連載コラム『まるみえ家計診断! プロが教える改善のコツ』では、家計簿アプリZaim利用者の中から、家計やお金のことで悩む相談者の実際の家計簿データをチェック! お金の専門家が相談者へ改善のコツをずばっとアドバイスします。


【今回の相談者】
福岡県に在住のウッカリさん(30)は現在1人暮らし。金融機関の内勤として勤務され、毎月の手取り収入は 約28万円、年間のボーナスも手取りで約150万円。毎月きちんと財形貯蓄で積立貯金を行い、現在の資産は貯金額でおよそ450万円です。"ウッカリさん"というニックネームからは想像できない、しっかり者の彼女の今のお悩みとは?

相談者の収入データ(Zaim分析画面より)

【相談したい内容】
『確かに毎月の収入は安定しているのですが、実は支出も多いんです……。ついついクレジットカードを多用して、セール時期には洋服への出費も膨れ上がります! 最近は友人親戚の結婚式も増え、冠婚葬祭の支出が増えてきているのも悩みの種です。財形貯蓄以外はきちんと貯金ができておらず、定期預金や投資にも興味はあるものの全く手が出せていません。生命保険などにも入っていないので、実は将来が不安……。来年には私自身の結婚も控えているので、きちんとお金のことを計画できるようになりたいです!』

相談者の支出データ(Zaim 分析画面より)

家計簿には見えてない「隠れ支出」に注意

最近のウッカリさんのZaimでの支出データを見せていただいたところ、上手に自炊をされているのか食費だけでなく交際費も抑えられています。パッと見たところ特にムダな支出はないようにも見える家計簿データになっています。

そこで、家計の専門家にずばり相談。今回は、ファイナンシャルプランナーの堀之内千津先生にアドバイスを頂きました。家計簿から何か気になる点はありますか?

堀之内先生「ご本人は無駄遣いが多いとお悩みですが、確かにこの家計簿からは無駄はほとんど見受けられませんね。もしかすると家計簿にカウントしきれていない支出が隠れているかもしれません。何に使ったかわからない、いわゆる"使途不明金"にこそ、実は注意が必要です」

なるほど、確かにウッカリさんの家計簿はとってもシンプル。交通費や通信費、水道・光熱費などは入力せずに毎月変動しやすい項目を中心に管理されているので、ご自身が意識したいカテゴリの支出管理に集中してしまいがちなのかもしれません。1~2カ月でもいいので、一度支出をあますことなく記録してみるのはいかがでしょうか。そうすると、支出と収入の差額が分かり、本当の無駄遣いがきっと浮き彫りになると思います! 他に気になる点はあるでしょうか?

堀之内先生「クレジットカードをついつい使ってしまう、とのことでしたがそこにも抜け穴があるのかもしれません。毎月の明細を見て、その使ったお金の内容を把握することは確実に行いましょう。家計簿アプリをお使いですから、クレジットカードとの連携機能を使うと便利です。使ったその月に支出明細に反映されるので、そういったサービスもうまく使って、一度細かく自己管理をしてみてください。これは現金での支出にも言えることですが『浪費か・消費か・自分への投資か』の視点でチェックしてみると良いですね。今の内にしっかりと家計管理ができていれば、生活環境に変化があっても慌てることはありません」

支出の金額だけではなくその内容を振り返ることが大切なんですね。ご自身のお金の使い方の傾向がわかると、「何となくムダ遣いが多いかも?」という曖昧な不安も解消されて、家計への納得感も高まりそうです。

マイナス金利の時代、預貯金以外の選択肢も

ウッカリさんは、毎月お給料から天引きされる財形貯蓄制度を上手に利用されているようです。いわゆる"先取り貯蓄"で確実に貯金されていますが、その点はいかがでしょうか?

堀之内先生「低金利時代なので、実は預貯金だけを行うのはあまりオススメではありません。難しくハードルが高いと捉えられがちな投資なども、この機会に始めてみると良いでしょう。投資は時間が強い味方になります。老後を見据えて、少額でもいいので早い段階から始めることが効果的です。もし始めるのなら、せっかくですから税制優遇があるものを利用してみるのも、賢い資産形成のやり方です。年間120万円までの投資なら、売却時の税金(20%)が非課税になるNISAは、ニュースでもよく聞くかと思います。また、掛けた金額に対して税金が安くなる個人型確定拠出年金も、来年から加入できる対象が広がりますので、検討してみると良いでしょう」

ウッカリさんは来年結婚をされるということですから、パートナーと一緒に今後について話し合いながら長期間での取り組みを始めてみるのが良いかもしれませんね!

堀之内先生「ただし、投資をする際はしっかりと注意も必要です。もちろん預貯金とは異なりリスクもありますし、せっかく税制の優遇があっても、売買の手数料や商品の手数料が大幅にかかってはもったいない。手数料の節約もしっかり行いながら、必ずご自身が納得する内容でスタートしましょう」

家計簿を定期的に見直すことで毎月の支出の内容を把握し、使い方に納得感をもつこと。そして当面必要な預貯金とは別に、将来のために別の選択肢を持ちながらお金を増やしていくこと。この 2 点を意識して、『家計に対する何となく不安』を少しでも解消していくことが大切です。

家計診断協力

堀之内千津
ファイナンシャルプランナー(CFP)・1級FP技能士。大手証券会社・トヨタグループ金融会社を経て、家計の総合相談センターに入社。東京・名古屋・大阪で、CFP・税理士・社会保険労務士などとともに、来店型相談センターを開設。また、トヨタ自動車、トヨタグループ各社のライフプランセミナー、上場企業向け確定拠出年金講師、金融機関主催のセミナー講師など多数担当している。誰でも身近で親しみやすいパーソナルファイナンスの普及を目指し、各種講師、執筆業務、相談業務などの活動をしている。

執筆者

綿島琴美
家計プランナー、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。Android, iPhone, iPad や Webから利用できる日本最大級の家計簿サービス「Zaim」にて、としてユーザーへの家計サポートを行う。レシート自動読取り機能や銀行とのデータ連携など、アプリを活用した家計の仕組みづくりを提案。初の監修本『Zaimのシンプル家計術』(ナチュラルライフ編集部編、税込み842円)が学研プラスより好評発売中。