米系ファンドの本決算は、11月30日です。この決算日の45日前までに、解約を希望する投資家は、解約の意思表示をファンドにしなければならないという、ルールがあります。

これを「45日ルール」と言い、ファンド側では顧客の解約に備えて、事前に現金を用意しなくてはなりません。なぜなら、たとえ現時点で解約が具体化していなくても、何らかの理由で決算前に解約が殺到してしまうと、資金不足でファンドを解散せざるをえなくなるリスクがあるからです。

それに備えるために、事前にまとまった現金を用意しておかなければならないのです。

45日ルールが相場に与える影響

そこで、ファンド勢は決算の締め切り日となる11月30日から45日前となる10月15日までに、一定程度の換金を行います。これは、それまでのポジションを手仕舞う動きとなるので、相場に一定のフローが生じることになります。

実は、5月31日にもファンドの中間決算があり、その45日前である4月16日前後にも同じようなフローが生じるのですが、一般的には11月30日の決算に絡む10月15日前後のフローの方が、為替相場への影響が大きくなります。

下記の日足チャートは、昨年の45日ルールに絡んだドル/円とユーロ/ドルのチャートです。まず、ドル/円ですが、10月15日の日足チャート(下記)です。ちょうど、チャートの真ん中あたりで、急速に下げているところがあります。

これが、まさに45日ルールに従った、ロングの手仕舞い相場です。

実は、昨年の場合、ドル/円のポジションがあまりなかったことから、ドル/円については、10月15日の一日で、反対取り引きの売りは終わってしまいました(チャート上は差し込んでいるところ)。

ドル/円 日足

一方、ユーロ/ドルは、ユーロショートが多かったため、10月に入ってからは、15日頃まで継続的に買い戻しが起きていることがわかります。

ユーロドル 日足

このように、特に欧米勢の決算に絡んだ手仕舞いや、新年度のスタート時のポジションメイク(新規にポジションを作ること)は、結構、為替相場に影響を及ぼしています。ですので、こうした、折々の恒例行事には、十分気をつける必要があります。

年間を通して、最低限、気をつけなくてはならないのは、1月の欧米勢の新年度入り、6月末の中間決算に絡んだ6月初めからのポジションの手仕舞い、9月の欧米勢の実質的な下期のスタート、そして、10月の米系ファンドの45日ルールなどは、よく覚えておくべきでしょう。

私の場合、相場でやられてから、ふと、「これって去年と同じ時期に起こっていたじゃないか」と、痛い目に遭いながら、覚えていったものです、

しかし、ご紹介した時期をお忘れにならなければ、痛い目にも遭うこともなく、むしろ収益獲得のチャンスにもつながりますので、どうぞ、記憶あるいは記録しておいてください。

年度替わりに相場に飛び込むのは危険?

そして、それにつけ加えて申し上げますと、新年、新年度などでは、よく「気持ちも新たに、さあやるぞ!」という気持ちの高ぶりがありますが、これは相場では避けた方がよろしいかと思います。

なぜなら、結構多くのマーケット参加者が同じ気持ちの高ぶりを覚え、例えば4月の年度初めなどで、相場に飛び込んでしまうことが多いのです。しかし、これは、極めて短期間にポジションが一方向に偏ることを意味しており、反動からの揺り戻しで、犠牲者が多々出ますので、十分警戒する必要があります。

相場を、こうした年度替わりや重要経済指標の発表などをまたいでポジションを張るものだという誤解がありますが、実際のところは、これは、当たれば大きいですが、外れると結構きついものがあります。

つまり、50対50の賭けに出ているわけで、大変リスキーです。それを避けるためにも、相場のストーリー(筋書き)を考えることが大事になります。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら