連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

退職金の計算方法は?

ファイナンシャルプランナーとして個人の方からのご相談をお受けしていると、転職経験のある方が多いのに驚きます。中には2回、3回と転職されている方もいらっしゃいます。そして転職のたびに、辞めた会社から退職金を受け取っていらっしゃいます。

退職一時金には大きな税制優遇があります。つまり、退職金からは所得税や住民税をあまり払わなくてもいいのです。そのカラクリは、退職所得金額の計算方法にあります。退職所得金額は次の式で算出します。

退職所得金額の計算方法

退職金の税優遇ポイント

優遇のポイントは2つ。ひとつは、所得とみなされない「退職所得控除額」が大きい点です。

退職所得控除額は、その会社の勤続年数(端数切り上げ)に応じて決まります。勤続20年までは1年あたり40万円、勤続21年目以上は1年あたり70万円。勤続10年2カ月で中途退職した場合の退職所得控除額は、勤続11年×40万円=440万円です。勤続年数30年の方の退職所得控除額は、(勤続20年×40万円)+(勤続10年×70万円)=1,500万円にもなります。

もうひとつは、(支給額-退職所得控除額)を2分の1にすることができる点です。このことによって、退職所得金額は更に圧縮されます。

これら2つの方法で大きく圧縮された退職所得金額に、所得税率・住民税率を乗じて税額を求めればいいのです。給与にかかる税金と比較すると、退職金は金額の割に、税金を払わなくてもよかったり、払う税金が少なくて済んだりするのはこのためです。

退職金はできるだけ使わない!

40代までに自己都合で中途退職する場合は、リストラなど会社都合で退職するよりも、退職金の水準が低いのが一般的です。その後再就職先で定年まで勤めるとしても、新卒社員よりも勤続年数が短い分、退職金は少ないはずです。つまり、辞めた会社の退職金も少なく、入社した会社の退職金も少ないということなのです。

転職する方は、是非この点をしっかり認識しておいてほしいと思います。辞めた会社の退職金は、老後資金になるはずだったお金が前払いで払われたと考える方がいいでしょう。そのつもりで大切に取り扱ってください。まとまったお金を手に入れたことに気を良くして散財をしない方がよいことは言うまでもありません。

もちろん、転職先が決まるまでの生活費の補填や再就職活動の一部に退職金を使うのはしかたありません。うまく給与水準や退職金水準が高い会社に再就職できれば、支出した金額を十分に回収でき、豊かな老後の実現に向けて貯蓄もうまくできるでしょう。

しかし、基本的には「退職金は老後のための資金」という認識を持ち、ゼッタイ必要なものにしか使わない気持ちを持っておいてほしいと思います。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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