないパズルのようなものだと感じています。つまり、『難易度が高すぎてクリアするのが無理なゲーム』、『無理ゲー』です。だから『無理なこと』だというのは、心の中で思っていていいと思うんです」。

「今回はサジを投げてしまった」とも話した山下さんの「無理ゲー」という言葉。「家の中で仕事と育児を両立させるための正解はない」ということこそが答えだと言えそうです。

ただ、その時の心構えとして、「自分たちは無理なことをしている」とちゃんと自覚しておくことで、少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。

緊急事態なのだから、その場しのぎだっていい

「子どもが目の前にいると、頑張ってしまうお母さんは多いですよね。さらに自分の仕事のことまで考えると、より大変になってしまう。でも、今は『緊急事態』だから、その場しのぎでもよくて、なんとか走りきればいいのだと思います。『なんとかしよう』とあがいたことで、きっと進化できるはず」と山下さん。

その言葉を聞いて、参加者の表情が少し晴れやかになっていたのが印象的でした。

仕事も育児も頑張り切れないと感じ、「もっと頑張れるのではないか」「もっといい方法があるのではないか」と不安な気持ちを抱いてしまう人も多いと思います。

でも、今は「無理ゲーをしているから、上手くできなくていいのだ」ということをしっかりと心に留めておけば、育児と仕事の両立を少し前向きに乗り越えられるかもしれないと感じました。次回も引き続き、座談会の様子をお伝えします。

山下真実

株式会社ここるく 代表取締役・社会起業家・2児の母
米国留学によるMBA取得、米系投資銀行・金融コンサルを経て、ママになったことをきっかけに子育て支援という全くの新領域へ。人気レストランから選べる託児付きランチサービス「ここるく」を2013年にスタート。サービスを通じて集まる働くママのインサイトと、MBA・コンサルで得た専門知識の両面から、ママ向けサービス開発や育休復帰・働き方改革コンサルティングなども手掛ける。
『第14回女性起業家大賞』、三菱UFJ銀行主催『Rise Up Festa』最優秀賞受賞。

座談会開催/協力: オンナの未来塾

2015年にスタートした20〜30代社会人女子のための少人数制キャリアイベント。田原総一朗氏が立ち上げた早稲田大学のリーダーシップ講座「大隈塾」のOGが運営を行っている。 ゲストを招いた講演会や座談会、ワークショップなどをこれまでに16回開催し、のべ200人以上の女性が参加。これからのキャリアや生き方を想像し、自分らしい未来像を見つけることをサポートしているほか、本音で話せ、お互いを高めあえる、等身大の同世代・異業種コミュニティを目指している。